ギャンブル依存症対策費、予算概算要求の落差に驚き

田中 紀子

みなさん、IR法案が通過した際に、推進派の先生方、内閣官房、そして安倍総理も「ギャンブル依存症対策費に全力を尽くす!予算も確保する。」とおっしゃったのをお聞きになりましたよね?

2018年7月17日の参議院内閣委員会では安倍総理自らが参考人として立たれ、大いに期待できる一言を発せられたんですよ。
それはこういったご発言です。

ギャンブル依存症対策について説明する安倍首相(参議院インターネット中継より:編集部)

確かに大型のカジノができることでギャンブルに接する機会は増えると思います。しかし他方今までなかった依存症対策を行います。
今までも様々な依存症があったのも事実です。しかし今までなかった依存症対策をしていくことで、今、いらっしゃる依存症の方々が減っていく努力をして、総数は減らすことができるのではないかと思っております。

もちろんこのご発言ネットでも確認することができます。
参議院インターネット中継(参議院)

2018年7月17日の内閣委員会を選んで51分18秒あたりをご覧下さい。

これが実現するなら、大いに結構な話しです。
そもそも日本はギャンブル依存症対策なんか我々当事者家族が細々と活動してきた以外は、誰も殆ど何にもやってきておりません。

だからカジノで新たに、カジノ依存症が生まれることは避けられないが、既存ギャンブル依存症を減らし、さらにギャンブル依存症を抑止していく方向に対策を打つというの考え方は現実的だと思いました。

ところがです。
先日発表された、厚生労働省の予算概算要求の内容をみて驚いてしまいました。

なんと来年度2019年度の予算概算要求8.1億円ですよ!
それは本年度の予算概算要求と全く同じです。
そして厚労省のこの要求から財務省に2億減らされて、結局6.1億円だったのです。
平成31年度予算概算要求の主要事項(厚生労働省HPより)

これはアルコール、薬物、ギャンブル3つの依存症対策をあわせた金額です。
そして6.1億円のうち、本年度ギャンブル依存症対策費のみに使われた予算は1942万7000円です。
しかも、今年も全く同じ金額の予算要求。

そして厚労省以外は、文科省と消費者庁が若干の予算要求をしている他は、どこも予算要求していません。

内閣官房に至っては、びっくり仰天したことには、なんとカジノ管理員会の予算は優先枠として60億円もの予算が割かれているんですよ!
そして期待した、ギャンブル依存症対策費は1円もとっていませんでした。
平成 31 年度 予算概算要求の概要 (内閣官房)

これに対して、私さっそく厚労省と内閣官房にお電話させて頂きました。
厚労省には、もっと予算をとって欲しい旨、そして内閣官房には何故ギャンブル依存症対策費の予算がないのか?と伺いました。

内閣官房のお答えはこうでした。
内閣官房はギャンブル依存症の予算をとっても、実行できる部隊がないわけです。
まぁ、そりゃそうですよね。
だから役割としては、取りまとめなどを鑑みて各省庁で頑張ってね!ってことなんだそうです。
・・・・・・・なんだかなぁ・・・・・・

じゃあですよ、内閣委員会で内閣官房が力説してた「ギャンブル依存症対策しっかりやる!」「これまでにない依存症対策をやる」っていうのは一体何を指しているんですか?
口先だけで我々だまされちゃったってことなんですか?

内閣官房に実行部隊がいないから予算はとらないという言い分ならですよ、だったら他の省庁に「今までやってこなかった、ギャンブル依存症対策をしっかりすすめろ!」と、もっと葉っぱかけるべきじゃないんですか?
厚労省も文科省も消費者庁も例年通り、ものすごく少額の予算しかとっていませんよ。

しかもそれに対して、カジノ管理委員会の予算60億円って!これ何にそんなに使うんですか?
カジノは税金使わないで、民間主導でやるもんだと思ったら、こんなに使うんじゃん!?
60億って、厚労省の依存症対策費の10年分ですよ!
我々、ボランティアで身銭切って駆けずり回って、カジノ管理員会の諸先生方の報酬は数千万円ってことなんですかね?

こんなことではカジノ開業までに依存症対策など間にあいっこないです。
カジノは、既存ギャンブルなんかとは依存症になるスピードが全く違います。
ハマったら、あっという間です。
なんせ勝負のスピード感が全く違って、数秒の勝負で上限なしに賭けられちゃうんですから。

こうなったら一刻も早く関係者会議を作って、その中でカジノ開業に向けた緊急発動みたいなのを決めて貰わねばならないですね。

いいですか、政府の皆さん。
皆さんはこのまま日本の金持ちを依存症者に仕立て上げ、海外オペレーターに日本の資産をお捧げするつもりですか?
カジノ開業を推進したいなら、約束通りギャンブル依存症対策を急ピッチでやって下さい。

日本が益々貧困にあえぐ自殺大国にしないためにも、海外と同レベルでいいから、きちんとギャンブル依存症対策をやって下さい!
お願いしますよ!本当に。


編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年9月6日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。