消費税をあげるなら行財政改革が条件だ:総裁選の隠れテーマ

2018年09月19日 22:00

自民党総裁選挙が20日に投開票日を迎える。現実のところ、齋藤健農水大臣の発言が波紋を呼んだりと、日を追うごとに、権力闘争の色が濃くなってきた。

政策テーマとしては、経済、憲法に自衛隊を明記、経済の再生、地方創生など候補者の見解がこれまで語られてきた。なかでも、安倍さんが消費税率10%への引き上げを「予定通り行ないたい」旨を発言しても、さも当然のように思われてしまっている。そういった状況。

しかし、消費税をあげるためには「条件」があるはずだと思うのだ。

自民党総裁選特設サイトより:編集部

両候補の政策はどうか

安倍さんの政策のような資料を見ると、「人口が減少する中でも、経済は10%成長しました」などこれまでの実績・業績が明記されている。

石破さんの「日本創生戦略―石破ビジョン」には、「政治・行政の信頼回復100日プラン」として具体的な期限を設け、迅速に党風刷新、 官邸の信頼回復、国会運営の改善、行政改革を断行する旨が強調され、地方創生を中心とした記述が明確になっている。

前者では、経済指標の数値はよくなっているが、日銀のバランスシートの問題はもちろん書いていない。後者では、行政の信頼を求めてはいるが、地方創生政策の限界や結果(地方創生政策全体の政策検証)は明らかになっていない。

どちらとも共通することと言えば、「財政の現実」や「行財政改革」についての具体的な記載は見当たらないことである。

景気はよくなってもそれほど財政状況は改善しない!?

マクロ経済指標はかなりよくなった、株価も上がった、税収も伸びた。戦後最高レベルとも言われている。

具体的に

・株価上昇、日経平均株価 2万円越え
・円安・株高によって、企業業績が回復
・GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)運用益 過去最高突破
・企業の経常利益が過去最高水準
・倒産件数は低水準
・失業者が減った、有効求人倍率も高水準・完全雇用に近い
・大卒・高卒の就職率の上昇

などなど。

確かにここ数年で見ると、以下の図のように税収は増えてはいる(青字)。

国債についても数字上は改善した。

【26年度】
国債発行額:1719857億円
国債依存度:39.0%

【29年度】
国債発行額:1539633億円
国債依存度:35.3%

【出典】財務省HP

しかし、経済がよかった割に財政状況は改善したと言えるのだろうか。

実際、多くの緊急経済対策などでの財政出動が行われてきた。

□2013年1月:日本経済再生に向けた緊急経済対策:事業規模 20兆円、補正予算 13.1兆円
□2013年12月:好循環実現のための経済対策:事業規模 18.6兆円、補正予算 5.5兆円
□2014年12月:地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策:補正予算 3.5兆円
□2016年8月:未来への投資を実現する経済対策:事業規模 28.1兆円、補正予算 7.5兆円

【出典】みずほ総研「アベノミクス5年と今後の政策課題」

この意味で、安倍政権の政策運営は見事だったのかもしれない。

しかし、財務省の「日本の財政関係資料」によると、平成30年度一般会計予算における歳入のうち税収は約59兆円。「本来、その年の歳出はその年の税収や税外収入で賄うべきですが、平成30年度予算では歳出全体の約3分の2しか賄えていません。」と言わざるをえない状況。

これだけの良好な経済状況でも劇的な財政改善は見込めないことを考えると、今後。いつ財政再建を図るべきなのか、そもそも可能なのだろうと思ってしまう。

消費税をあげるだけでいいのか?

だから消費税なのだろう。

しかし、消費税をあげても、社会保障費の増大など財政は苦しいことには変わりがない。今のマネジメントでは結局誰が総理総裁になっても「変わらない」と暗澹たる気持ちになってしまう。

では、どうするか。

財政赤字の拡大を許してしまったという構造を検証し、統治システムをどう変えていくのかという視点が必要である。国民・団体・グループがそれぞれの立場で自分の利益・利害の拡大を求め、結果として予算は膨れ上がるのは仕方ないことなので、いかにチェック機能を働かせられるか、利害を調整できるか、優先順位をつけるか、調整するための仕組みを再生し、運用をスムーズに行うか。

筆者は、以下のような検討、システムの運用改善などをフルに活用してもらいたいと期待するのだ。

(1)出発点:
・行政の役割の再検討:どこまで行政がやるべきなのか?少しの我慢で譲り合えば全体的には良くなるのでは?の徹底議論

(2)既存システムの運用改善:
「政策評価」の改善
・EBPM:エビデンスベースの政策形成・政策検証の徹底議論・見直し

(3)新たな取り組みの導入
・RPA:Robotic Process Automationの略称。事務作業の効率化・自動化の導入(簡単にいえばAIみたいなもの)での業務量の徹底的な削減
・公務員採用人数の再検討

EBPMには筆者は比較的EBPMに厳しい発言をしてるが、安倍政権は今年度「EBPMの推進」を推進してきた。この流れを発展させてほしいもの。

また、RPAは既に地方自治体でも様々な取り組みが始まっている。

消費税をあげるためには国民への「約束」があるはず

両者の政策を見ても、首相官邸で安倍政権から直に認証を受け、内閣府で石破さんの指揮の下で地方創生に参画した人間として、正直懺悔をこめて告白するが、「そんなお金どこにあるねん」という感じである。

「何か新しい政策を」「政策形成」を言いたいのは重々わかるのだが、今、景気がいいからこそ、こういう時期だからこそ、厳しい見直しをする時ではないかと思うのだ。

こんなに景気がよい(はずなのに)、財政改善が期待通りにはいっているとはいいがたい今、いったん一時的に税収が増えても、結局は社会保障費の増大に対応できなくなりかねない。

また、何年後に同じ状況になってしまうと予想される。その場合、今より、むしろ政治状況は悪化するだろう。

より少ないパイをみなさんで争って予算の獲得競争をしてもらう暇や余裕はこの国にはもうないはずなのだ。どちらが総裁、総理になるにせよ、この問題に手を付けて欲しいものである。期待したい。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
西村 健
日本公共利益研究所 代表・主席研究員

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑