バロンズ:Fedの利上げ終着点を考える

2018年09月24日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは金(ゴールド)を取り上げる。金先物価格は2011年の1,900ドルから35%下落、年初来でも8%安の1,200ドル付近で推移している。さらに、運用会社大手バンガードは、金以外に投資の軸点をシフトし始めている。しかし、誰もが見向きもしなくなった金は、ポートフォリオに組み込む投資対象として光を増してきた。割安であるのはもちろん、中央銀行は米国をはじめ金融政策の正常化に伴い保有資産の圧縮に着手済みか開始を目前に控え、安全資産として目されよう。さらに、金先物は株式や債券と比較し、物価上昇局面での退避資産としても輝きを取り戻しうる。投資先や展望について詳細は、本誌をご覧下さい。

Fed、経済のソフトランディングを目指すーThe Fed Tries to Engineer a Soft Landing for the Economy.

問題はどのように開始したかではなく、どのように終えられるかである。米連邦準備制度理事会(FRB)にとっては、金融政策の正常化をどのように、どこで終了させるのか、短期的に何をするかということより重要だ。

25〜26日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、何を決定するかはそれほど不透明ではない。Fedは25bpの追加利上げを行い、FF金利誘導目標を1.75〜2.0%に引き上げる見通しだ。何より重要な点は、パウエルFRB議長が会合後の記者会見で将来の金融政策について何を語るかである。

FOMC参加者のFF金利見通し、すなわちドット・チャートは、大いに注目を浴びることだろう。特に2019年の金融政策をめぐり、6月時点にFOMC参加者の中央値が2.958%で年3回の利上げを見込む一方で、市場参加者の予想では年2回にとどまるように、双方の見通しに乖離が生じているためだ。

6月時点のFOMC、経済金利見通し。

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(作成:My Big Apple NY)

市場関係者の予想に反し、2つの大手金融機関はFedが市場を上回るペースで利上げを行うと見込みつつ、景気後退入りを想定していない。例えばピーター・フーパー氏率いるドイツ銀行のエコノミスト・チームは、パウエル議長率いるFedが前例のないソフトランディング、すなわち景気後退を引き起こさず、経済の拡大ペースを持続的な水準へ導くと予想。ジャン・ハッチウス氏率いるゴールドマン・サックスのエコノミスト・チームも「中立金利(=r*経済に対し緩和的でも引き締め的でもない金利水準)は上昇しており、物価上昇ペースの強まりと利上げ幅の拡大を意味する」と指摘する。GSによれば、r*はLauchenbach-Williams(後者は現NY連銀総裁)・モデルに基づくと0.9%へ上昇した。政策金利の長期的水準は”中立金利+目標インフレ率”であるならば、FedはFF金利誘導目標を引き締め寄りの水準へ設定してもおかしくない——少なくとも、GSはそう予想する。

現状、Fedの物価目標2%に対しFF金利誘導目標は1.75〜2.0%であるから、現状はマイナス金利の状態にある。このような状態は、景気後退あるいは減速局面で有効だが、失業率が4%以下、成長率4%、株高進行中といった経済拡大期では適切と言い難い。

では、長期的に適切な水準とはどこか。コアPCEデフレーターが前年比1.98%で、r*が0.9%ならば、FF金利誘導目標は2.75〜3.0%。つまり、9月のFOMCでの利上げを含め、今後4回の利上げが必要という計算になる。しかし、市場は4回の利上げに懐疑的だ。

ドイツ銀行は、2019年のFF金利誘導目標を3.375%と予想する。ここまで利上げを行えば、景気減速を招くとの不安が台頭するかもしれない。しかし同銀によれば、過去2回の景気後退局面と違って、足元で過剰な状態にはない。ITバブル時は企業の過剰な投資活動がバブル崩壊を引き起こし金融危機はサブプライム層への過剰な住宅融資によってもたらされた。しかし、こうした過剰な借入が見られていない以上、パウエルFRB議長率いるFedが景気後退を招くとは可能性は低いというわけだ。

パウエルFRB議長はジャクソン・ホール講演で、金融上の過剰な状態が過去2回の景気後退を引き起こしたと説明した。マクロメイブンズのステファニー・ポンボイ氏は、足元で拡大中の企業債務を問題視する。前例のない低金利にありながら、企業の利払い負担額は過去最高に達しており、企業は債務額を年初から14.6%削減させてきた。経済がエンジン全開で加速中なら、信用市場もつれて拡大するはずだが、企業が債務を削減しつつあるというのは、金利上昇が負担になってきた証左と言える。

Fedによる保有資産の圧縮も、金利上昇をもたらす要因だ。さらに今年の年末には、欧州中央銀行も資産買入策を終了させる。世界の主要中央銀行は1ヵ月に5,000億ドルの資金を供給してきたわけだが、これも2019年の初めには終了するだろう。マクロメイブンズのポンボイ氏が指摘するように、S&P500は中央銀行のバランスシートの拡大と歩調を合わせて上昇してきた。一つ明白な点は、前例のない状態に突入するだけに、「今回は違う」と誰もが言えないということだろう。

——企業債務に関しては、社債発行高の観点からご説明させて頂きました。その他、筆者の見方は次回の投稿でご紹介いたしますので、少しお待ち下さい。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年9月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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