バチカンは台湾との関係を断絶?

2018年09月24日 11:30

バチカン法王庁と中国共産党政権は22日、北京で両国間の司教任命問題で暫定合意に達したことを受け、関連文書に署名した。署名式にはバチカン代表団からアントニオ・カミレーリ外務次官、中国からは王超外務次官らが参加した。バチカン・ニュースは“歴史的な合意”として特集を組んで大きく報じた。

中国のキリスト信者たち(バチカン・ニュースのHPから)

バチカンのナンバー2、国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿は今回の暫定合意について、「中国の全てのカトリック信者たちの統合を実現し、バチカンと中国政府の相互認知を促進させる」と評価している。

バチカンのグレッグ・バーク報道官の説明によれば、「同合意は政治的なものではなく、司教任命問題に限定された牧会上のものだ。今回の対話プロセスはバチカンと中国間の交渉の終結を意味するのではなく、開始だ」という。バチカン側は今回の合意に基づき、ローマ法王の許可なく中国で任命されていた司教7人を正式に承認したと発表した。

パロリン国務長官はバチカン・ニュースへのビデオ声明の中で、「合意内容は司教の任命と認知に関するもので、大きな意味合いがある。特に、中国でのカトリック教会の活動、中国政府とバチカン間の対話促進と平和促進にとって大切だ。この合意によって中国の全ての司教たちはペテロの後継者のローマ法王と繋がった。司教たちの統合は長い間、難しかった。合意は統一と相互信頼を醸成し、新しい刺激をもたらす手段となることを期待している」と述べた。

今回の暫定合意はバチカンと中国共産党政権の間で締結された「政教条約」ではない。バチカン側が繰り返し強調するように、あくまでも牧会上の合意で、バチカンと中国間の関係正常化への一歩に過ぎない。司教任命問題はベネディクト16世時代から既に暫定的ながら暗黙の合意が双方にあった。今回はその“現実”を文書化した、といえる。

バチカンと中国共産党政権との関係は険悪な状況が続いてきた。中国外務省は過去、両国関係の正常化の主要条件として、①中国内政への不干渉、②台湾との外交関係断絶―の2点を挙げてきた。

中国では1958年以来、聖職者の叙階はローマ法王ではなく、中国共産政権と一体化した中国聖職者組織「愛国協会」が行い、国家がそれを承認するやり方だ。一方、バチカンは司教任命権を北京に委ねる考えはなかった。そのため、新しい司教が誕生する度に両者間で問題が生じてきた。最近では、「愛国協会」が2006年4月と11月、バチカンの認可なくして司教を叙階したため、バチカンは激しく抗議している。

バチカンは中国国内のカトリック信者をケアするために中国側との対話を試みてきた。その試みは故ヨハネ・パウロ2世から始まり、べネディクト16世時代の07年、中国を潜在的な最大の宣教地と判断し、北京に対して対話を呼びかけた。同16世は中国の信者宛てに書簡を公表するなど関係の正常化に乗り出している。ちなみに、同16世のメッセージはインターネット上で公表されたが、中国政府はそのサイトを後日削除したことが判明した。

バチカン放送によれば、愛国協会は現在、中国を138教区に分け、司教たちが教区を主導している。ローマ法王に信仰の拠点を置く地下教会の聖職者、信者たちは弾圧され、尋問を受け、拘束されてきた。その一方、両教会の境界線は次第に緩やかになってきていた。例えば、愛国協会の多くの司教たちが後日、ローマ法王によって追認されてきた。

中国では過去20年間で5000以上の教会が建設され、改修されている。中国当局の公式データによれば、12の神学校があり、69人の司教、1600人の神父、3000人の修道女がいる。国民の宗教熱が高まる一方、愛国協会では聖職者不足、特に、若い神父不足が深刻化している。中国のカトリック信者は約1200万人と推定されている。

中国共産党政権にとって、バチカンとの関係正常化は国際社会のイメージアップに繋がるが、国内の信者への影響を考えた場合、完全には歓迎できない。香港カトリック教会の最高指導者を退位した陳日君枢機卿は、「中国政府はバチカンとの対話には関心ない」と警告を発している。

実際、中国政府は今月10日、宗教統制を強化するガイドラインを発表した。北京や河南省など複数のキリスト教会では、十字架の破壊、聖書の焼却処分、教会の閉鎖が相次ぎ起きているという。中国国内ではこれまでに7000箇所の十字架が取り下げられたという情報も流れている。北京で最大のキリスト教会「シオン教会」も閉鎖の危機にあるという(中国海外メディア「大紀元」)。

いずれにしても、バチカンと中国共産党政権間の完全な関係正常化のためにはもう一つの大きなハードルを越えなければならない。中国当局はバチカンに台湾との関係断絶を要求しているからだ。バチカンは現時点ではその意向はないから、中国との「政教条約」締結は非現実的なシナリオだ。

参考までに、中国に最初の宣教師が送られたのは西暦635年と推定されている。ペルシャから派遣された宣教師は当時のシルクロードを経由しながら中国に入っていった。それから1400年余りの年月が経過する。その間、さまざまな政権が生まれては倒れていったが、キリスト教の福音は今日まで中国の大地から途絶えることはなかったわけだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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