関空被災の教訓は、手厚いバックアップ体制

太田 房江

台風で被災した関西国際空港のターミナルビルが21日から通常運行を再開しました。第1滑走路が冠水するという開港以来の最大の危機に、復旧までの長期化が一時憂慮されましたが、奇跡的な復旧に安堵しています。

半月前、ネットラジオの収録で大阪市の黒門市場を訪れた際、近年見たこともないような閑散ぶりでした。もちろん、関空閉鎖の影響でアジアからの観光客が姿を消したからですが、インタビューに応じてくださったお店の皆さんの関空復活を訴える声は切実でした。関空の復活で市場が早く活気を取り戻すことを願ってやみません。

一方、旅客の方は目処が立ちましたが、物流の影響はいまだ尾を引いています。3連休中に大阪で与党議連の会合があり、補正予算の活用も視野に入れた需要回復と災害対策の強化を決議しました。

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1ヶ月も経たないうちに連絡橋を結ぶ鉄道が復旧し、ターミナルビルの全面再開までこぎつけられたのも、現場の皆様の努力と、日本が誇る卓越した技術力のたまものです。しかし、この奇跡的な復旧劇と並行して、検証すべき課題が次々と明らかになってきました。

連休中に読売新聞が報じましたが、台風が直撃した当日、関空はトップのお二人がともに出張中で不在。混乱の一因となり、インフラを預かる関西エアポートの危機管理体制が問われる事態になっています。読売の記事では、菅官房長官も激しくお怒りになられたことも綴られています。これを機に国が主導して事態を収拾する動きが加速し、異例のスピード復旧へと流れができたようにも見えます。

私も関空エアポートの責任は重大だと思います。ただ、責任を問うだけでは不十分です。冷静に災害の実態を分析し、今後の教訓を導き出さねばなりません。

私があらためて痛感するのは、想定外の事態に耐えるためには、バックアップ機能をいかに多くもっていることが重要かという点です。

関空の上空撮影図。左が第2滑走路(Wikipediaより:編集部)

今回、第1ターミナル・滑走路は冠水してしまいましたが、第2が生きていたことで、被災からわずか3日後には国内便の運行を再開できました。私が知事時代に二期工事を推進したから自分の手柄というつもりで決して言うのではなく、事実として、2本目の滑走路があったことで復活の足がかりをつかむことができたといえます。

関空25年目に際して寄稿した時も述べましたが、工事中の2000年代前半は、公共工事に逆風が吹き荒れたご時世で、工事中止の意見も噴出していました。さすがに、今回のような第1の冠水は予想外のことですが、もし工事をやめていたら、関空は今回間違いなく大幅に遅れ、関西経済への影響は致命的になっていたはずです。

バックアップという点では、関西の空は、関空、伊丹、神戸という3空港で支えているという点も見過ごせないところです。関空ができたとき、伊丹との共存・住み分けを巡って、さまざまな意見が出て、「伊丹不要論」が出たこともありました。神戸空港も建設中のときから「関西には関空も伊丹もあるのに無駄ではないか」と叩かれたこともありました。

しかし、関空が未曾有の危機に直面した今回、3空港の位置付けを危機管理の観点から、あるいはインバウンド4000万人時代を視野に入れて見直されてもいいのではないでしょうか。もちろん、伊丹も神戸も経営が厳しいという大きな課題はあります。たまに起こる有事のために、平時のコストをどうコントロールするべきなのか。その議論を主導し、国民に問いかけていくのは、政治の役割です。