米国心臓外科の就職試験で学んだ「謙虚さを捨てる!」

2018年09月26日 06:00

米国心臓外科の就職について、現在の僕がどうしているかを話します。

前回話したように「アテンディングの職空いていますよ、どう?」なんて話がころころと転がって来るわけでもないので、とりあえずうずうずしていたところ、セントルイスのワシントン大学で心臓外科医をしている先生から「大学の関連病院のポジションが空いているらしいよ」という連絡をもらいました。「もちろんお願いします!!」と言うことで早速応募をしましたが、病院からは返事すらもらえませんでした。

こういったこと(無視)は日常茶飯事のことなので、気にせず再びうずうずしていました。2カ月くらいたったある日突然その病院から「予定していた候補者が辞退したので再度応募者の中から選ぶことになったよ。インタビュー(面接)にでも来ない?」となんとも都合のいい呼ばれ方をしました。都合のいい男です。でも、非常にラッキーなので「もちろんオッケーです」と笑顔で応えました。就職には運も必要なのですね。

僕が経験してきた就職活動の流れは、まずインタビューに呼ばれるところから始まります。インタビューはだいたい1日から2日間コースで、病院内をぐるぐる回りながら関係者たちと30分ずつくらい面接し、夜は主要な人達とディナーをする、というのが一般的だと思われます。

僕が受けたのは2日間コースで、1日目はセントルイスにあるワシントン大学、1日目にその関連病院を訪れました。シカゴからセントルイスへの飛行機代、タクシー代、ホテル代などかかる費用は全て向こう持ちでした。結構嬉しいです。

試験ではないので30分の面接は非常にフランクな形で行われ、心臓外科だけではなく、外科のトップや病院長、事務の人と話をすることなどもあり、人によってはよく分かってない人とかもいました。お前英語もまともに喋れないのにインタビューなんて受けても絶対ダメだろ、と思うかもしれませんが、意外とそうでもないです。

むしろ日常会話に比べればある程度聞いてくるであろうことが分かっている面接という状況はずっとやりやすいものです。困ったら「グッド、グッド」とか言っておけば「うんうん、グッドって言っているね。うん、なんかいい感じね」と思ってもらえますので。たぶん。

1回目のインタビューが上手くいくとセカンドインタビューというものに呼ばれます。また面接に行くのです。1回でよくない?あとは電話とかメールでよくない?と思うのですが、なんかそうなっているみたいです。シカゴからセントルイスへは飛行機で1時間とかだからいいのですが、例えばこれがLAとかだったら4時間はかかるのでえらい大変です。小旅行です。

まぁ呼ばれたら行きますが。セカンドインタビュー時には給料の話や働く時間などの割とリアルな部分の話をしたり、住む家を不動産屋さんと一緒にまわって見たりします。家族がいる人は家族も一緒に連れてきて「お父さんこういうところに引っ越そうと思っているんだけど、どう?あり?なし?」と確認したりするみたいです。セカンドインタビューも2日間で行われ、初回と同様30分ずつ色々な人と話をしました。患者を紹介してくれる循環器内科の開業医の先生との面接が多かった気がします。

インタビューがまずまずいい感じで終わると、最終試験として採用する側の心臓外科医が僕の手術を見学しに来る、すなわち手術審査があります。まぁ実際にその人が手術できるのかどうかを見る、というのは実に理にかなっているのですが、日本ではあまり聞いたことなかったので新鮮でした。

自施設のアテンディングにお願いをして面接官がくる日にいい感じの手術を入れてもらいます。僕は大動脈弁置換術を入れてもらいました、これが一番簡単だからです。これらすべての過程が終了後、採用・不採用の通知が届くようになっています。

インタビュー前にはシカゴ大学の上司から色々なことを学びました。面接時の姿勢や身だしなみ、口調、目的をしっかり伝えるように、などなど。中でも日本人が苦手な「自信を持つ」ということが大事と言われました。なんなら相手に何かを要求するくらいの強さが必要みたいです。

「いやーまぁ、手術は一応できますけどね、へへへ。ハードワーキングが取り柄です。一生懸命頑張って働くんで雇ってください」みたいなことを言いがちですが、これは日本人特有の謙虚さということを知らない相手からしたら「僕は無能です。雇ってください」と言っているようなもので全く効果をもたないみたいです。

「僕は手術もできて、コミュニケーションも得意で、皆から好かれていて、だからこのポジションにすげーマッチします!」と言ったほうが、「おーそうかそうか」となるわけです。また、英語力に関しても「僕 エイゴ ニガテ デスヨ」とわざわざ言う必要は全く無く、というかすでにばれていることなのでむしろ「エイゴ デノ コミュニケーション マッタク モンダイ ナイ アルヨ」と言い切るくらいがちょうどいいのかもしれません。

とりあえず現時点でワシントン大学のセカンドインタビューを終えたので、後は結果待ちです。セカンドインタビューの日は奇しくも僕の誕生日(7月18日)だったので、これでうまくいってなかったらだいぶ痛いですね。アテンディングの職を得たら(=お金が入ったら)歯医者に行きたいと思っています。

思えば半年くらい前に奥歯の詰め物が取れ、シカゴの歯医者に行ったらよく分からんところの虫歯とか全部治さなくちゃねと言われ、総額ウン十万円かかりますけどとか平気で言われたため愕然とし「アテンディングになったらちゃんと治してあげるからね」と延期していたのです。いつのまにか就職活動の話が歯医者の話になっていました。まとめです。僕が思う米国心臓外科医的な就職活動とは

インタビュー、セカンドインタビュー、手術見学
謙虚さを捨てる
みたいな感じです。

追伸

ちなみに、インタビュー期間中は面接場所や時間のスケジューリングをコーディネーターみたいな人が一緒について管理してくれます。僕にはマーサというおしゃべりなおば様がつきっきりでヘルプをしてくれましたが、なぜか一緒に部屋まで入ってきて、なぜか面接官とも普通に喋っていました。むしろ僕より喋っていました。いや、僕の面接なんだけど、と思いましたが、まぁ楽だったのでお任せしました。もう、面接受けているの僕というよりマーサでしたね。


編集部より:この記事は、シカゴ大学心臓胸部外科医・北原大翔氏の医療情報サイト『m3.com』での連載コラム 2018年8月26日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた北原氏、m3.com編集部に感謝いたします。

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北原 大翔
シカゴ大学心臓胸部外科医

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