何故、読書したほうがいいのか?読書の意味を根源から考える。

岩田 温

人生で初めて、政治とは直接関係のない本を書いた。『流されない読書』という読書についての本である。

本を書くとき、義務感や憤りに駆られて書くことが多い。だが、今回は楽しい気分で本を書くことが出来た。政治的には左派にあたる加藤周一氏の読書論も紹介したが、本当によい本だと思いながら紹介できた。

読書を語る際、右だ左だというイデオロギー論はくだらない。「岩田温」という名前で執筆しているから右派の本だと思われるかもしれないが、名前を伏せて出版していたら、別段右派の読書論とは思われなかったのではないだろうか。

内容を簡単に紹介しておきたい。

第1章 読書は「人をして善き方向に向わしめる」可能性がある

この章では、何故本を読む人生の方が、本を読まない人生よりよいのだろうか?という根本的な問いに向き合った。読書の哲学ということも可能だろう。

学生に「本を読め」といっても、学生たちがなかなか本を読もうとしない。

何故なのか?

恐らく、小さな頃から、本を読む楽しさというものを知らず、ただ読め、読めといわれて苦痛を感じているからではないだろうか。「何故、本を読むのか?」という問いに対して「そこに本があるから」では答えにならない。何故、本を読むのかを真剣に考えてみた。

第2章 初めて読む人にとっては古典も最新作

この章では古典が面白いという話をしながら、読書の達人たちの読書論を紹介した。

三木清、小林秀雄、小泉信三、河合栄治郎等々多数の読書論を紹介し、同時にキケロ、グロスマン、内村鑑三らの本を紹介した。

第3章 やってはいけない! ヒトラー流“自分の世界観を強化する”読書

この章ではショーペンハウアーの読書論を紹介し、ヒトラーの読書術との類似性について指摘した。書物の運命については、プラトンの『パイドロス』を中心に議論を進めた。書かれた文字の運命について考えることは、極めて面白い。パロールとエクリチュールの差といえばよいだろうか。

第4章 「活字の舟」に乗って

この章では渡部昇一、徳富蘇峰の読書術、『言志四録』の読書術を紹介した。是非、ミルトンの『サムソン』に救われた徳富蘇峰の話を読んでいただきたい。本書を執筆して、自分自身の中で最大の収穫は、徳富蘇峰の読書論、『サムソン』を知ったことかもしれない。

第5章 本の世界へ旅をはじめよう

この章では読書をどのように進めていくのか、具体的な本を中心に議論を進めた。読書の経験が全くないという方はこの章から読み進めていただくのがいいかもしれない。

『モモ』、『レ・ミゼラブル』、『モンテクリスト伯』等々の面白い小説を紹介した。

中国の古典に関しては、孔子を中心に議論を進めたが、『孫子』、『戦国策』等も紹介した。孔子の議論では、『論語』からではなく、中島敦の『弟子』から議論を始めた。また、安岡正篤について紹介した部分もご覧いただければ幸いだ。

第6章 不条理なこの世界で私たちは何のために生きるのか

  • ソクラテスは何故、死ぬことになったのかを『ソクラテスの弁明』を中心としながら論じた。
  • 何故、善い人が不幸なめにあうのか?『ヨブ記』から考える。
  • エリック・ホッファーの人生、そして彼の哲学について紹介した。

本当はナチズム論、戦争、日本の古典も紹介したかったのですが、全てを書くと数百ページの大著になってしまうため、次回にとっておくという涙の決断を下した。全部、準備していたので、本当に紹介できずに残念。

本が好きな人、本を読んでみようと思っているが、何を読めばいいのか悩んでいる人、そんな人にぜひ読んでいただきたい。


編集部より:この記事は政治学者・岩田温氏のブログ「岩田温の備忘録」2018年9月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は岩田温の備忘録をご覧ください。

【岩田温さん出版記念講演会のお知らせ】
最新刊『流されない読書』(育鵬社)の出版記念講演会が東京、大阪の二会場で開催されます。

〇参加費はテキスト代(1500円)のみです。
〇テキストをお持ちいただければテキスト代が無料となります。
〇テキストを当日ご購入いただくことも可能です。

《東京会場》
日時 10月14日(日曜) 13:30開場 / 14:00開演予定 / 講演2時間(予定)
場所 ホテル東京ガーデンパレス 「高千穂」(東京都文京区湯島1-7-5)

《大阪会場》
日時 10月6日(土曜) 13:30開場 / 14:00開演予定 / 講演2時間(予定)
会場 大阪市立難波市民学習センター(OCATビル4階)講堂(大阪市浪速区湊町1丁目4番1号)

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