バロンズ:家計、住宅価格より株価に脆弱?

2018年10月01日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーで中間選挙が与える金融市場への影響について協議したラウンドテーブルの内容を取り上げる。ラウンドテーブルの参加者は、ゴールドマン・サックスのアビー・コーエン上席投資ストラテジストのほか、PIMCOの公共政策ヘッドのリビー・カントリル氏、ストラテガスの政策調査ヘッドであるダン・クリフトン氏、イベントシェアーズのベン・フィリップス最高投資責任者。上院は共和党が多数派を維持し、下院は民主党が過半数を奪回するとの見方が優勢のなか、投資家にとっての問題は民主党が下院議席数をどれだけ伸ばせるか、だという。

仮に民主党が下院議席数を50~60議席伸ばした場合、2018年に施行された税制改革法案に盛り込まれた法人税率の引き下げが見直されかねず、例えば21%から25%へ引き上げられる可能性があるという。一方で、中間選挙が米株に与える影響は限定的となる見通し。S&P500は1946年以降、中間選挙後の1年間に下落したことはない。トランプ大統領の弾劾をめぐっては、たとえ下院で民主党が多数派を獲得しようとも、共和党の結束を招くリスクをにらみ民主党内で結束しづらいと見込む。ラウンドテーブルの詳細は、本誌をご参照下さい。

当サイトが定点観測する名物コラムのアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週のカバーは住宅市場と株式市場に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

住宅市場が学んだ厳しい試練、米株も経験するのか―Housing’s Hard Lesson for Stocks.

リーマン・ショックから10年が経過し、一戸建て住宅を保有するというアメリカン・ドリームが修復されたかというと、現実はそうなっていない。未曾有の金融緩和策で恩恵を受けたのは、米株相場である。FRBが発表した家計資産報告によれば、4~6月期に株式相場資産の価値は不動産資産を上回り、1970年代、80年代、90年代に経験した住宅バブルと異なる動きを示す

(作成:My Big Apple NY)

住宅ローン金利が7年ぶりの高水準になったとはいえ、フレディマックによれば足元の30年物住宅ローン金利は未だに4.72%に過ぎず、2000年代、あるいは7%台だった1990年代を大きく下回る。しかし、値ごろ感は2016年から大幅に低下した。全米リアルタ―協会(NAR)によれば、「今が住宅の売り時」とみなす回答者が77%に対し、フレディマックの調査では「今が買い時」との回答は24%に過ぎない。

米4~6月期実質GDP成長率が前期比年率4.2%増と約4年ぶりの高成長を果たし、失業率が3.9%とITバブル期以来の低水準にありながら、中古住宅販売成約件数指数(筆者注:住宅市場のうち、中古住宅は全体の9割近くを占める)は8月に前年同月比2.3%落ち込んでいる。

こうした状況を受け、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)のエコノミスト・チームは、中古住宅市場が2017年11月でピークアウトしたと予想、確かに、iシェアーズ・米国住宅建設ETF(ITB)は年初来で18.6%下落している。BAMLは新築住宅市場ならば伸び余地があると見込む半面、米成長の押し上げ要因になるとは想定していない。技術を有する建設労働者の確保が困難である上、建設用地の不足が問題であるためだ。

金利上昇も、不確実要因である。仮に30年物の住宅ローンを25万ドル、3.4%で組んだ場合、毎月支払い負担は1,221.61ドルだ。しかし、30年物の住宅ローンを36万ドル、4.75%で組んだ場合の毎月支払い負担は1,877.93ドルに上昇する。さらに、不動産税や光熱費などの負担もあり、それらは全てかつてより高水準にある。

しかも、税制改革法案成立後、標準控除は夫婦合算で12,700ドルから24,000ドルへ引き上げられたため、わざわざ割高な住宅購入するより現状維持を望むに違いない。しかも、住宅ローン控除の上限額が税制改革法案で100万ドルから75万ドルへ引き上げられ、州・地方税の控除も1万ドルの上限が導入されてしまった。

住宅市場が経済の追い風となる可能性は低い一方で、打撃を与える公算も小さい。むしろ、TSロンバードのスティーブ・ブリッツ首席エコノミストは株式に注目。米企業は金融危機前の水準まで社債を発行させ株主還元策に割り当てた結果、株価が上昇し、家計の資産のうち株式が不動産を超えるまでに膨らんだ。ブリッツ氏によれば、企業債務は株式に対し低水準であるのは、株価が高いためであり、つまり企業も家計も株価に脆弱と言えるという。

パウエルFRB議長は、ジャクソン・ホールで資産価格のバブルが景気後退をもたらしたとしたと発言した。一部の市場関係者は、Fedによるゆるやかな利上げが資産価格の急落を回避する”ソフト・ランディング”を見込む。しかし、ブリッツ氏は2019年のいずれかの時点で株価下落を未然に防ぐというより、抑える方向に動かざるを得なくなると予想。つまり、米株は今がピークと言えよう。


住宅保有率がなかなか金融危機前の水準を回復しないだけに、家計が保有する資産のうち株式が不動産より存在感を示すのは当然の成り行きと言えます。税制改正により海外留保利益の本国還流が期待されるため、株主還元策は短期的に継続する見通し。問題はカバーに取り上げられた通り中間選挙後で、政治的な不透明感が強まる10月後半にかけては、株価の調整に留意しておくべきでしょう。

(カバー写真:Sarah/Flickr)

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