強力な金融緩和によって物価は上がるのか

9月21日に発表された8月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比プラス1.3%、生鮮食品を除く総合で同プラス0.9%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合で同プラス0.4%となった。

日銀が物価目標としている生鮮食品を除く総合、いわゆるコア指数は6月の前年比プラス0.8%。7月のプラス0.8%からわずかながら上昇している。

また総合指数は6月の前年比ブラス0.7%、7月のプラス0.9%から8月はプラス1.3%と大きく上昇している。天候不順よるトマトなど生鮮野菜が値上がりや、さんまなど生鮮魚介の価格も上がったことによる影響が大きかったようである。

また、コア指数の押し上げにも寄与したのがガソリンなどエネルギー価格の上昇となっていた。原油価格はWTIでみると70ドル近辺で推移しており、原油価格が堅調となっていることも物価の押し上げ要因となっている。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合もプラス幅がやや拡大しているのも、エネルギー価格の上昇などが間接的に影響しているとみられる。

ただし、9月6日には平成30年北海道胆振東部地震が発生し、台風による被害も大きく、9月の消費者物価指数にはこれらによる影響が出てくる可能性がある。

日本の物価は一時期の前年比でのマイナスが続くような状況からは脱してきてはいる。その意味ではデフレからは脱却しつつあることは確かであろう。しかし、これが果たして日銀による量的・質的緩和から始まり、長短金利操作付き量的・質的緩和政策と修正が加えられてきた大胆な緩和策が効果を発揮したものと言えるのであろうか。

それとも別な要因による影響、たとえば米国を主体とする世界的な景気回復による影響、さらにその景気拡大も背景した原油価格の上昇による影響などが大きかったのか。

中央銀行の金融緩和による物価への影響はタイムラグがあるとの見方もあったが、それについても日本の事例で見る限り、具体的な影響は見えていない。日銀が何度か緩和策を強化してきたのも、物価が思うように上がらなかったことによるものであろう。

果たして中央銀行の大胆な金融緩和によって、経済全体の需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率が改善されて物価が上昇するというシナリオは本当に正しいものであるのか。

少なくとも大胆な緩和で2%に置いた物価目標は達成されていないことは確かである。それは何故なのか。大胆な緩和策が日本の債券市場の機能低下を引き起こすなど副作用も出てきている。このあたりもう一度しっかり検証する必要はないだろうか。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年10月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。