スタンドオフ・ミサイルは筋が悪い

2018年10月05日 06:00

離島防衛に超音速滑空弾=防衛省、26年度実用化目指す-沖縄に配備念頭

防衛省は、沖縄県・尖閣諸島などの離島防衛を強化するため、「島しょ防衛用高速滑空弾」の開発を進めている。高高度に打ち上げたミサイルから分離させた弾頭を、超音速で地上の目標に落下させるもので、陸上自衛隊による離島奪還戦力の一つと位置付けている。同省は当初の計画より開発を約7年早め、2026年度の実用化を目指す。

発射装置は移動式とみられる。射程が比較的長いことから、防衛省が航空自衛隊に導入する対地攻撃型の長距離巡航ミサイルと合わせて敵基地攻撃能力があるとみなされ、周辺国から警戒される可能性もある。

滑空弾はロケットモーターで推進。高度数十キロで弾頭が切り離され、大気圏内を超音速で地上の目標に向け滑空、着弾する。高速で対空火器に迎撃されにくく、敵が侵攻した離島周辺の島から発射する。

これは以前から防衛省で検討されてきたプログラムです。
ぼくは5年ぐらい前にこの話を聞いたことがあります。当時射程が500キロほどであれば開発は難しくないが、1,000キロならば相応の研究が必要であるとのとのことでした。

防衛省が研究費138億円を要求している島しょ防衛用高速滑空弾のイメージ(「平成31年度概算要求の概要」より:編集部)

ですが本当に必要かは疑わしいです。
地対地であるならば単なる短距離弾道弾でいいはずです。それならば開発が簡単です。ですが、それだと政治的な問題に発展する可能性がある。だから弾頭部を滑空爆弾にしてて、ロケット+滑空爆弾にすれば弾道弾ではなくなる。そういう目論見です。

先端に滑空爆弾を搭載するなら、かなりのサイズになるでしょう。恐らくはMLRSで発射可能な短距離弾道弾ATACMSよりも大型になるでしょう。であればMLRSはプラットホームには使えないでしょう。

恐らくは移動型でしょうが、どのような部隊が運用するかも不明です。SSMの部隊で運用するのでしょうか。誘導方法がGPS/INSであれば精度は高くないでしょう。より高い精度をもたせるならば画像式などのシーカーが必要ですが、その分コストがかかります。航空機発射型よりもかなり技術的な難度は高くなるでしょう。

JDAMのような既存の爆弾にキットを装着する航空機搭載型の精密誘導爆弾、あるいは単なる短距離弾道弾では何故だめか、説明がありません。航空機搭載型を輸入すれば話が速いはずです。またコストも格段に安い。
航空搭載型であれば専用の精密誘導爆弾でも射程が300キロほどのものは存在します。これらをP-1に搭載するという運用手段もあるはずです。

一体どのような目的で何を目標にして射程はどの程度か、調達単価はどの程度を見込んでいるのか、どの程度の数を調達するのか。既存の部隊、例えば地対艦誘導弾の部隊で運用するのか、新しい部隊を編成するのかなどを納税者に説明すべきです。

現状のままであれば例によっての開発費の無駄遣い、しかも調達単価が高騰してろくに調達されないままフェードアウトになるのではないでしょうか。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年10月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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