バロンズ:米債利回り上昇、米株と米経済に逆風

2018年10月08日 06:00

バロンズ誌、今週はカバーにフィデリティ投信を掲げる。同社はゴールドマン・サックスと合併するとの観測が流れ、親会社であるFMRのアビゲイル・ジョンソン会長兼最高経営責任者(CEO)は火消しにまわった。しかし、インベスコやオッペンハイマーファンズなど、50億ドルの合併話に関心を寄せるという。果たして、フィデリティ投信はどのような決断を下すのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリートは、米債利回り乃上昇に注目する。抄訳は、以下の通り。

米債利回りの上昇、米株を打ちのめす可能性—Rising Treasury Yields Could Batter Stocks.

米株が中間選挙を控えた10月に高いリターンを達成する傾向があると、誰が言ったのだろうか。10月に入って1週間が過ぎ、米株は週末にかけ2日連続で大幅下落した。米株安の主犯は、米債利回りの上昇とされる。米10年債利回りは2011年以来で最高をつけ、米株に割高感を与えた。力強い米経済指標も、Fedの利上げ継続見通しに火を点けた。

パウエルF米連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米連邦公開市場委員会(FOMC)は、9月25〜26日開催の会合で25bpの利上げを行い、FF金利誘導目標を2.0〜2.25%ヘ引き上げた。まだ中立金利に距離を残すが、9月の失業率は1969年以来の低水準をつけている。

米債利回り上昇がヘッドラインを騒がせるなか、米株安を招いたのはそれだけではない。JPモルガンのクロスアセット・ストラテジー・チームは、Fedの金融政策はイタリア国債利回り乃上昇、原油高、中国の問題に比べれば、他愛もないと一蹴する。

イタリア国債利回りは財政規律に反しGDP比2.4%の財政赤字をもたらす予算案を提出する見通しから上昇。今後赤字が縮小するとしても、欧州連合(EU)との関係膠着は避けられないだろう。

原油高について、JPモルガンは石油輸出国機構(OPEC)とロシアが増産しない見通しのもとで、86ドル突破したブレント原油先物が90ドルを超えていくと予想する。トランプ政権はイラン核合意離脱に伴いイランへの制裁を再開させたが、JPモルガンは原油高により11月の原油を対象とした制裁再開は困難になると見込む。

このなかでも、特に中国は最も大きなリスクだ。ブルームバーグは、中国がアップルやアマゾンなど30社以上の米企業のサーバーにアクセスできるチップを取り付け、機密情報を取得していたショッキングなニュースを伝えた。また米海軍が大規模な示威行動の実施を提案しているとの報道が流れてまもなく、米海軍戦艦の”デストロイヤー”が南シナ海で「自由な航行作戦」を敢行中に中国軍艦船が急接近する異常事態が発生。ペンス副大統領は、中国に対し「米国は決して怯むことなく、屈しない」と舌鋒鋭く批判したものだ。

米中の経済関係でいうなら、JPモルガンは2019年に両者が全面的な貿易戦争に突入するシナリオを想定、中国製品全てに25%の追加関税を課すと予想する。中国は、今後も財政と金融刺激で対応するとみられ(なお10月7日に預金準備率を1%ポイント引き下げを決定、今年3回目)、輸出競争力確保に向け人民元安へ誘導する見通しだ。

JPモルガンいわく、追加関税は「最も上昇が著しい株式市場(米株)と最も下落している株式市場(中国)に疑問を投げかける」という。中国製品全てに25%の関税が賦課されれば、2019年のS&P500構成企業の1株当たり利益を8ドル押し下げる見通しだ。そうなれば、トランプ政権が発足して以来の初めての大幅な引き下げとなり、米株高が終焉に向かうかもしれない。

個別銘柄でも、バッドニュースが飛び出し始めた。CNBCは、グリーンライト・キャピタルがアップルの保有株を8月末に全て売却したと報道、米中の通商政策に対する懸念が背景にあるという。ナスダックが前週に3.2%下落したことと、無縁ではないだろう。

米債利回り上昇は経済拡大の結果で、良いことだ。エバーコアISIでテクニカルアナリストを務めるリチャード・ロス氏は、ブレント原油とボーイングの株価と米債利回りの上昇を挙げ、力強い世界成長のサインと説く。しかし債貿易戦争は反対に成長を鈍化させインフレを上昇させ、決してポジティブなものではない。米株に困難をもたらすだろう。

米長期債利回りは、2011年以来の水準へ上昇した。問題は、金融市場にどのような影響を与えるかだ。米10年債利回りと米30年債利回りは、年初につけた高水準である3.12%と3.25%を抜け、3.23%、3.41%をつけた。

もう一つ、米債利回りの上昇を促している。為替ヘッジのコストが上昇中で、ドル建て債券の海外需要を低下させているためだ。Fedによる利上げが背景にある。さらにFedは保有資産圧縮の真っ最中だ。

エバーコアISIのチーフエコノミストで副会長であるエド・ハイマン氏は、米債利回り上昇に希望の光をみている。過剰なアニマル・スピリッツが冷め、米株が小幅に下落すれば、自主的な調整により経済の過熱などを回避できるというわけだ。S&P500の株価収益率(PER)は2011年の13倍から17倍まで上昇しており、米債利回りの上昇は投資家の目を覚まさせる材料となりうる。また米債利回りは、社債市場を直撃するリスクをはらむ。

米株の個別銘柄では、既に自動車や住宅などの金利敏感株が打撃を受けている。特に自動車はGMとフォードがそろって52週安値をつけた。ハリケーンによる販売台数押し上げ効果も、期待しづらい。ハリケーン”フローレンス”による買い替え需要は2万〜4万台が見込まれる程度で、ハリケーン”ハービー”の60万台を大きく下回る。

パウエルFRB議長は、PBSのインタビューで金利は「未だ緩和的」と発言、「現時点で中立金利からかけ離れている」と語りつつ、FF金利が「中立」以上の水準へ向かう可能性を示唆することも忘れなかった。米債利回りの上昇が続けば、米株の割高感を強め、経済の逆風となるだろう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年10月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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