株式市場のゴルディロックス(適温)相場に変調も

久保田 博幸

ゴルディロックスとは、英国の童話「ゴルディロックスと3匹のくま」に登場する少女ゴルディロックスが熊の家で飲んだ熱すぎず冷たすぎない、ちょうど良い温かさのスープにちなむ言葉で、適温相場とも呼ばれる。

これまで米国を中心として、ほどよい景気のなか、株式市場もほど良い上昇を続けてきた。米国の株価指数が過去最高値を更新しても、加熱感はなく相場が大きく崩れるようなこともなかった。

これには米景気の拡大が続いていたこと、そしてFRBが正常化を進め、利上げを行っていたものの、長期金利は物価を重視するあまり、低位で安定していたことも背景にあった。このため、長短金利スプレッドが大きく縮小していた。

しかし、物価の先行きに対する見方に変化が生じてきた。中国からの輸入品への課税や原油価格の上昇などによる物価上昇圧力が意識されはじめたのである。物価上昇観測により、米長期金利は3%や3.1%あたりにあった壁を突破してきた。

これによって米国株式市場はゴルディロックス相場に変調を来すことになった。米国株式市場の代表的な指標のひとつであるナスダック指数をみると、2016年11月あたりからほぼ一方的な上昇相場となっていたものが、久しぶりに大きな調整を迎えたことが窺える。

これが一時的な調整なのか、それともここでピークアウトするのか。それはまだわからない。米国の景気に対する見方が大きく変化してきたわけでもない。ただし、株式市場が景気の先読みをすることはある。

日経平均が1989年12月に4万円に迫ったあと、ここが過去最高値となり、ピークアウトして、その後バブル崩壊と呼ばれた大きな下げがきた。これを例えば1990年初等の段階で予想できた人はほとんどいなかったのではなかろうか。もちろん日本のバブル崩壊と、今回の米国株式市場の下落を比較すべきではないとのご意見もあるかとは思うが、ゴルディロックス相場の反動から、いずれ大きな調整が入るであろうことも確かである。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年10月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。