かわいい子には起業させよ --- 船水 誠

2018年10月15日 06:00

何も持たずに海外に一人で旅に出て、ヒッチハイクで移動を繰り返すような若者はいつの時代もいて、その中には旅行中「何か」人生をかけて追い求める対象を見つける人もいます。冒険自体が良い経験になるから、と始めたら、途中で自分が夢中になるものに遭遇するという、いくつものメリットがそういった旅にはあります。(当然、同時にいくつものリスクもありますが。)今はスマホさえあれば昔よりかなり効率的に移動できるし、人にもいろんな機会にも会えるようになったのでリスクは減っているしメリットも自分から招き入れることが可能になりました。

子どもが起業するチャンスを与える

私がプロデュースしたさいたま市の学童保育施設「ダビンチボックス」では、小学生低学年を対象に「遊び創造プログラム」、高学年を対象に「起業家育成プログラム」を毎週行っています。低学年のコースは9月に始まったのですでに1ヶ月が経ちました。

簡単に言うと、子どもに擬似的に起業させるプログラムで、実際に作ったモノを販売、運用までやらせるという、学童保育のプログラムとしては恐らく世界初の試みです。かわいい子どもたちに、安全に(最初はガイド付きで)旅をさせる機会を与える感じです。

低学年・高学年どちらのクラスも、子どものアイデアを実現して世の中の人に使って楽しんでもらうという目的があります。

コースのカリキュラムこそあるけれども、スキルや心構えなど、必要だと思われる準備は全部そっちのけで、とにかくやりたいこと、作りたいことを作っていく。その中で遭遇する課題や問題をその時々で考え、解決していくというプログラム。俗に言うと「行き当たりばったり」のコースなのですが、その全ての体験をしっかり最後まで導いてあげることができれば、子どもにとっては変えがたい体験になり、さらに、成果物ができ、人に使ってもらうことができるために他では味わえない達成感も得られるはずです。メリットが多すぎるこの手法は普通教育に含まれるべきと常に考えています。

このプログラムを大人に紹介するとき、「起業家育成を小学生にやらせるんですよ!」と話すと、大抵は「そうなんですか。すごいですね〜」という中途半端な反応が返ってきます。幼稚なおもちゃができるだろうという、単に成果物を想像した上での感想なのかなと思ったりもします。

しかし実はその体験こそが大切。成功体験はもちろん、自分で考えたコト・モノを実体化させ、人に使ってもらって改善していくという、まさに起業家が日々繰り返し行っていることを小さい頃からできる(しかもルーティーンで)というのは、非常に貴重な機会だと、実際にクラスを始めてから改めて感じています。

想像以上、子どものヒラメキ力

とはいえ、実は私自身もさすがに低学年クラスはガイドである私の介入をかなり多めにしなければ、やりたいこともそのプロセスも子どもには分からないだろうと予想していました。低学年向けはそのため商品開発という手法でなく、「みんなで遊べる新しい遊びを創る」というコンセプトでした。ところが蓋を開けてみるとなんと1ヶ月ですでに商品化に向けて開発が進んでいるのです!

商品化開発に至った経緯を時系列で説明すると、

学童保育の部屋の中にみんなで遊べる

空間をつくりたい

→ダンボールで秘密基地

→狭い部屋だとスペースが足りない

→動かせる秘密基地なら?

→片付ける場所は?

→人が入れるロボット型の動く秘密基地にする。ロボットから変身して秘密基地になる

→この前松江城を見てかっこよかったから松江城型にしたい

松江城をググって全体像をプリントアウトしてイメージを掴み、紙の3Dで試してみます。

天守閣に頭を合わせると全体が大きくなりすぎ、全体に合わせると頭が入らないので、天守閣は帽子として頭に乗せることに。

すでに実寸で試して、細部や内部構造を調整中。実際に稼働しているのは多くても週2回の数時間。子どものヒラメキと、作る楽しみや夢を実現していく興奮をうまくリードすればこのスピードでも開発が可能というのを実証できました。

でも、作るためのダンボールが足りない。どうしよう。 そこで、子どもたちがダンボール集めすることに。ウェブにも動画でメッセージを作成します。プレゼンの練習もして、いざ撮影。初回なので緊張気味。

プロダクトができたらパッケージのデザイン、広告も考えて、必要ならクラウドファンディングも子ども達に準備させます。

プレスリリースも作り、商品発表記者会見もおもちゃのマイクを机に置いてする予定。(本当のマスコミもウェルカムです。)ふつうに生きていたらそんなことを実際にする機会はまずないですが、実はみんなやってみたいはずなので、やってしまいます。どんなことになるか今からワクワクしています。

私はグラフィックもデジタルもプロダクトもつくるデザイナーとしてたくさんのスタートアップのビジネスデザインに関わってきているだけでなく自分のビジネスも立ち上げている経験もあるので、子どものアイデアもうまくデザインし、持続性あるビジネスにするアイデアをいっしょに育てることができています。まだこのプログラムを始めて1ヶ月ですが、どんな子どもでも価値になる何かを創れるのではないか、と実感しつつあります。

避けては通れない「価値の創造力育成」

今よりさらに便利な時代になると、自分のアイデアを形にする力は、「あると良い」というレベルでなく、なくてはならなくなると見ています。

誰かに言われてやる仕事というのはつまり、人が指示できるものであり、ノウハウを知っていればでも出来てしまいます。やり方さえわかれば出来る作業は当然プログラム出来るので、必ずしも人がやる必要はないですよね。そういう仕事はほぼ全て自動化されます。

だから、子どもの時から何度も創造、失敗、改善、成功を体験させることが今よりもずっと重要になってきます。

教育システムとして、そのための仕組み作りはもちろん大切です。必要な知識の学習も。でも、とにかくやらせてみて、足りない知識や経験をその場でなんとかすることで獲得させるというプロセス自体が組み込まれるべきです。悪いことでない限り、子どもが何か始めたら止めずに見守ってあげる。介入をなるべくしない仕組みです(教育機関が子どもいっしょに盛り上がって何か作ってもいいでしょうね。ビジネスにつながるかもしれません。)慎重な性格の日本人には難しいかもしれませんが、今こそかわいい子には旅をさせましょう。

国民総プロデューサーへ

今まで私があった起業家のうち、100%が生き生きと目標の実現に向けて輝いていました。スマホの小さい画面ばっかり見て人生がそこに吸われていくような人が増えているこの時代に、起業家マインドは子どもだけでなく主婦や社会人、そしてシニアも持つべきではないでしょうか。国民総プロデューサーの国なら、世界で生き残れないわけがありません。

私はこの学童保育の起業家育成プログラムの仕組みをたくさんの人にも使ってもらいたいと考え、出張研修やハッカソンも行なっています。家族向けにファミリービジネスハッカソンもやろうとしています。

これからの時代をワクワクにしていきませんか?

船水誠(Mac Funamizu)株式会社あんふぁに 代表取締役

社会人として始めの10年は英会話の講師と通訳。コミュニケーションが大好きで、講師として生きていくはずが、2005年にデザイナーに転身。デジタル全般及びプロダクトデザイナー、クリエイティブディレクター。デザイン思考での事業構想・サービス設計を手がける。レッドドットコミュニケーションデザイン賞 2016、MUSE CREATIVE AWARDS プラチナ賞 2016、グッドデザイン賞 2015など各賞受賞。

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