中国の融資を拒否:シエラレオネってどんな国?

2018年10月14日 18:00

シエラレオネが中国からの融資で新空港を建設する計画をキャンセルした。このニュースが、日本で少しでもシエラレオネを語る理由になりうるのであれば、とても嬉しい。

「一帯一路」構想が暗礁に?アフリカ最貧国が中国の融資を拒否(アゴラ)

私自身はシエラレオネには数えきれないくらい行っているのだが、日本大使館もなく、日本での知名度はゼロに等しいだろう。学生相手に話題にする際には、「『ブラッド・ダイアモンド』って映画あったでしょ、ほらレオナルドディカプリオが出ていた…」、という話題の切り口だけはある。しかし、話が続くことはない。しかもこの切り口も、あと何年もつのか。私ですら、日本人向けの文章でシエラレオネを話題にすることは少ない。

それでもなぜ何度も行くのかと言えば、重要だからである。国連の公式サイトにでも行ってほしい。国連の平和活動は紛争社会を平和な社会に変えた!と主張する際に、真っ先に証左として例示するのが、シエラレオネであることがわかる。

今年の大統領選挙で、中国寄りとされたコロマ前政権に代わり、ビオ新政権ができた。そこで中国へのスタンスにも見直しが入った。

中国からの投資をキャンセルしたビオ大統領(国連サイト:編集部)

私自身は、シエラレオネ大学の平和紛争学部と共同研究をしたり、学生もこれまで10人近く受け入れたりしてきている(私は大学院授業を全て英語でやっているので)。ビオ新政権発足にともなって、長く付き合っていた平和紛争学部長のプラット氏は、大臣として任用されてしまった。しかし代わって学部長になったのは、広島大学で私の指導下で博士号を取得したアレックスである。

シエラレオネが成功例とされるのは、単に15年にわたって戦争が起こっていないからではない。戦争が終わってから、平和裏に選挙を通じた二回の政権交代を果たした。内戦後の社会では、これは大変なことなのである。特に2009年、選挙後に暴動が発生した後、二大政党が建設的な政党政治のありかたについて定めた「共同宣言」を発出し、その後の安定につなげたのは、世界の平和構築の事例の中でも特筆すべき、輝かしい記録だ。

内戦で破壊された学校(Wikipediaより:編集部)

地方部に行ってワークショップなどをすると、「戦争は苦しかったが、戦後に人権がよりよく守られる社会になったのは良かった」、と女性たちが口をそろえて言う。

人権や法の支配といった、国際社会の主流の価値観を標榜する形で、紛争後の平和構築が進められた。その成果を現地の人々が好意的にとらえているのが、シエラレオネである。だから国際機関や主要な援助国は、シエラレオネを評価するのである。

世界最貧国の一つである。国連開発計画の人間開発指標で、189か国中184位である(これでも15年前より少しマシになった)。近年多くのアフリカ諸国は、中国も利用して、高い経済成長を維持してきている。シエラレオネも例外ではない。近年中国との関係を深め、5%前後の経済成長率を維持している。現在のルンギ空港の不便さは並大抵ではない。シエラレオネに、中国との関係を悪化させる余裕はない。しかしシエラレオネのような国だからこそ、多角的な外交関係を基盤にした政治リーダーの役割は大きい。

それにしても、日本は、「大使館がないから」といった理由で、簡単にシエラレオネを軽視しようとする。ないなら、作ればいいだけなので、あまり説得力のある言い訳ではない。要するに、軽視しているだけだ。

中国の一帯一路は、アフリカに到達した後も、大陸を貫いて大西洋岸にまで到達している。日本が推進する「インド太平洋」戦略は、かろうじてアデン湾くらいをかすめて、それで終わりか。「戦略」の戦略的内実が問われている。


編集部より:このブログは篠田英朗・東京外国語大学教授の公式ブログ『「平和構築」を専門にする国際政治学者』2018年10月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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篠田 英朗
東京外国語大学総合国際学研究院教授

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