バロンズ:米株安と米債安の同時進行がもたらすリスク

2018年10月15日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーはもちろん米株安を取り上げる。強気で知られるバロンズ誌ながら、足元の急落劇が早々に幕を下ろすとは想定していない。投資家が長い夢から醒め、税制改革法案で成立した減税措置の成長押し上げ効果が、金利上昇や追加関税措置によるマイナス効果に寄って相殺されると気づき始めたと唱える。10月入りから始まった米株安により、S&P500のリターンは9月末までの11%高から5%も上昇率を吹き飛ばした。問題はどこまで下落するかだが、弱気相場入りまでの悲観には傾いていないようだ。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリートも、米株安のほか、米株と米債の相関関係の変化に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

米株相場が常軌を逸したの理由—Why the Stock Market Went Loco.

米株相場が調整入りしたのか否か——これが、10月10〜11日にダウが1,300ドル以上も急落した後の疑問だろう。12日に米株の急落は小休止したとはいえ、8日週の米株は大幅安を迎え、ダウは4.2%安、S&P500は4.1%安、ナスダックは3.7%安で取引を終えた。上海総合に至っては7.6%安をつけ、日経からストックス・ヨーロッパ600など軒並み下落した。

10月12日は上昇に転じ、S&P500は1.4%高、ナスダックは2.3%高の反発を遂げた。マーケット・セミオティックスのウッディ・ドーシー氏は、同社の強気・弱気指標のうち強気の見方がゼロになったと指摘した上で、米株安パニックは短命に終わると予想する。

ストラテガス・リサーチのジェイソン・トレナート氏は、米株安の背景としてFAANG銘柄の利益確定を挙げる。また、クレジット・スプレットが拡大しておらず、信用市場が急変していないとも指摘した。マスミューチュアルの副最高投資責任者(CIO)のクリフ・ノーリーン氏も、投資適格級の社債と高利回り債のパフォーマンスが米株に対し好調と分析する。実際、iシェアーズ iBoxx 米ドル建て投資適格社債 ETF(LQD)は8日週を0.5%高で終え、iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF(HYG)は0.3%安にとどまった。

iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETFは、米株と違って200日移動平均線を割り込まず、上昇へ反転。

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(出所:Stockcharts)

だからといって、強気相場は早々に再開しそうもない。ルーソールド・グループのダグ・ラムジー最高投資責任者(CIO)は、S&P500が9月20日につけた高値2,930.75でピークアウトすると見込む。その理由として、強気相場をけん引するテーマの乏しさを挙げる。

米株安の最中、FF金利誘導目標の水準が話題になった。トランプ大統領が、利上げを継続する米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に対し「常軌を逸した(crazy, loco)」、「制御できない(out of control)」と矢継ぎ早の批判を展開したためだ。トランプ大統領は、パウエルFRB議長を解雇しないと発言したものの、Fedより金融政策を理解しているとも言い放った(筆者注:トランプ大統領がパウエルFRB議長を解雇することは極めて不可能に近い)。批判を一身に浴びるパウエルFRB議長は、声明文から削除したとはいえ金融政策は未だ「緩和的」との見解を寄せる。確かに、消費者物価指数が前年比2.7%の状況下で、現在のFF金利誘導目標レンジ2.0〜2.25%は実質ベースではマイナス金利の状態だ。

ただ米株市場関係者は、短期金利より長期金利に注目している節がある。米10年債利回りは、ファンダメタルズ並びにテクニカルの両面で上昇してきた。何より重要なことに、米債と米株の相関性に変化がみられる。ビアンコ・リサーチのジェームズ・ビアンコ代表の言葉を借りるなら、”体制の変化(regime change)”を経験しており、これまで米株安の局面で米債が買われ利回りは低下してきた。ITバブル崩壊時や金融危機での相場動向が良い例だ。しかし、足元は米株安と米債安が同時進行している。過去にそのような局面を迎えたのは、1960年代後期から1990年代にかけてで、特にインフレ圧力が高まった1970年代は利上げに伴い、米株は弱気相場入りし米債利回りは急騰した。逆に大いなる強気相場局面を迎えた1980年代から1990年代にかけては、米債利回りが過去最高の水準から低下し、米株高を支えた。

現代に視点を移すと、米10年債利回りは10月5日に3.231%、米30年債利回りは3.405%間で上昇し、その動きにつれて米株が急落した。米株と米債の相関関係の変化は、金融機関から年金、ヘッジファンドまで、あらゆるポートフォリオに影響を与えうる。海外投資家にとっては、特に問題だ。

海外投資家は、例えばドル建て高利回り債を取得する際に為替リスクをヘッジするが、信用市場のリサーチ・ヘッドであるデビッド・P・ゴールドマン氏は「デリバティブの火山が噴火した可能性」に注意を寄せる。欧州の銀行において、借り入れ能力が限界に達しつつあるためだ。同氏いわく「5年に及ぶマイナス金利を経て利益率は低下し、欧州株価は下落し、信用は悪化しているため、ドルの借り入れが困難となり、地元の投資家が必要なヘッジを提供できない」という。

国際決済銀行(BIS)の試算によれば、非米系銀の借り入れ額はドル建てで10.7兆ドルで、為替市場でのスワップ取引は総額13兆ドルから14兆ドルとされる。ゴールドマン氏は欧州の銀行システムがもはやこうしたフローを支えきれないと予想、11兆ドル近くもの決済をロールオーバーできなくなれば、欧州の銀行はデフォルトを余儀なくされると指摘する。海外の投資家がドル建て資産を買い支えられなくなれば、米債利回りはさらに上振れするだろう。

ただし、ゴールドマン氏は欧州の各政府が地元の銀行のデフォルトを放置するとは想定せず、買収や緊急資本注入で凌ぐ見通しだ。いずれにしても、米株市場は米債利回り低下による救済を期待できそうもない。

——ここ1〜2年ほど、ランダル・フォーサイス氏は悲観寄りへシフトしていますが、今回の指摘は疑問を抱かざるを得ません。先に、米株市場より米高利回り債市場が堅調と指摘しておきながら、欧州の銀行発のデフォルト危機を煽るのは、説得力に欠ける気がします。欧州の銀行がドルを調達できない→欧州投資家が米高利回り債の取得に必要なヘッジができず、米高利回り債から撤退——という図式が成立するならば、米高利回り債市場は既に大幅安となっていそうな気がするのは、筆者だけでしょうか?個人的には、2月から春先の相場展開を踏襲し、200日移動平均線を割り込んだ後、決算を手掛かりに戻してくると予想しています。

(カバー写真:Dirk Knight/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年10月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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