フィンテックにおける個人情報の保護から利用への道

2018年10月16日 11:30

学生に融資をする学生ローンは、就職後の将来所得を弁済原資に予定している。いわば出世払いである。故に、学生が出世できるかどうかは決定的に重要な要素であって、金融理論からすれば、出世すればするほど学生に有利になるように、融資条件を設計しておく必要がある。

敢えて、率直ないい方をすれば、高学歴、高成績の学生ほど、卒業後の所得が大きくなる傾向を否定できない以上、世間で一流とみなされている大学を優秀な成績で卒業する学生は、債権者の立場からいえば、好条件で優遇できる債務者だということである。

学業に励み、よりよい成績を修めれば、就職も有利となり、学生ローンの条件もよくなる、このことは、金融の本質にかかわるばかりでなく、教育という産業の本質にもかかわることである。

米国において、有名なビジネススクールの学費が著しく高いのは、難関校を高成績で卒業すれば、就職条件が極めてよくなるからで、それを前提にして、学生ローンがなりたっているのだ。実際、高額な学費は、高額な学生ローンで賄うしかなく、高額な学生ローンは、卒業後の高所得で弁済されるほかない。そうした環境下だからこそ、学生は必死で学業に励むのである。

成績を学生ローンの条件に反映させるためには、債務者の学生は、成績という個人情報を債権者の銀行等に提供しなければならない。多数の学生について、定期的に成績情報を更新し、それを融資条件に反映させていくことは、考え方としては簡単でも、事務処理的には容易ではない。そこに、フィンテックが登場する理由がある。

手作業ではできないことも、情報の入手から処理までIT技術で自動化すれば可能になる。ひとたび情報処理を自動化できる環境が整えば、入手情報の範囲を一気に拡大し、成績のみならず、クラブ活動、ボランティア活動などの学生の行動と、将来所得との関係について統計的に有意なものを見出すことができるかもしれず、そうなれば、学生ローンの条件は、より精緻に決定できることになる。

フィンテックには多様なものを含み得るが、その代表的な大きな分野こそ、融資条件の精緻化について、IT技術を用いて膨大な外部情報を取り込み、人口知能の活用も含めて、その処理の高度化を図ることである。

鍵は個人情報の保護法制の問題だが、原理的には、情報を提供する側の合意があれば、保護から利用への道が開かれるのだから、本質的な論点は債務者が情報を提供する利益誘因である。では、なぜ、債務者は、積極的に個人情報を提供するようになるのか、それは、そのほうが債務者に有利になるように設計されているからである。

学生ローンの条件が学業の成績で決まるから、成績を開示する、そこにフィンテックの本質があるのである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
facebook:森本紀行

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