便乗お買い物の温床:防衛省補正予算は正常化するのか?

さて、来年度の防衛省概算要求に続き、本年度の補正予算がでてきました。

これをみると、東日本大震災以降の「便乗お買い物」がなくなっています。

被災地で防衛省による入浴支援サービスに活用された民間船舶「はくおう」(平成30年度補正予算案の概要より:編集部)

補正予算とは、当初予算成立後に発生した事由によって、当初予算通りの執行が困難になった時に、本予算の内容を変更するように組まれた予算です。

IMIDASのサイトには以下のように記述があります。

補正予算は、当初予算と同様に、国会で審議され、その承認を受けて初めて実行される。しかし、緊急を要することを理由に、当初予算と比べると短い審議時間で可決される場合が少なくなく、無駄な公共事業が大量に盛り込まれることもあった。

「補正予算」は、あくまで当初予算を補正するもの。国家財政が厳しさを増す中、必要なものは迅速に、しかし、安易な補正予算が組まれないよう、十分なチェックが必要なのである。

既に何度もご案内ですが、大震災以降、本来本予算で買うべき装備を、前年度の補正予算で買う。状況証拠をみれば、概算要求から政府案予算になる段階で落とされた「買い物」を、補正予算で救っていることになります。

あるいは始めから本年度の補正で装備を買うことを予定して、来年度予算を組んでいるとも見ることができます。

政府専用機の予算がなんで「予測不可能、あるいは突発的な支出」なんでしょうか。
そう強弁するのであれば、防衛省の予算担当者は無能の集まりということになります。

来年度で買うものを、政府が必要度が低いと落としたはずのものを、本年度の予算で買うのは一種の詐欺です。
財務省的には、それでも5年間の中期防衛力計画の所定予算内に収まっていればよろしいという判断らしいのですが、であれば国会の審議は必要ない。あるいは国会軽視ということになります。

これは文民統制の否定であり、財務省が予算を監理するのであれば、文民統制ではなく官僚統制です。
これに対して政治家が怒らないのが不思議でなりません。

しかし、先述のように今回の補正は、昨今の天災に対する支出などが主であり、概ね本来の意味の補正予算に戻っているといえます。

ただし、今後の第二、第三次の補正予算も想定されるので、そこでまた来年度の予算で落とされた「お買い物」、あるいは始めから補正予算を当てにしていた「お買い物」が要求されるかもしれません。

政治もメディアもしっかり追及して欲しいものです。

ぼくはブログでは比較的キツめ、あるいは皮肉を込めた書き方をしていますが、こういうことを書くと市ヶ谷の人たちは、反発するわけですが、少しは世間の風に当たるべきです。

自分たちの組織の中だけでしか通用しない「常識」を互いに振り回しているから、自分たちは無謬だ、常に正しい、批判するやつは国賊だ、みたいな考え方をする人が多いわけです。

何かあればメディアが悪い、野党が悪いと被害者妄想を振りまきます。
率直に申して、僕の知る限り自衛官は諸外国の軍人に比べて世間知らずの純粋培養で、ナイーブな人たちが多いように思えます。

敢えて言えば、自分たちが盲人であるのに、周りが皆盲人だから目明きのいうことが理解できない。
だからあれこれ小理屈ならべて、自己正当化を図って組織内でうなずきあっている。

世間からみれば幼稚だし、「暴力装置」としては極めて危険です。
もっと自分たちの「常識」を常に疑うべきじゃないでしょうかね。

他者からの批判に耐えられない、聞く気がないというのは、精神的にひ弱ということでもあります。

ぼくのブログや記事が間違っているというのであれば、そういう指摘をすればいいわけですが、殆ど無いですよね。
内弁慶で仲間内で悪口を言い合うだけ。ぼくはいつでも公開の場での討論なら歓迎しますよ。
外で喧嘩のできないやつは弱虫の意気地なしです。

納税者に開示して当然の情報を隠し、また世間で全く通用しない小理屈ならべて悦にいっている場合ではないでしょう。もっと世間の人間と交流し、世間様の常識を学ぶべきです。

たまにはコミュティーの集まりに参加するとか、奥さんのお友達と御飯食べるとか、読書会に参加するとか、自衛隊関係者以外の人たちと交流を持つべきだと思いますけどね。

まあ、仕事の原稿はともかく、ぼくがここである程度きつく書いているのは、防衛省の役人、自衛官は鈍い上に唯我独尊で自分が偉いと思っているから、優しくサジョスチョン的な書き方をしても無視するからです。この野郎、と思われても、多少なりともインパクトを与える書き方が必要だと思っています。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年10月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。