バロンズ:Fedプット、パウエル議長は行使を検討せず?

2018年10月22日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーはエマージング市場の専門家によるラウンドテーブルを取り上げる。2018年は、エマージング市場にとって災難の年となった。米金利の上昇と中国の景気減速により株式や通貨が急落し、MSCIエマージング・マーケット・インデックスは1月の高値から23%下落、2017年の34%高と明暗を分けている。中国の上海総合も35%急落し、トルコ・リラは37%の大幅安を迎え、エマージング市場では痛みが広がる。ただし、今日の痛みは明日の利益との言葉もある。世界の人口の83%がエマージング国に住んでいるだけでなく、そのうち約半分が中間層に相当する。米株に比べ、かなり割安となるエマージング株などは押し目を拾うチャンスが到来したのではないか。気になるラウンドテーブルの詳細は、本誌をご覧下さい。

ブラックマンデーから31年、Fedは今も市場のサポート役に徹する—31 Years After Black Monday, the Fed Still Plays a Supporting Role in the Market.

ボラティリティの激しい1週間の終わりに、ブラックマンデーは31周年を迎えた。1987年10月19日、ダウ平均は1日で500ドル以上も急落、下落率は23%とウォール街の歴史で最大となる。

今の500ドル安は、当時と雲泥の差だ。16日には548ドル高を記録したが、ブラックマンデーの下落分の1割程度の2.2%高に過ぎない。結局、15日週のダウは急変動を繰り返し0.4%高で引け、S&P500は0.02%高、ナスダックは0.6%安で終了した。

S&P500、200日移動平均線を何とかキープして引け。
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(出所:Stockcharts)

ブラックマンデーの重要性は、その下げ幅より”グリーンスパン・プット”という言葉を知らしめた点にある。米株の急落に伴う米経済の影響に対応するため、グリーンスパン議長率いるFedは利下げを断行、米債相場のラリーを招くと同時に米株相場の回復をもたらし、結果的にブラックマンデーの米経済への影響はごく限定的にとどまった。

プット・オプション、すなわち相場の下落局面で売る権利を行使するもので保険のような役割を有するが、”グリーンスパン・プット”はブラックマンデー以降も度々登場した。1998年のLTCM危機当時、2001年のITバブル崩壊時などが思い出されよう。グリーンスパンFRB議長(当時)の後任はこれを受け継ぎ、2007〜08年にかけての金融危機でバーナンキFRB議長(当時)はゼロ金利政策だけでなく、量的緩和に踏み切った。

バーナンキ氏の後任となったイエレンFRB議長(当時)は緩和策を打ち出す必要はなかったが、原油ををはじめとした商品先物市場の下落を受けて2016年の利上げを1度にとどめた。

しかし、Fedプットはいずれ失効してしまうのではないだろうか。グラスキン・シェフのデビッド・ローゼンバーグ主席エコノミストは「Fedによる資産サイクルの創造を狙った政策は、現FRB議長のパウエル氏で終止符を打つ」と予想する。むしろパウエルFRB議長は「ボルカー元FRB議長がインフレを葬ったように、資産インフレ依存の経済から脱却を図り、ファンダメタルズや生産性を重視するようになる」と見込む。

トランプ大統領は、既に利上げを行うFedに「常軌を逸している」と数々の口撃を放ってきた。トランプ大統領が米株相場を自身への採点票と捉えるならば、批判を苛烈さを増すであろう。

ローゼンバーグ氏は自身の考えを補強する上で、パウエル氏がFRB議長の発言に注目する。パウエル氏はFRB理事時代に「金融環境のあぶく」とする言葉を使った。またFRB議長に就任後も、インフレではなく「金融市場における不安定化をもたらす過剰行為」について警告。過去をひも解くと、こうした発言の後にFedが引き締め寄りの政策を講じ経済に打撃を与えてきた。

一方で中国では、株式市場が水準を決められるような状況にはない。中国7〜9月期実質GDP成長率が前年比6.5%増と2009年以来の水準へ減速した19日、中国の金融規制当局が市場への支援策として、資金繰りが悪化した企業に流動性を供給するプロフラムを提供するほか、自社株買いをサポートする方針を確約した。さらに、同当局は経済ファンダメタルズが健全との見解を表明。おかげで、上海総合は2.6%高で取引を終えた。

米株に視点を戻すと、米国市場の投資家にとってFedプットに長らく依存してきた。ローゼンバーグ氏の予測が的中すれば、市場に衝撃を与えかねない。


パウエルFRB議長をはじめ、株価急落局面でFedから出てきたコメントに米株安を憂慮する見解は聞かれていません。2月の米株急落時も、NYやワシントンD.C.で聞き取り調査を行った際に関係者から聞こえてきた言葉は「遅きに失した」——つまり、Fedはずっと以前から米株の調整を予想しており、想定の範囲内にとどまっていたというものです。

また9月FOMC議事要旨では、レバレッジドローンやノンバンクでの融資を注視する姿勢を忘れませんでした。何より、9月FOMC議事要旨では、中立金利より若干引き締め寄りへのシフトを許容する参加者が16名中14名と大半に及ぶことが分かっています。Fedがバブルを警戒しているのは明らかで、Fedに舌鋒鋭い批判を浴びせるトランプ大統領も、いずれ感謝したり?

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年10月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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