京都の御所の杜保育園に見る、医療者ができる子育て支援の姿

「息子が1000グラムの未熟児で産まれてね。絶対に助からない、と上司からも言われたんだ。僕もそう思ってた」

京都有数の産婦人科である足立病院院長、畑山博先生はそう言いました。

「でも、死なせちゃダメだ。と自分が妻の分娩を担当したよ。息子は脳出血やら色んな症状があって、いつ亡くなるか分からなかった。妻も毎日泣いていたよ。

でも、ちょっとずつ大きくなっていって、今は28歳。結局医師になってさ。

未熟児だった自分がもしかしたら、未熟児で産まれた子どもを持つ親に希望を与えられるかもしれない、っていうことで、未熟児をみる専門の医者になったよ」

畑山先生は、ご自身の息子さんの経験から、医療的ケア児を支援したいと、ずっと思われてきました。

しかし中々に医ケア児の支援はハードルが高い。そんな時に、フローレンスの運営する障害児保育園ヘレンに視察に来てくださり、これはできる、と確信されたそうです。

「看護師たちに、『東京では保育士たちが医ケア児を立派に保育してるんだ』ってなんども伝えてね。認可園をつくる時に、医ケア児たちも受け入れようって団体内を説得したんだよ」

2000平米の国有地に建てた御所の杜保育園は、本当に素晴らしい園舎で、園庭も天然芝で小さな丘もあり、子どもがダンボールで滑り降りる遊びもできるようになっています。

認可園ながら、医ケア児の部屋もあり、看護師さんたちが4人の医ケア児の受け入れを行なっています。

足立病院は御所の杜保育園だけでなく、病児保育や子育て支援センター等を展開されていて、出産だけでなく、その後に安心して子育てができるような社会資源を開発し続けていらっしゃいました。

まさに、児童福祉と医療が切れ目なく繋がる、理想的なあり方をそこに見ました。

まだまだ日本では、医療は医療。保育は保育で、福祉は福祉、と専門性のサイロによって支援が断絶されていることが非常に多いです。

しかし、畑山先生のような医療者の方が、その壁を軽々と超え、地域に親子のためのセーフティネットを創ってくださっているのを見て、確かな希望を感じました。

フローレンスはこれからも、足立病院さんのような医療関係者の方々と連携し、児童福祉と保育と医療の輪を繋げていきたいと思います。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年10月22日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。