サウジ記者殺害:治外法権ムシはすごいけど、各首脳までナゼ騒ぐ?

2018年10月24日 17:00

今月2日、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館でサウジ人のジャーナリストが亡くなった事件は連日テレビニュースはトップクラス、新聞報道も大きく扱っています。

確かに「人が1人、亡くなった」ということではなく、サウジ政府を批判してきたジャーナリストが殺されたということは由々しき事態ですが、欧米も含めて世界中のメディアが大きく扱っているのは不思議です。

もちろん良いことではありません。
しかし世界を見渡すと反政府系のジャーナリストや活動家が抹殺されることは中国やロシアなどをはじめとしてよくあることです。
さすがに日米欧など民主主義国家では言論の自由もあってそうしたことはないはずですがしかし世界では珍しくはありません。

さらにニュースでもう一つ驚いたのはトルコ警察がサウジ総領事館を捜査していたことです。
普通は領事館や大使館は治外法権でその国の法律が及びませんので、どの国も警察の捜査などは絶対に拒否するのが常識ですが、サウジは認めたということでしょうか。
確かにトルコ政府や警察が次々と情報をリークしてサウジがそれを後追いして認めるという構図や、トルコのエルドアン大統領がサウジのサルマン国王に電話をかけて全面的な協力を取り付けたことなどがあったにせよこれも不思議です。

それにしてもこの事件がなぜこれほど大きく扱われているのでしょうか?

人権や人道問題ではないでしょう。
もしそうだとしたら他にも扱わなければならなくなる案件はたくさんあります。
やはりこれは政治問題、駆け引きでしょう。

そもそも現在、世界で身柄を拘束されているジャーナリスト161人のうち27人はトルコ国内で刑務所に入れられています。
もちろんトルコが最多でエルドアン大統領が人権問題を言う資格はありませんし、むしろ目をそらすためなのかもしれません。

このほかにもいろいろありそうです。
ざっと挙げてみると、
・サウジがテロ組織と認定しているムスリム同胞団という団体はトルコのエルドアン大統領の支持基盤の一つ
・カタール国とサウジは断交していますが、トルコは逆に緊密な関係
・シリア内戦で反政府系勢力を支援するアメリカに対して、トルコはロシアやイランとともにアサド政権側の立場に立ち、そしてイランを徹底的に敵視しているサウジ
・トルコのアメリカ人牧師の身柄拘束とこれに対抗するアメリカの鉄鋼アルミ製品の関税引き上げ、そしてトルコリラの暴落

トルコとサウジの2国間関係や中東諸国全体のパワーバランス、またアメリカと極めて緊密な関係なサウジをいじめたり許すことのアメリカに対するトルコの貸し借り勘定などいろいろな要因が考えられます。

今回の真実・真相はわかりませんが国際社会や政治はかくも価値観バラバラ、権謀術数ドロドロで、国益や権力者の利益の引っ張り合いというドロドロの中に生きていることは再確認します。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2018年10月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
中田 宏
元衆議院議員、前横浜市長

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑