われわれは増加する発達障害とどう向き合うのか

2018年10月28日 11:30

発達障害は、心の病とちがい、ある時点で「なにかがおかしい」と気づきます。それが「発達障害」なのではという疑念になります。仮にそれが正しい推測だったとしても、すぐに治せる方法はありません。

お医者さんの間でも、発達障害なのか個性なのか見解が分かれる場合は多いのです。

自分は発達障害かもしれないと考えて、精神科を受診する人は、増えています。ただし、発達障害は時代によって分類や診断の方法が変化しています。これも、発達障害をわかりにくくしている原因のひとつです。

三歳児神話と発達障害

少なくとも、「発達障害に関しては」、乳幼児期の親の育て方が悪いとかそういう問題ではないのです。

発達障害は、脳機能障害のひとつであることは、間違いないです。そして、それは先天的なもの、脳の発達がもともと通常とちがったため、本来の働きができなくなっているということです。

臨床医学的には、発達障害は「脳の問題」として認識されているのに対し、他方では「発達障害は躾の問題」と主張する人たちも少なからずいます。それが高じて「伝統的子育てに帰れ」という人も出てきます。一部では、「子供が発達障害になったのは乳幼児期の愛情不足」という認識が広まってしまっています。

しかし、乳幼児に目もくれずスマホを見つめている親御さんを見ると、その子供が幼稚園、小学校に入るころには、発達障害とは別に、コミュニケーションに難が出るのではないかとも危惧してしまいます。

なにをもって「定型発達」なのか「どれだけ平均から乖離しているから障害」といった線を引くのは難しいのです。「グレーゾーン」をどう扱うかも問題です。なんらかの先天的な脳神経の発達の障害ということはわかっていますが、それ以上はわかっていません。診断のガイドライン頼みというところでしょう。

なぜ増えたのか(増えたと感じるのか)

たしかに発達障害の診断は増えています。けれども、人間の遺伝子がここ数十年で決定的に変化したとも思えません。けれども、「実際に診断を受ける子供」が増加しているのは事実です。

これは、発達障害への社会的な注目の高まりによって、基準が分かりにくいこの発達障害において「過剰診断」が行われていることが、一因かもしれません。この「過剰診断」が「発達障害者の増加」につながっているのではないでしょうか。

発達障害ではないが発達障害と同じようなふるまいをする子供たち

ただし、最近の研究では、暴力を受けて育った子供は、些細なことがきっかけで自分もすぐに暴力を振るってしまう。最近になって、子供の虐待の後遺症で、脳の動きや形に変化が起こってしまうことがわかってきています。安心できない状態で育つと、脳自体が変形してしまうという結果です。

子供が置かれた過酷な環境が、発達障害世同じような症状を子どもに引き起こす原因になっているといいます。私の肌感覚では、手を出せない教員より、折檻も辞さない親御さんのほうが怖いという子供は増えている印象があります。

最初に、乳幼児期の親の育て方が悪いとかそういう問題ではないと述べましたが、それは「発達障害(先天性)」の原因ではないということです。けれども、この脳の変形によって、「後天的」に発達障害と同じような症状になる子供が増えているようです。

発達障害の診断の増加は、「躾の問題」ではなく、乳幼児期に子供との距離の取り方がわからず、愛情が適切にかけられなかった親御さんの問題のようです。わたしたちは、もっと子供と養育者の愛情について、深く、広く、真剣に考えなくてはならない地点に立っているのでしょう。

子どもの脳を傷つける親たち (NHK出版新書 523)
友田 明美
NHK出版
2017-08-08

 

 

中沢 良平(元小学校教諭)

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑