原発ゼロに向けて、電力市場の整備が急務

原発ゼロ・再生可能エネルギー100%を実現するための電力システムの抜本改革について専門家のお話をお聞きしました。変動する電源をベースにどのように電力システム全体を管理するか、その鍵は「電力市場」にあることを学びました。

ドイツでは再生可能エネルギーの優先給電をベースに、全ての発電と需要が電力市場でつながっており、電力の供給量と使用量のバランスを市場の機能を使って実現しています。その際、いわゆるバーチャルパワープラント(VPP)という仕組みが重要な役割を果たします。電力システムの考え方、ポイントは以下の通りです。

(1)発電された電気については全て電力市場に繋がれていて、リアルタイムで供給と需要のバランスを市場を通して実現する。全ての発電と需要のデータ、コントロールはデジタル化されており、全体で調整されている。

(2)電力の価格は市場の需給バランスによって変動する。例えば晴天で太陽光発電が大きく発電量を増やせば、電力価格が下がる。逆に再エネの発電量が少なければ電力価格が上がる。

(3)需要家はこうした電力価格の変動を予測活用して(天気予報の高度化によって予測が可能、VPPの事業者(アグリゲーター)が調整する)、電力価格が安い時に電気を多く使い、価格が高い時には使わないといったコントロールを自主的に行う。こうすることで、電力の需要家である企業においてもコスト削減が可能となる。(深夜電力利用のイメージ)

(4)発電側にあっては、需要の変動に合わせて発電できるシステムがより有利になる。原発や石炭火力のように出力調整が苦手な電源は不利となる。再生可能エネルギーは優先給電でベースとなり、その上で市場価格の機能により、余剰、不足分について手当てされる。アグリゲーターは多くの小型の発電所(バイオマス発電など)を束ねて、全体で供給をコントロールする。大型の火力発電所をコントロールするよりもロスが少ない。

(5)ドイツでは余剰電力については熱への転換(余剰電力を熱(湯)に変換して貯める、蓄電よりもコストが安くすむ)、ガス化(余剰電力を使って、メタンガスを発生させガスとして貯蔵利用する、既存のガス火力との連携も可能であり、余計な設備投資が不要で合理的)など、系統連携による融通とともに活用が進む。日本では揚水発電もあり、さらに電気自動車への給電が一般化されれば別途蓄電池を準備する必要もなくなり、ガソリンからのシフトも進む。

「再生可能エネルギーの優先給電」「発送電の分離、送配電の分離(送電網の公共インフラ化)」を前提として「原発ゼロ」、「電力市場のデジタル化」、「省エネ・節電の徹底」で日本のエネルギー改革を実現します。

山崎 誠 立憲民主党衆議院議員 神奈川県第5区(戸塚区・泉区・瀬谷区)総支部長、立憲民主党政策調査会副会長、エネルギー調査会事務局長
環境・エネルギー・地方創生・社会保障政策・教育政策を中心に活動を展開。 元横浜市会議員、日揮株式会社、株式会社熊谷組勤務。山崎誠政策研究所代表、森びとプロジェクト委員会顧問、よりそいサポートネットワーク事務局長等