アベノミクスの柱であった日銀の異次元緩和からの脱却

2018年11月07日 11:30

日銀の黒田総裁は11月5日の名古屋での講演において以下のような発言があった(講演要旨から引用)。

「かつてのように、デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています。」

これは日銀の金融政策の大きな方向転換を示すものと見ざるを得ない。日銀が掲げた物価目標の2%は達成されてはいない。しかし、「既にわが国は、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっています。」との黒田総裁のコメント通り、デフレという状況下にはない。

7月の金融政策決定会合では、政策の持続性を強化するための措置を決定し、その効果を黒田総裁は強調している。しかし、「フォワードガイダンス」の導入は、「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうること」としたもののバーターというか、引き締め策に転じたわけではないことを示すためのものと私は受け取っている。

「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうること」としたことで、黒田総裁はそれによる効果は既に表れていると指摘するが、債券市場の日々の動きを追う限りにおいて、現実にはそれほど債券市場の機能が回復しているようには見えない。

債券市場の機能回復とともに、強力な金融緩和がもたらす影響(副作用)として「金融機関の収益や金融仲介機能との関係も、しばしば議論の対象となる」と指摘している。遠回しの表現ながら日銀も当然、銀行の銀行であり、銀行収益に与える影響は大きな懸念材料としてみていても不思議ではない。

その上で総裁は、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっていると断じている。これはアベノミクスの一丁目一番地ともいわれた日銀の異次元緩和からの脱却を意識した発言と私は見ている。

それでは今後、この脱却に向けてどのような修正を日銀は行ってくるのか。これについては、以前にも指摘し、繰り返しとなるが、下記のようなことが予想されうる。

現在の日銀の保有資産はすでに名目GDPを上回っている。この量による効果を維持させることで、異次元の緩和効果を維持させることをアピールする。マイナス金利政策を止めて短期金利もプラスとし、短期金融市場を活性化させる。さらに長期金利のコントロールも止めることで債券市場の機能も回復させ、金利が動くことによって企業の設備投資などにも刺激を与える。

将来にわたって低金利が続くと予想すれば、金利が低いうちに資金を借りたいとのインセンティブが働きにくくなる。金利は今後上がる可能性が出てくるとなれば、寝ていた資金が多少なり動いてきても不思議ではない。

日銀としては、これらは緩和策からの後退ではなく、大規模な緩和効果は維持しつつ、金利がファンダメンタルに応じた動きに戻すことを目的とする。利上げは当面行うことはないと強調し、正常化という表現には表面上距離を置くことで、外為市場などでの急激な円高などを防ぐ。

本格的な債券市場の機能回復と、金融機関が正常な資産運用をするためには、マイナス金利政策と長期金利コントロールから手を引くことが大きな前提条件となる。それを市場に動揺を与えずにどのように行うのかは大きな課題となる。少なくとも短期金融市場と債券市場の国内の参加者はこれらの動きを当然ながら好感しよう。問題は外為市場と株式市場、そして海外投資家の見方となるのではなかろうか。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年11月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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