下克上をもう一度!西岡、成瀬…元ロッテ戦士トライアウトへ

2018年11月11日 06:00

4年ぶりの日米野球は10日夜、第2戦が行われ、日本が柳田悠岐(ソフトバンク)の連夜の一発など17安打を集める猛攻で連勝する好スタートを切った。非公式戦とはいえ、メジャー軍団との力比べの舞台は醍醐味がある。15日までにあと4試合行われるが、今週には、その檜舞台の裏でもう一つの真剣勝負が行われる。各球団から戦力外通告を受けた選手たちが生き残りをかけたトライアウトだ。

開幕戦や日本シリーズなどの節目を除き、関東地区の地上波放送から姿を消した感のあるプロ野球だが、近年、トライアウトは思わぬ「人気コンテンツ」になっている。あさって13日に福岡・筑後市で行われる今回から初めて観客が有料制になる(通常価格が800円、12球団ファンクラブ加入者は300円)。

2018年トライアウト会場のタマホームスタジアム筑後(球場公式ツイッターより)

人気の理由の一つは、TBS系列のドキュメント番組「プロ野球戦力外通告クビを宣告された男達」だろう。戦力外通告された選手たちがトライアウトに挑み、その結果までをスタッフが密着取材するもので年々人気が上昇している。

昨年12月30日の番組(↑ 公式YouTube)は午後10時からの深夜で、各局とも特別編成している中で視聴率は11.1%(関東地区、ビデオリサーチ)と2桁を集めた。復活をかける選手たちの、家族も含めた喜怒哀楽、生き様が、プロ野球ファン以外の人も含めて、何か今の世の中で胸を打つものがあるのだろう。

下克上日本一で投打の柱だった2人

ロッテ時代の西岡(2009年)

2007〜10年、私は野球記者をしていた際、当時は今ほどの注目度がなかったこともあり、残念ながらトライアウトを直接取材する機会はなかった。その後、新聞社を辞めて野球の世界から離れてしまい、トライアウトのことは前述の番組をたまに観るくらいだったが、今回は関心の度合いが違う。かつて2年間担当記者だったロッテで、当時、まさに投打の柱だった、西岡剛内野手(阪神)、成瀬善久投手(ヤクルト)の2人が出場するのだ。

私がロッテを担当したのは、2009年と10年の2シーズン。1年目はバレンタイン監督のシーズン限りの退任が決まっていてレームダック化。球団内部での権力争いもひどく試合どころではなくなり、5位に低迷した。そして2010年は体制一新、レギュラーシーズンこそ3位だったが、クライマックスシリーズを勝ち抜き、日本シリーズも制覇。史上初めてシーズン3位のチームが頂点に立地、「下克上日本一」と呼ばれた。この快挙はまだ他球団はなし得ていない。

この2年はまさに「地獄から天国」。特に西岡は2009年のシーズン終盤には、試合中に心無い一部ファンから「二日酔いで試合サボり夢を語るスピードスター」などと横断幕を掲げられる誹謗中傷を受け、ロッテファン同士が試合中に対立する異常事態の試練にも直面。しかし翌年は初めてキャプテンとしてシーズンに臨み、全144試合フルイニング出場を達成。スイッチヒッターとして史上初の200安打を放って首位打者を獲得するなど、まさに原動力となった。

一方、成瀬は、2009年までエースだった清水直行投手が横浜に移籍したことで文字通りの大黒柱に。2010年は13勝(11敗)をあげ、ポストシーズンでの快投で下克上達成に導いた。

ロッテを離れてからの苦難

ロッテ時代の成瀬(2009年)

ただ、ロッテを離れてからの苦難はファンも承知の通りだ。西岡は日本一の実績をひっさげ、翌年渡米。ツインズの2年間は故障に苦しんだこともあり全く力を振るえず、この間、離婚も経験した。失意のまま帰国して阪神入り。タイガースでは1年目こそレギュラーで活躍し二塁手でゴールデングラブ賞も獲得したが、その後は度重なる故障で活躍できず、とうとう戦力外通告を受けた。

成瀬の「その後」はもっと辛い。2014年オフにFA宣言で華々しくヤクルトに移籍したが、ロッテ時代の11年で90勝を挙げた左腕は、新天地の3年でわずか6勝。去年は一軍未勝利に終わり、今季はとうとう一軍に一度も上がれないまま解雇された。

プロ野球はどんなに実績があっても、突然活躍できなくなることもある厳しい世界。それはもちろん分かってはいるのだが、自分が2年間、近くで見続け、オープン戦も含めて2年で200試合ほども帯同した当時の主力選手がいま進退をかけるような立場に追い込まれているのを見ると、やはり忍びない。西岡は34歳、成瀬は33歳。

昔は30を過ぎると体力的にきつくなると言われた世界だが、近年は40を過ぎても一線で活躍する選手が増えた。年齢という点だけを見れば、コンディショニングの技術が発達した今のプロ野球では、まだまだやれるはずだ。

ロッテの下克上戦士たちで新天地を求めて移籍していったのは、今江敏晃(現登録名は今江年晶)内野手もいるが、彼も楽天にFA移籍後の2シーズンは故障も重なって不振に苦しんだ。今年は4年ぶりに2ケタ本塁打を放ち、サードの定位置を取り戻したが、ロッテ時代ほどの活躍をしているとは言い難い。

外に活躍の場を求めた2人の再起を願う

以前、サブローさんの引退の時に書いたが、12球団を企業間競争に例えればロッテは、大企業を向こうに戦う中小企業のような存在だ。だからここで目覚ましい成果を挙げ、待遇や仕事の規模が大きい大企業(巨人や阪神、ソフトバンク)や、段違いに舞台が大きくなる外資(メジャー)で腕を試すこと自体は悪くない。中小企業で頑張る人たちにとって「憧れ」のような生き方だと思う。

サブローさんや里崎智也さんのように最後まで残るのも立派な選択肢だが、リスクをとって新しい舞台でステップアップできれば、それはそれでロッテファンも複雑な思いを持ちつつ、「育ての親」のような気持ちで嬉しく思う人もいただろう。私もどちらかといえばそんな一人だ。

今江は復活の兆しを見せたものの、西岡、成瀬にはこのまま終わってほしくない。昨年のトライアウトで「再雇用」につながったのは51人中3人だけ。ハードルは高いが、2010年の快挙を間近に観た者として、2人には「下克上」を再び見せて欲しいと願っている。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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