バロンズ:ねじれ議会で、想定されるシナリオとは

2018年11月12日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーはジョン・マローン氏率いるメディア大手リバティ・グローバルを掲げる。そのポートフォリオアは多岐にわたり、F1からアトランタ・ブレーブスなどのスポーツ関連をはじめ、ショッピング・チャンネルのQVC、旅行サイトのエクスペディアやトリップ・アドバイザー、ケーブルTVのチャーター・コミュニケーションズや衛星ラジオのシリウスXMなどを抱える。バロンズ誌は一連の株価を割安と指摘するが、果たしてどのように分析しているのか、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが注目する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週はねじれ議会をもたらした米中間選挙と、米株相場への影響について考察する。抄訳は、以下の通り。

米株は7日、リリーフ・ラリーに沸いた。中間選挙が漸く終わった安堵感が広がったためだろう。ダウは9日に202ドル安を迎えたものの7日の545ドル高を打ち消すほどではなく、2.8%高で取引を終えた。過去2週間では5.3%高と、2年間で最大を記録している。10月につけた5.1%安の下落を相殺した格好だ。

ただし、金融市場と経済にとって下院が民主党、上院が共和党というねじれ議会は様々な所産をもたらしうる。問題は、新たな議会がトランプ大統領と協力できるか、対立するかだ。

格付け会社フィッチ・レーティングスは、民主党が多数派を握る下院で中間層向けの減税が成立する可能性は低いと見込む。その一方でフィッチは、民主党にとって財政健全化が優先事項になるとは想定していない。ノーザン・トラストのエコノミストが予想するように、引き続き税制と歳出が主要な議題となるだろう。そもそも、税制改革法案が成立した結果、力強い成長と企業の大幅増益を達成する過程で歳入は前年比ほぼ横ばいという状況だ。これで歳出抑制に向け動かないようであれば、財政赤字は2020年を待たずして1兆ドルに達してしまうだろう。

米財政赤字、1兆ドル超えの見通しが前倒しされ2020年に。

fiscalbalance

(作成:My Big Apple NY)

インフラ投資は、共和党と民主党が妥結できる領域と言えよう。しかし、フィッチは財源で両者が歩み寄れるか不透明だと指摘する。トランプ政権が2月に公表した計画によれば、インフラ投資の予算は2,000億ドルで、州・地方政府や民間企業の支出と合わせ10年間で1.5兆ドルを目指すものだった。しかし、この計画について最近ではほとんど聞かれていない。対照的に、下院運輸・社会基盤委員会委員長に就任予定のピーター・デファジオ議員(民主党、オレゴン州)は、30年債の発行で5,000億ドルの資金を調達と、燃料税のインフレ連動化を求めている。

地方債の助言機関であるコート・ストリート・グループは、民主党が多数派を握る下院にビルド・アメリカ債の復活を主張する。ビルド・アメリカ債とは、金融危機直後の2009年にオバマ政権下で成立した景気刺激策の一つとして発行された。地方債は通常、連邦所得税が免除され、米国人の富裕層など投資家から引き合いがあった半面、非課税対象だったため利回りが低く、年金などの投資家や海外投資家にとって投資妙味は高くなかった。しかし、ビルド・アメリカ債は連邦所得税の課税対象に切り替え州・地方政府の資金調達を円滑化させる一方で、連邦政府が補助金を支払うことで州・地方政府の利払い負担を軽減させることが可能となった。このプログラムは2010年末に終了したが、バロンズ誌では2016年12月にも復活を説いている。

ねじれ議会を前に不確実性が高まるなか、確実な点は債務上限引き上げ交渉が2019年3月に再開することだ。ノーザン・トラストは、同年3月1日までに何らかの妥結が必要と指摘するが、ホライゾン・インベストメンツのチーフ・グローバル・ストラテジストであるグレッグ・バリエール氏によれば、その公算は小さい。むしろ、政治膠着の可能性が濃厚だ。

とはいえ、米経済は好調そのものだ。金融市場にとって、政治膠着の他に米連邦公開市場委員会(FOMC)の金融政策と中国がワイルドカードとなるだろうが、結局は米経済の力強さが相場を支えていくのだろう。ただ、いつまで続くかは不確実性を伴うが。


ビルド・アメリカ債の復活は、インフラ投資計画に盛り込まれてもおかしくないでしょう。例えば、トランプ大統領のインフラ計画2,000億ドルを州・地方政府の補助金に割り当てるという手段も考えられます。ただし、トランプ政権、共和党、民主党の3者が足並みを揃えられるか、障害が立ちはだかります。2009〜10年のビルド・アメリカ債の米連邦政府の利払い負担は35%でしたが、トランプ政権下のねじれ議会では負担率をめぐり紛糾必至です。そもそも、米上院財政委員会の重鎮であるグラスリー議員は当時から、財政健全化を進めていない州に対し補助金を支給するものとビルド・アメリカ債に難色を示していました。両者が歩み寄れるのか、まずは債務上限引き上げ交渉で試されそうです。

(カバー写真:Daniel Mennerich/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年11月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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