元報道記者解説!テレビに出演してキャラを確立させるには

大内さんは男性テノールとして活躍した経験をもつ。多才な元報道記者である(amazonより)

皆さまは、テレビに出演した経験はあるだろうか。指をくわえていてもテレビに出ることはできない。視聴率低下の影響で、テレビ業界が厳しいと言われているが、テレビに出たいニーズは相変わらず高い。さらに、きっかけさえあれば誰もが有名人になれる現代。自分をキャラクター化することで、ビジネスのチャンスは大きく広がる。

今回は、『キャラがすべて! ―メディアを使いこなして、自分自身を売り続ける方法』(きずな出版)を紹介したい。著者は、大内優さん。大学卒業後、福島テレビに就職し報道記者として活動を開始する。本書では、メディア活用のプロである著者が、あらゆるメディアを活用したセルフマーケティングのコツを伝えている。

大内さんの転機となったある事件

特ダネが取れるようになったある日、出来事は発生した。それは、新潟県中越地震だった。同じフジテレビ系列の新潟総合テレビの応援として、当時の山古志村(現在の長岡市)の取材をした。しかし、山古志村はすべてを失っていた。

「助けてくださいとすがる人たちの手を振りほどき、夕方のニュース放送のために取材をする自分が醜い存在に感じました。被災地での取材を続けるうちに、自分のなかの正義が崩れていきました。自分がやるべきことは特ダネ競争に勝つことじゃない、本当に情報を求めている人に、必要な情報を届けることだと気づきました。」(大内氏)

「そして自問自答しながら思ったのです。テレビを活用して多くの人の役に立つ方法はないか。テレビ局の内情を知っている私なら、そのノウハウを効果的に提供できるのではないかと考えたのです。」(同)

そのうえで、テレビに出演する効果について、次のようにも語っている。

「講演などの場で、私は必ずこう言っています。『テレビは観るものじゃない、出るものだ!』。テレビは観て楽しむものだ、ほとんどの人がそう思っています。しかし、ただテレビを観ているという行為は、あなたから『時間』を奪っているだけです。だったら、出るほうになって影響力を与えたほうがよくありませんか。」(大内氏)

「今でも、どんなに忙しくても、1日6時間はテレビを観ます。ニュースもバラエティもスポーツも音楽番組もドラマも、どんな番組もまんべんなく観ます。しかし、いまテレビ業界は試練を迎えています。テレビ離れと業績不振によるものです。だからこそ、一般の方がテレビに出るチャンスが高まっているともいえます。」(同)

テレビマンは常にインパクトがある旬な情報を求めている。以前なら、ハードルが高かったテレビ出演も一定の基準をクリアすれば難しくなくなった。出演したいと思うなら、まずは業界の「てにをは」を理解してはいけない。

テレビに出て成功する人と失速する人の違い

個人がメディア戦略を考えるべきだと、大内さんは次のように解説する。

「誰でもテレビに出ればそこから火がついて、あらゆるビジネスがうまくいくのかといえば、そんなことはありません。『テレビに出たことがマイナスになってしまった』という例はいくらでもあります。テレビに出たら、嫌なキャラに見えてしまったとか。これはまさに、『キャラづくり』の失敗です。」(大内さん)

「テレビというのは原則的に、視聴者のためのメディアです。視聴者を喜ばせるために台本をつくり、筋書きをつくり、演出をおこなう。あらかじめ自分のイメージどおりにふるまえる番組を選ばないと、ミスブランディングになってしまいます。」(同)

ミスブランディング=つまり戦略が足りていないことになる。これこそが、本書のキーワード「キャラ戦略」という考え方である。15秒で惹きつけ、1分でファンにする。肩書きではなく、キャラクターで勝負する、個人ブランド構築戦略をご賞味いただきたい。

私事で恐縮だが、新潟県南魚沼市では障害者支援の活動を12回、最近は6年連続で開催している(「ホテルのサービス向上と勝てるホスピタリティ」/2015年11月16日投稿 )。その活動に支援をいただいたのが、山古志村の最後の村長として復興の陣頭指揮にあたった、故長島忠美代議士だった。当時、大内さんは福島テレビの記者として山古志村の取材をしていた。大内さんの新刊上梓と、今後のご活躍を祈念申し上げたい。

PS

拙著『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)は出版後2週間で3刷となり堅調です。ご支援いただいた皆さまに心から御礼を申し上げます。

尾藤克之
コラムニスト