スマホ連携もできない前時代的な政府統計調査

行政改革推進本部で秋の行政事業レビューが実施されているが、四テーマに評価委員として参加した。そこでの議論の様子を順番に報告する。第一回は「統計調査のオンライン化(総務省)」。

2019年に「全国消費実態調査」と「経済センサス」という二つの大規模統計調査が実施される。共に5年ぶり。「全国消費実態調査」は家計の収入・支出、貯蓄・負債、家計資産を総合的に調べるもので、来年はおよそ9万世帯を対象とする。調査結果は生活扶助基準額の検証、介護保険に関する検証、世帯間の所得格差の分析などに利用される。

「全国消費実態調査」のオンライン回答率は2014年実績が5.5%で、今回は10.0%が目標である。2015年国勢調査でオンライン回答率が36.9%だったというのに、なぜ、こんなに低い目標なのだろう。

前回オンライン回答が低調だったのは、Excel形式の入力が面倒だったからだそうだ。そこで、今回はレシートをスマホにかざすと自動的に読み込まれる機能が追加されるという。

それよりも人気の家計簿アプリと連動すればよいのではないか。家計簿アプリとの接続条件(API)を規定して必要な情報を取り出すようにすれば、回答者は毎日使っているアプリに入力するだけで、「全国消費実態調査」に協力できる。

しかし、スマホ連動は想定すらされていない。総務省は家計簿アプリの利用者にはバイアスがある(国民全体の姿からずれている)という。しかし、「全国消費実態調査」の紙形式の回答に応じるのが高齢者世帯に偏っているとして、若者や独身者の消費実態(まさに家計簿アプリ利用者の消費実態)も把握するように総務省は改善を求められているのである。なぜ、総務省はスマホ連動を検討しないのだろう。

政府は統計改革に乗り出し、統計調査が強化されることになった。しかし、実際に調査を実施する総務省は旧態依然のまま。行政事業レビューはオンライン化目標を圧倒的に高めるように求めた。また、政府統計に民間の知恵・経験・サービス・データを活用する抜本的な統計改革について議論するべきと僕は発言した。