1956年日ソ共同宣言を土台に、まず二島返還を

玉木 雄一郎

安倍総理は、プーチン大統領との会談で、「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速する」ことに踏み込みました。

14日に行われた日露首脳会談(首相官邸サイトより:編集部)

ポイントは、両国の議会で批准された唯一の公式文書である日ソ共同宣言です。

日ソ共同宣言では、「ソ連は、歯舞群島及び色丹島を日本に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」とされています。

私は、先月の代表質問で提案したとおり、「四島の帰属の問題を解決してから平和条約を締結する」ことを原則としつつも、この「日ソ共同宣言」を土台に交渉を加速することが、一つの現実的な選択肢だと考えます。

特に、元島民の方の6割がすでに亡くなり、存命の方々の平均年齢が83歳となる中、一歩でも二歩でも前に進めなくてはなりません。

また、あの豊かな北の海を取り戻すことができれば、根室をはじめ隣接地域の経済も漁業関連を中心に、必ず活性化するはずです。

これで、早ければ来年にも平和条約を結ぶ可能性もとの観測もありますが、まだまだ楽観はできません。特に、日ソ共同宣言をベースにした時には、国後島、択捉島の二島の扱いをどうするのかが極めて難しい問題になります。また、法外な経済支援を求められる可能性もあります。

それと、やはり最後のカギは、やはりアメリカでしょう。

とりわけ、返還された島に米軍の基地や施設を置かない約束をアメリカとの間で結べるのか、かつての「ダレス恫喝」などの歴史を考えると、最後の最後で、ひっくり返される可能性もあるので、全く予断を許しません。

また、来年1月から始まる日米自由貿易交渉では、日露交渉とリンクさせて、アメリカは大幅な譲歩を日本に求めてくる可能性もあります。相当高い買い物をしなくてはならなくなるかもしれません。国会で厳しくチェックしていかなければならない部分です。

私は、5月の党首討論や先月の代表質問など、この間、北方領土問題を継続的に取り上げてきましたが、これから来年にかけて、政局も絡みながら、北方領土問題は大きな政治課題になっていくでしょう。

引き続き、今後の進展を注意深く見守り、また、私たちの提案、「新しい答え」も示していきたいと思います。

10月29日の代表質問(北方領土関連部分)

動画↓

北方領土問題

次に、北方領土交渉について伺います。先月の東方経済フォーラムで、プーチン大統領は、従来の日本の立場とは異なる「前提条件抜きにした年内の平和条約締結」を提起しました。総理は、その後、日本の原則的立場を述べて反論したと報道されています。私も原則的立場は重要だと思います。しかし、70年間何も動かなかったことも事実です。

先日、根室市を訪問して元島民の皆さんと話をしました。すでに6割の方が亡くなられ、平均年齢は83歳です。彼らが望んでいるのは、早く島が返ってくること、そして、島に自由に行けるようになることです。しかし、総理、今のままで果たして展望が開けますか。

そこで、総理に伺います。1956年の日ソ共同宣言を土台にしながら、まず二島の先行引き渡しを、四島返還の突破口として実現する選択肢はあり得ますか。両国の議会が批准した正式な文書は日ソ共同宣言だけです。法的拘束力を持つ条約です。ここに、平和条約を締結後、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことが明記されています。歯舞群島と色丹島の面積は全体の7%しかありませんが、その周りには、広く豊かな海が広がっています。二島が戻れば、漁業だけでなく関連産業を含めた地域経済の活性化も期待できます。

もちろん、先に平和条約を結んだ場合に、領土問題を棚上げしないとの確約が得られるのか不安はありますが、もし確約が得られた場合、日ソ共同宣言を土台に平和条約を締結し、歯舞群島と色丹島の二島の先行引き渡しを実現する可能性があるのか、総理の見解を伺います。

さらに、5月の党首討論で指摘したように、返還された島に米軍の施設や基地を置かないことについてアメリカの説得が必要です。しかし、外務省機密文書「日米地位協定の考え方」(増補版)によれば、あらかじめ基地を設けない約束をすることは、安保条約・地位協定上問題があり認められないとされています。今でもこの機密文書の内容は有効ですか。アメリカの説得は可能と考えるか、総理の所見を求めます。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2018年11月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。