バロンズ:カリフォルニア州の山火事、経済的損失と今後の影響

2018年11月19日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは年金にスポットライトを当てる。1974年に成立した従業員退職所得保障法(ERISA法)を皮切りに個人年金制度が次々に整備され、1978年には内国歳入法に401条k項が追加された。その後、401kは発展を続け、米国では確定拠出年金の401kの加入者が5,500万人を超え、積み立て額は5兆ドルを突破する状況だ。米国の401kは今後どうなっていくのか、バロンズ誌の分析・展望については本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週はカリフォルニア州の山火事を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

カリフォルニア州の山火事、経済的な影響は?—The California Wildfires’ Financial Toll.

どんな自然災害でも人災でも、災害は人々の目線で経済損失額が弾かれるが、必ずしもそれが正しいとは限らない。6年前に米北東部を襲った大型ハリケーン”サンディは、未だに被災地にその爪痕を残す。今年はハリケーン”フローレンス”や”マイケル”が東海岸を直撃したが、秋にはカリフォルニア州で山火事が発生した。未だ火の手を抑えられず死亡者も増加するなかで、経済損失を試算するのは困難を極める一方、無視もできない。山火事の影響を受けた銘柄は、大幅安となっている。保険会社の負担だけでなく、地方政府や州政府の予算にも大きな影響を与えよう。また被災地の不動産価格は、山火事にあった現時点だけでなく、自然災害ヘの懸念から将来的に大きな打撃を被ること必至だ。

今回の山火事で最も売られた銘柄と言えば、電力会社PG&Eだ。同社の株式は11月15日の1日だけで31%安を記録、過去5営業日で61%も急落した。しかし、11月15日の取引時間終了後に株価は下げ幅を縮小、11月16日には38%高をつけた。PG&E株の買い戻しはブルームバーグの報道がきっかけで、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ主催の投資家向けカンファレンス・コールにて、カリフォルニア公共事業委員会(CPUC)は、山火事発生の一端を担ったとされるPG&Eの破産申請を望まないとの見解を示したという。

ギミー・クレジットのアナリストによれば、CPUCはPG&Eの破産申請を受け入れる用意があったとみられる。そもそも、PG&Eは前週、証券取引委員会(SEC)にリボルビング・クレジット・ファシリティにあった33億ドルを全て引き出したと通知しただけでなく、山火事が発生した日に電力事故報告書を提出、送電線の設備などで火花が生じる不具合を把握していたことが分かっていた。

格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、11月15日遅くにPG&Eの債務について「Baa3」と投資格級で最低ランクヘ引き下げたS&Pも同様の措置を取り、PG&Eの債務格付けを「BBB−」と、投資格級で最低とした。足元ではジャンク債への格下げを免れたものの今後の賠償などを踏まえれば、ギミー・クレジットのアナリストは、そうなるのも時間の問題と考える。2034年3月1日に償還を迎えるPG&Eの社債利回りは6.36%と、米10年債利回りを3.03%上回る状況だ。

カリフォルニア州政府にとって、山火事は財政負担を意味する。独立機関のナショナル・ムニシパル・リサーチでヘッドを務めるナタリー・コーヘン氏によれば、カリフォルニア州の財政は9月末まで申し分のない水準だったが、10〜12月期には前例のない山火事を受けて大打撃を受ける公算が大きい。また、不動産価格も下落する見通しだ。保険会社は学校、病院、その他インフラの損害・損失を保障しないためで、カリフォルニア州と地方政府は共に再建・復興のために予算を割り当てる必要がある。

トランプ大統領、カリフォルニア州を17日に訪問。

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国家であればGDPで英国を抜き世界5位に浮上したカリフォルニア州、山火事でご覧の惨状に。

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(出所:全てThe White House/Flickr)

その一方で、コーヘン氏はグッドニュースとして、再建・復興のための支出や雇用再開は所得税と消費税を通じた歳入拡大をもたらすと予想する。ホテル税も、山火事で住宅を追われた居住者が稼働率を押し上げるため、歳入増を促すだろう。ただし、観光収入は山火事を受けて減少する公算が大きい。

カリフォルニア州の歳入は、資本売却益税に大きく依存してきたため、足元の米株安も同州の歳入を圧迫しかねない。ただし、126億ドルもの経済損失を計上した2017年の山火事を受けても、カリフォルニア州の財政が耐性を見せた過去は、特筆に値する。

その一方で、カンバーランド・アドバイザーズのパトリシア・ヒーリー氏はカリフォルニア州の人口への影響も懸念材料だ。カリフォルニア州の州内総生産は世界5位に相当し、歳入面や経済ファンダメンタルズでも健全に見える。しかし、投資家は地方債の多様化を進めるべきで、山火事はあらためてその必要性を強調したと言えよう。

税制は、カリフォルニア州州民にとって地方債投資家にとってインセンティブを与え、州と連邦政府から控除を受けられる。一般財源債や歳入担保債であれば、多様化の一環としてリスクを抑制することができるだろう。

しかし、同州の所得税は13.3%で、税制改革法案の成立後の州・地方税の控除額の上限は1万ドルだ。2017年に続いて2018年も前代未聞の山火事に遭ったことで、地方債投資家だけでなく不動産投資家や潜在的居住者の関心が低下しかねない。既にカリフォルニア州でも風光明媚な場所として知られるモンテシトの不動産業者は、足元の金利上昇に加え「毎年の山火事、さらには土砂崩れ懸念もあって数百万ドルもの投資には及び腰になっている」という。今回の山火事が収束したとしても、次の年に無事でいられるかは誰も分からない。

天災という観点では、ハリケーンの多発を受けてメキシコ湾岸やフロリダ州など東海岸も他人事ではいられない。気候変動問題を信じるか信じないかは別として、気候変動に伴う経済的なリスクは強まりをみせ、資産価格に影響することは間違いないだろう。


NYでハリケーン”サンディ”を経験した当時、金融機関を中心に被害が激しかったロウアー・マンハッタンからミッドタウンへ移転した企業が増えたことが思い出されます。カリフォルニア州からも人が去り、州別での人口変化は直近で西(南)高東低でしたが、カリフォルニア州の山火事が更なる変化をもたらすのか、個人的には、大きいな影響を与える公算は小さいと考えます。既にカリフォルニア州の住宅価格高騰を嫌気し、ワシントン州やオレゴン州など周辺の州へ移った例も多く、西(南)高東低が崩れる公算は小さいでしょう。高齢化も重なり、過ごしやすい気温の土地が選好されがちですし。カリフォルニア州自体、対策を講じないはずもありません。山火事を含め将来に備えた対策が政府・民間を問わず検討され始めており、悪材料ばかりに目を向けるのは賢明ではないでしょう。

(カバー写真:The White House/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年11月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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