ゴーンの報酬過少申告の動機が不可解

2018年11月21日 06:00

伝説的経営者の単純すぎる手口

瀕死の日産自動車を再建した辣腕経営者、カルロス・ゴーンが報酬の過少申告で東京地検に逮捕されました。100億円(5年分、1年20億円)の報酬を半分しか申告していなかった。単純すぎる犯罪です。投資を装い自宅を購入させたというのも素朴な手口です。長期にわたる独裁的経営者だからできたとはいえ、巧妙な点がどこにもありません。不思議です。

日産サイトより:編集部

罪を犯さなければ、伝説的な経営者として名を残せたでしょう。あっさり検察に逮捕されるような犯罪の動機は不可解というしかありません。トップ経営者の国際水準からすれば、並みはずれて高額ではないし、報酬の過少申告も、いずれは発覚したでしょう。日産再建の辣腕ぶりと、幼稚で単純な犯罪との、あまりにも大きな落差に絶句するしかありません。

日産が仏ルノーの傘下に入り、ゴーンは2000年から社長を務めています。今回の不正は15年までの5年分が対象ですから、00年からの15年の期間も同様の過少申告をして、不正蓄財をしていた可能性があります。日産にはその記録があるでしょうから、全容を解明してほしいと思います。

ばれそうになってきたから、いっそのこと逮捕され、罰金を払い、懲役刑の刑期を終えて、時効にかかる不正蓄財をふところにいれよう。そんな読みがあったのでしょうか。もっとも株主代表訴訟が起こされ、巨額の損害賠償金を払わざるをえなくなるかもしれません。

来日以来、長期間の不正か

来日してから長期間、不正に手を染め、ばれなかったため、ずるずると過少申告を続けてきたのか。日本人の西川氏が社長に就任し、内部通報もあり、発覚が迫ったとさとり、ゴーンは覚悟を決めたのか。海外から戻った羽田空港でやすやすと逮捕されたのも、妙な感じを受けます。

日本企業のトップの報酬は、1位がソニーの平井社長の27億円、2位がセブンイレブンのトップのデビット氏で24億円です。10億円以上が10人おり、7人が外国人です。日本のサラリーマンから見て、ゴーンの20億円(申告は10億円)は高額であっても、世界標準からすると、決して法外な金額ではありません。日産が経営再建中なので、高額報酬が目立ってはまずいと、考えただけなのか。

コストカッター(経費削減)、辣腕経営者、このままいけば伝説的な人物の名を欲しいままにしたであろうゴーンがなぜ、単純な不正に手を染めることができたのでしょうか。カネは会社の経理担当を経て、支払われますから、経理がそのことを知らないはずはありません。人事権も握ったワンマン経営者だったから、逆らえなかったとしか考えられません。

国税局が見逃してきたのも不可解

不正に手を貸した日本人も本来なら同罪でしょう。捜査では司法取引(協力すれば、罪を減じる)が行われたそうですから、事実を白状して、ゴーンの逮捕に至ったのでしょう。それにしても、日産のトップに座った2000年から、18年間もばれなかったというのは信じ難いことです。見て見ぬふりを続けた日本人社員は少なからずいたことでしょう。

それに国税局はなぜ気がつかなかったかです。企業が報酬を支払えば、所得税を源泉徴収します。半分の10億円分の源泉徴収しかしなかったとすれば、残りの10億円はヤミ給与であり、脱税です。

国税局は日産に税務調査に定期的に入っています。外部に公表されているゴーンの報酬と、実際の報酬との差異を不審に思ったことはないのか。全額を対象にして、所得税は払い、有価証券報告書には過少申告の金額を載せただけのことなのか、いや脱税までしていたのか。不思議なことだらけと思います。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2018年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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