バロンズ:Fed、2019年の3回利上げ予想を巻き戻すのか

2018年11月26日 10:00

バロンズ誌、今週のカバーは満を持してGAFA、FAANGsなどと呼ばれるハイテク大手企業にスポットライトをあてる。どの銘柄が最初に時価総額1兆ドルを突破するのか、投資家はいつしか注目するようになった。時価総額1兆ドルレースを制したのはアップルで8月に達成し、アマゾンが続いたことは記憶に新しい。

しかし、その後にハイテク関連が軒並み急落すると、誰が想像しただろう。FAANGs—すなわちフェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、アルファベットはそれぞれの時価総額でのピークから1兆ドルを失った。今月だけで、4,000億ドルが吹き飛び、それぞれの下落率は20〜40%に及ぶ。FAANGsはなぜここまで急落したのか、今後はどうなるのか、今が買い時なのか。バロンズ誌の分析にご関心のある方は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週のテーマはFedと今後の金融政策を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

Fedは利上げ回数を減らす理由ーWhy the Fed Could Back Down on Rate Hikes.

金融市場が大きく荒れるなかで、投資家はFedの金融政策を見定める上で2つのイベントを見守っている。1つは、28日に予定するパウエルFRB議長によるエコノミック・クラブ・オブ・ニューヨークでの講演で、もう一つは、世界が大いに注目するG20首脳会合でのトランプ大統領と習近平主席の会談だ。

足元の米株安、社債スプレッドの拡大、商品先物の下落を受け、Fedが2019年に1回以上の利上げに踏み切るか否かについて、市場では疑問が高まっている。12月18〜19日開催のFOMCでの利上げは確実とされ、FF先物市場の織り込み度も74.1%だが、9月25〜26日開催のFOMCで公表した経済・金利見通しで示したような、2019年に年3回の利上げが実現するかは議論の余地が大きいFF先物市場では、2019年の利上げにつき下半期に1回しか織り込んでいないことでも、明らかだ。

9月FOMCから様々な変化が起こり、今後も不確実性に満ちた未来が控えていると言えよう。米株やハイイールド債が急落しただけではない。トランプ大統領は、2019年1月1日にも、2,000億ドルの対中追加関税措置につき足元の10%から25%に引き上げる決断を下しかねず、米中貿易戦争への懸念は高まるばかりだ。

ひとまず、パウエルFRB議長の講演でどのような政策示唆を与えるか注目すべきだろう。パウエルFRB議長は、10月3日に米経済の力強さに自信を表明しただけでなく、FF金利が中立金利(緩和的でも引き締め寄りでもない金利水準)へ到達するまでの道程は遠いとの考えを寄せた。

足元の経済指標は、パウエルFRB議長の考えに則していると言える。米7〜9月期の実質GDP成長率は前期比年率3.5%増と前期の4.2%増に続き力強さを保った。失業率は10月に3.7%と49年ぶりの低水準にあり、非農業部門就労者数も25.0万人増と大幅に増加した。しかし、こうした経済指標は過去の数字であり、その他の指標はそれほど明るくない。特に住宅市場は、明らかな減速を示す。

一部でみられる経済指標の鈍化について、外交問題評議会(CFR)のベン・スティ—ル氏とベンジャミン・デラ・ロカ氏は、Fedが保有資産の圧縮効果を過小評価しているためと指摘する。両氏によれば、保有資産の圧縮は米10年債利回りを17bp引き上げたが、過去の相関性などを踏まえると、68bpの利上げに相当するという。仮にFedが月当たり500億ドルのペースで保有資産を圧縮すれば、2019年末には220bpの利上げを行うも同然で、両氏は「金融政策は2019年早々にも、経済を減速させる」と予想する。

Fedは2017年10月から保有資産の圧縮に踏み切り、これまで米国債と住宅ローン担保証券など合わせて3,000億ドル縮小したと同時に、5,000億ドル相当を金融システムから吸収した。一連の動きは、米国内よりも海外で大きな影響を与えている。特に欧州の銀行で著しく、独立系の経済リサーチ会社マクロ・インテリジェンス・2・パートナーズ(MI2P)によれば、保有資産の圧縮が与えるドル建て債務のファンディングへの影響について、顧客の間で問題視されているという。

Fedの保有資産動向。

balancesheet

(作成:My Big Apple NY)

かつて、ニクソン政権時代に財務長官を務めたジョン・コナリー氏は、世界中でドルが売られるなか「ドルは我々の通貨だが、それはあなた方の問題だ」と述べた。足元でMI2Pは、世界のGDPの7割を占める国々でドルに依存していると分析する。つまり、ドルの供給不足が発生すれば、借り入れコストの上昇より由々しき問題となりかねない

9月のFOMCで2019年に年3回の利上げ予想が維持されてから、リスク資産のパフォーマンスは流動性逼迫に沿った動きとなっていう。米株は下落し、特にナスダックは13.7%安を迎え、前週だけで4.3%沈んだ。中小小型株指数のラッセル2000は9月から11.9%落ち込み、前週だけで2.5%下落した。それだけではない。世界同時株安を引き起こし、 北米以外の先進国ETFであるシェアーズ MSCI EAFE(EFA)は8%安、 iシェアーズ MSCI エマージング マーケッツ ETF (EEM) も9.9%落ち込んだ。クレジット市場にも売りが波及、iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 ETF (HYG)も、9月から3.3%下落した。米国債も売りに無縁ではなく、iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT)ですら1.6%安となる。

原油先物も大幅安を迎えているが、供給過剰への懸念と共に米国の追加関税措置の影響も価格を押し下げていそうだ。設備投資は足元で伸び悩みの兆しをみせており、PMIでは米国以外でも鈍化し始めている。12月1日の米中首脳会談が突破口となるか注目だが、23日付けウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によれば、米国は同盟国に対し、中国通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の製品使用を控えるよう通達したことが分かった。米中間の貿易摩擦が一段と深化すれば、人民元が心理的節目の1ドル=7元を突破してもおかしくない。そうなった時、脆弱となっている世界経済への影響は計り知れない。


パウエルFRB議長は10月3日の講演で、中立金利までまだ道程は長く同水準を超えて利上げするか否か議論するのは時期尚早だと語っていました。しかし、直近ではクラリダFRB副議長が「中立金利に近づいた」と方向転換し、年内投票権を有するアトランタ地区連銀のボスティック総裁も、同調しています。クラリダFRB副議長自身、成長や失業率の力強さに自信を表明し、一段のゆるやかな利上げが必要との明るいトーンから後退させているようです。12月18〜19日開催のFOMCでは、2019年のドットチャートが下方修正されてもおかしくありません。パウエルFRB議長が28日の講演でどのように地ならししてくるのか、米株安への対応と合わせ、市場は固唾を呑んで見守るに違いありません。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年11月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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