「これ」「それ」「あれ」のつかいすぎに注意

「これ」「それ」「あれ」などの指示代名詞は、文章全体のつながりが正確でないと読者の混乱を招きます。誰が読んでも混乱しないように注意をはらいながら使用しなければいけません。指示語は、話し手のいる地点と状況を示します。指示語は一般的に「こ」「そ」「あ」「ど」と呼ばれる4系列からなります。「こ、そ、あ、ど」というものです。

(これ)は、「Ray-Ban」のサングラスですか。
(それ)は、「Ray-Ban」のサングラスですか。
(あれ)は、「Ray-Ban」のサングラスですか。

「これ」は近くにあるものを示す言葉です。「それ」は相手の近くにあるものを示す言葉です。「あれ」は自分からも相手からも距離がある(離れている)意味になります。

「これ」「それ」「あれ」の場合、指し示す対象が何処にあるのかが大切です。また、指示代名詞にあわせて、「丸」や「点」のつかい方も確認してみましょう。以前、次のような文章を読んだことがあります。どのように感じますか?

--元の文章--
1ヶ月前に社長がインフルエンザで入院しました。これまで元気だったのですが原因不明の高熱が続き診断してもらったところインフルエンザであることがわかったのです。人事部長の私はそれはマズいと思い休むことをすすめました。ところが、社長は「自分が居なければ会社が機能しない」と休もうとしません。
--ここまで--

かなり違和感を覚えます。社長は入院する前のようにも見えます。社長の様子が書かれていますが、わかりにくい表現です。さらに、文意が伝わらない流れです。

-修正した文章-
1ヶ月前に社長がインフルエンザに罹患し入院しました。体調が悪いときには速やかに医療機関を受診してください。
--ここまで--

指示代名詞を削除して文意が伝わらない箇所を直しました。スッキリしたと思います。このように書けば誤解されることなく伝えることができます。さらに、丸で文章を切っています。間違いなく打たれていることで、読者が余計なことを考えるムダを省きます。

「こ、そ、あ、ど」には「現場指示」「文脈指示」の2種類があります。日本語教師の仁子真裕美(にご・まゆみ)さんが管理する「日本語教師の広場」が分りやすいので紹介しておきます。ぜひ、参考にしてください。

なお、拙著『即効!成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)は、発売2週間で3刷と好調です。応援していただいた皆さまに御礼申し上げます。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所・研究員
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