迷走する日本の防空 ポリシーなき戦闘機選定

2018年11月28日 06:00

F35戦闘機 最大100機追加取得へ 1兆円、政府検討 (日経新聞)

政府は最新鋭ステルス戦闘機「F35」を米国から最大100機追加取得する検討に入った。取得額は1機100億円超で計1兆円以上になる。現在導入予定の42機と合わせて将来的に140機体制に増える見込み。現在のF15の一部を置き換える。中国の軍備増強に対抗するとともに、米国装備品の購入拡大を迫るトランプ米大統領に配慮を示す狙いもある。

12月中旬の防衛計画の大綱(防衛大綱)の閣議決定に合わせて、F35の取得計画を見直し、閣議で了解する。2019~23年度の中期防衛力整備計画(中期防)には追加分として40機程度を盛り込む調整を進める。現在はF4戦闘機の後継機として、F35Aを24年度までに42機導入する計画で順次配備している。

防衛省はF15について半分の約100機は改修して使い続けることを決めているが、残りの100機について扱いを検討してきた。

これがどこまで本当かは日経なので怪しいのですが、仮に調達単価が本当であればFACOもやめて輸入ということになるでしょう。財務省はF-35Aも輸入に切り替えろといっているようですから、全部輸入になるでしょう。

アメリカ空軍のF-35A(Wikipedia:編集部)

F35の追加取得には、トランプ氏が米国装備品の購入拡大を繰り返し迫っていることも背景にある。高額の戦闘機を買い増し、トランプ氏が問題視する対日貿易赤字の削減圧力をかわす思惑もある。安倍晋三首相は9月にトランプ氏との会談で「米国装備品を含め、高性能な装備品を導入することが日本の防衛力強化に重要だ」と伝えていた。

過去FX商戦のとき、何をやりたいか、またその優先順位を明らかにすべきだと主張してきました。単に高性能の戦闘機を導入するのか、戦闘機の開発生産基盤を維持するのか、システム、機体、エンジン、兵装のどれを残すのか捨てるのかなどなどです。

ところが防衛省も空幕も「米空軍と同じおもちゃが欲しい」で「国産生産基盤も欲しい」と駄々をこねていただけです。

ぼくは、米国がF-22をリリースすることはライセンス生産は愚か、輸出もないと断言しましたが、事実その通りになりました。

またF-22を導入することは戦闘機の生産基盤を放棄することです。ところが防衛省も空幕もそれが両立できると考えていました。だから未だにF3開発なんという寝言を言えるわけです。しかもF-1、F-2含めた過去の戦闘機開発を総括せずに、何ができて何ができないかも自問せずに、自分たちは最高レベルの戦闘機を開発できると「大本営発表」を垂れ流しました。それはF-2のときと同様で、そのような夜郎自大が米国で誤解されて、結局「共同開発」という名の隷属を強要されたわけです。

そしてF-22欲しい病で6年以上を棒に振って、その間にF-2の生産が終わり将来が見えないために、住友電工など多くのベンダーが戦闘機生産から撤退しました。

そしてその後はF-35が欲しい病を発症します。

仮に国産生産基盤を維持するのであり、相応の能力があるのであれば、F-15Jの改修も自国で行い、またFXはスーパーホーネットかユーロファイターなど既存機から選ぶべきだったでしょう。技術移転と技術情報のアクセス、自国での近代化の可能性を考えればユーロファイター選択が裁量でした。更に申せば欧州製機体を選択すればその後米国とのあれこれも交渉も有利に進んだはずです。

ところが当時の浜田防衛大臣はF-35売ってと、揉み手でワシントン詣でをしていました。これでは足元を見られて当然です。

更に申せばそもそもFXで、国内生産基盤を維持するのであれば導入42機ではなく、70機前後にしなければならかったでしょう。42機(国内生産は38機)でライセンス生産なんぞすればバカ高い金額になるのは子供でも分かる話です。

そして、F-35Aの調達が決まったけどもその戦力化は遅々として進んでいません。空自出身の森本元防衛大臣はF-4EJ改を地上においておけばいいといいました。ですが、それは空軍基地ではなく空軍博物館です。
我が国周辺に実は脅威はなく、新戦闘機は不要だと告白しているようものです。平和ボケもいいところです。
本来まともにFXを進めていれば今頃はせめて1個飛行隊ぐらいは戦力化できたはずです。

しかも偵察ポッドを国産開発して旧型F-15J1個飛行隊を偵察部隊に転用する話も、国産ポッドがカスで、裁判沙汰になって取りやめとなり、結局偵察任務はF-35A部隊に押し付けることになりました。その間も骨董品のRF-4EJがその任にあたり、またF-35部隊の戦闘機部隊としての戦力を削ぐことになりました。
無能と言う以外になんと言えばいいのでしょうか。

ぼくは今まで継続してきた生産基盤は当面維持すべきであり、FXでは調達機数を70機程度に増やして、迅速に後継機種を決定し、F-2生産終了後に速やかにライセンス国産できるように調達すべきだ。技術移転、技術開発能力の点からユーロファイターを選択すべきだと主張してきました。

またF-35を導入するならば、その間に使い物になるかどうか、適切なコストで導入できるかどうか判断できるだろう、適切であればF-35Bを輸入で導入すべきであると主張してきました。

そうであれば当面の戦闘機の生産基盤の維持も可能であり、ユーロファイターユーザーの一員として、ユーロファイターの近代化プログラムにも参加できて、将来の共同開発についても有利になると主張してきました。またステルス機も導入できました。

現状見れば、FXプログラムは次期戦闘機の調達をいたずらに送らせて航空戦力をダウンさせ、国産整備基盤を潰し、わざわざFACOを選んでタイコストでF-35Aを選ぶという最低な選択をしてきました。

そして今度は場当たり的にF-35の調達を増やそうとしています。
それは米国のご機嫌を取り結ぶために、防衛費を右から左に米国に貢ぐようにすら見えます。
果たして空自、防衛省、NSC、安倍政権に当事者意識と能力があるのでしょうか。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年11月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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