移民受け入れ&消費税引き上げ推進の安倍政権は本当に保守政権なのか

城 繁幸

昨日、実質的な移民受け入れ拡大法案である入管法改正案が衆院を通過しました。

SNSなんかを見てると安倍政権の支持層の中に「移民を受け入れたり消費税増税するなんて、本当に保守なのか?」みたいな疑問を抱いている連中が散見されるんですが、はっきりいってアホですね。今さら何言ってんの。アベちゃんが憲法以外のことを真面目に考えてるわけないでしょ。

衆院インターネット中継より:編集部

というかそもそも保守=門戸開放反対というロジックがよくわからない。日本は古代から渡来人受け入れに積極的だったし保守革命の明治維新は使い物にならない幕府とか武士階級を投げ捨てて西洋文物を全面的に受け入れるイベントでした。

増税反対=小さな政府で保守っぽいけど対案は社会保障カットですからね。増税も歳出カットもしない放漫財政は保守の天敵でしょ。「国債をいくらでも刷ればOK」っていう負け組は頼むから保守を名乗らないでね(苦笑)

では安倍政権とはいったい何者なのか。一言で言えばポピュリズムでしょう。国民の多数派が喜ぶことだけをやってくれているありがたい政権です。

なんで移民受け入れるかって?そりゃ国民が支持してるからに決まってるでしょ。日本語学校の留学生や実習生を使い倒して利益を上げてる企業が「総理ありがとう」って言ってるんだからそういうことでしょ。

本当に受け入れに反対するんだったら留学生がレジやってるコンビニや外食チェーンの不買運動やって、一食1500円くらいする純日本人が国産食材使ってやってる定食屋だけみんなで行列作って利用すればいいのに誰もそんなことしてないでしょ。

むしろ「外国人労働者受け入れ反対!」って(ネットで)声高に叫んでるのって、留学生に盛ってもらった牛丼食ってユニクロのフリース着てるようなのばっかりでしょ。

消費税引き上げにしたってそうで、じゃあ高齢者の社会保障給付を見直せって公の場でアクション起こしてる人っていましたっけ?いないでしょ。逆に「社会保障削るな~もっともっと長生きさせろ~」って後援会で言ってくる老人の方が多数派なわけで。

そういう「国民多数派の意思」を忠実に執行しているだけなんですよ安倍ちゃんは。

ついでに言うと(多分無いと思うけど)立憲民主党が政権とってももちろんこの流れは変わらない。だって国民がそれを望んでるんだから。

たぶん選挙の時は「外国人労働者の受け入れはもっと議論をつくします」とか「消費税は弱者に厳しいからゴニョゴニョ」とか言うんだろうけど、政権とって色々な「国民の声」を聞くうちにあら不思議!移民受け入れも増税もOKってことになりますから。ほら、民主党が政権とったとたんに消費税増税したでしょ?あれと同じ。期待するだけ無駄ってもんでしょう。

処方箋ですか?
移民受け入れについてはせめて労働市場を流動化して同一労働同一賃金を実現させてからすべきでしょう。外国出身者に「お前は非正規雇用だから上限5年で単純労働限定なの」って言うのは通じない。絶対後でモメるから。

消費税については逆に20%近くまでさっさと上げて、そこから先をどうするかを国民全体で議論すべきでしょう。ほっておくと30%を超えるけど、たとえば一気に15%くらいにあげれば高齢者の中からも「え!?そんなに負担しなきゃならないの?だったら無駄を見直して給付を減らそうよ」という声が出てくるはず。

【参考リンク】消費税率、20%上限に 自民党税調の野田最高顧問

今まで高齢者でひとくくりにされてきたから議論がタブーだっただけで、高齢者間で分断できればタブーではなくなるでしょう。今はサラリーマンに社会保険料という形で押し付けているから高齢者が議論のテーブルにつく気が無いだけ。

そういう諸々の議論がスタートした後に「労働市場を流動化し、外国人は高度人材のみ」とか「社会保障は極力抑制して増税幅は最小に」とか言ってるのがたぶん本当の保守でしょう。いるかどうかわからないけど(笑)


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年11月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。