徴用工判決で思い出す勝谷誠彦さんの「遺言」

2018年11月30日 06:00

きのう(11月29日)は尼崎を訪れ、勝谷誠彦さんの告別式に参列してきた。その模様についてはスポーツ紙が夕方から速報を出しており、ご覧になった方も多いだろう。日刊スポーツの写真では、出棺を見送る人々の中に私の姿も映っている。(といってもウォーリーを探せ状態だが…)

開始時刻まで少し余裕があったので、時間調整を兼ねてJR尼崎駅前の喫茶店で15分ほどコーヒーを飲んで過ごした。昔ながらの喫茶店で、老夫婦が切り盛りしている。私は喪服だったので、おばちゃんが「あれ?お葬式に行きはるの?」と尋ねるので「これから勝谷さんの告別式なんです」と説明したら、夫婦で「あぁ、勝谷さんの!」と即応。テレビで勝谷さんの切れ味鋭いコメントを繰り出していた頃の感想なんかを聞かされて、改めて故人の地元での知名度を痛感した次第。昨年の県知事選で次点に終わった勝谷さんだが、県内の自治体で尼崎市では唯一、井戸敏三知事を上回っている。

個人的な「弔辞」はすでに先日書いた通りだ。焼香、そして出棺の際に手を合わせながら、メディア人としての遺志を継いでいくことを心の中で誓ったが、ところで生前、鋭い時事評論で鳴らした勝谷さんがご存命なら、彼の国のどうしようもなさ加減について、どんな辛口コメントが飛び出たことか。

「徴用」三菱重工にも賠償命じる判決 韓国最高裁 | NHKニュース

今回の判決内容自体は、先月の新日鉄住金に対するものが出た時点で予想されていたから驚きはない。ただ、東京に帰ってきて、韓国政府の反応についての報道を見かけ、さすがにこれには開いた口が塞がらなかった。ネットスラング的にいえば「お、おう..」だ。

関係悪化歯止めかからず=韓国政府、日本に自制要求-元徴用工判決(時事通信)

最高裁判決に日本側が反発していることを受け、韓国外務省報道官は記者会見で「日本政府が過剰に反応しており、極めて遺憾だ」と表明し、改めて自制を要求。「判決の趣旨は、強制徴用者の精神的被害の回復が必要ということだと理解している」と訴えた。(太字は筆者注

「過剰に反応してんのはどっちなんだよ、それこっちのセリフなんだけど」と何回、ツッコミを入れたことか。ここまで来るともうお笑いでしかない。勝谷さんが有料配信の日記で書くなら「どははは」と笑い飛ばしたことだろう。

勝訴を喜ぶ原告団(KBSより:編集部)

日韓断交が無理なら、どうすればいいか

百歩譲って、青瓦台の主が親北左派政権であるにしても、保守派で日本ともゆかりのある李明博、朴槿恵の歴代大統領たちですら政権終盤にかけて反日に振り切ったことも合わせて振りかえれば、韓国は政治から司法までもはや「反日」が骨の髄までしみ切ってしまっている現実を認めざるを得ない。

アゴラの寄稿者の中で割とリベラルに外交を語ってきた方の早川忠孝さんですら、きのうは「徴用工裁判を抱えている日本の企業は、最終的には韓国から撤退せざるを得ないのではないかしら」「困ったことだが、解決策がないことも時にはある」などと匙を投げられていた。韓国ヘイト志向に距離を置いてきた穏健な外交観をもつ一般の日本国民ですら「韓国を嫌いになっても好きになることはない」という態度になってしまうのではないか。

しかし、だからと言って「日韓断交」は、宇山卓栄さんが指摘したように、人的交流を途絶させたとしても、金融・通信等の経済的関係性を断つことまでは現実的に難しい。現段階で「日韓断交」の4文字は、ネトウヨと呼ばれる人たちの極論だ。保守的な論客でも新聞やテレビ、大手出版クラスのメディアに登場している人でその4文字を正面切って論じる人はおるまい。

となると、対抗手段としては八幡和郎さんが提言している「日本人が半島に残した個人財産への補償」などの制裁をするしかないが、韓国とのそもそもの向き合い方について私たち日本人のマインドセットをどう見直すかも抜本的に考えていく段階なのではないか。

日本人の「対韓国」観を根本的に問い直す時期に

関西からの帰路、勝谷さんが有料日記等でしばしば書いていたことを思い出していた。具体的な文言を書いたメールの文章が見つからず、趣旨だけの紹介になるのをお許しいただきたいが、戦前の日本が韓国併合から中国大陸に進出していった歴史的経緯について「深入り」しすぎだったという評価で、その代わり、東南アジアや南洋進出に力を入れるべきだったという持論をしばしば披露されていた。

しめやかに営まれた勝谷さんの葬儀

もちろん、それはあくまで当時の欧米列強と覇権を競わざるを得なかった歴史的現実の範囲の話で、植民地主義を決して肯定するものではないだろうが、フィリピンをこよなく愛した勝谷さんの志向も底流にあるだろうし、半島や大陸には乏しい石油資源確保という戦略的位置付けもあったのだろう。

この「勝谷外交史観」に初めて触れたのは10年くらい前だったと思うが、私の中で膝を打つものがあり、以後、日本が中国や韓国と揉め事を起こすたびに、「厄介な隣人とは距離をもっと置いて、それよりも隣人より先んじて東南アジア、インドなどとの関係を深めた方がいいんじゃないの」と冷めた目で国際ニュースを見るようになった。

外交のプロから見ればコンセプトレベルのことを、実際の外交のTo Doに落とし込むのは容易ではないだろう。しかし、ここまで日韓関係が絶望的に悪くなって来るとなれば、政治レベルから一般国民レベルまでそろそろ「韓国との関係をどうするか」という哲学的な部分を見直す段階ではないか。

例えば、日韓共同宣言(2001年)は、

「21世紀の確固たる善隣友好協力関係を構築していくためには、両国が過去を直視し相互理解と信頼に基づいた関係を発展させていくことが重要」

などと、当時の小渕恵三、金大中両首脳の一致した認識を綴っている。しかし、そういうものはもう無理だと諦めるのかどうか、そろそろ日本国内でしっかりと議論して腹をくくった方が良いのではないか−−−。そんなことに思いを巡らせた告別式の一日だった。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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