立憲的・平和的改憲論の弱点 --- 丸山 貴大

2018年12月01日 06:00

2018年10月24日、第197回国会(臨時会)が召集された。そして5日後の9日、衆議院において代表質問が行われた。そこにおいて、国民民主党代表の玉木雄一郎衆議院議員は憲法9条の改正について、以下の通り述べた

自衛権の範囲を憲法上明確にし、平和主義の定義を国民自身によって行う平和的改憲の議論を行っていくべきだと考えます。

すなわち、さきの大戦の教訓と憲法の平和主義の原則を踏まえ、例えば、武力行使の三要件を一つのベースにして、我が国にとっての急迫不正の侵害がある場合であって、これを排除する他の適当な手段がない場合には、必要最小限度の実力行使が可能である旨憲法に明記し、海外派兵はしない、他国の戦争に参画することはないということを条文上明らかにする、これこそが立憲主義に魂を吹き込む正しい改憲の方向性だと考えます。

9条改憲について国民民主党が言う「平和的改憲」は、立憲民主党の山尾志桜里衆議院議員の言う「立憲的改憲」に重なるだろう。山尾議員は「立憲的改憲」における9条論について、以下の通り述べている[1]

「立憲的改憲」における九条論の本質は、「自衛隊の明記」ではなく、「自衛権の統制」をその本質としています。具体的には、自衛権の範囲を個別的自衛権に明文で制限し、その範囲において「戦力」であり、「交戦権」の主体であることを認める。それにより、二項との矛盾を解消し、立憲主義と平和主義を貫徹しようとするものです。条文には、武力行使の旧三要件を明記する必要があるでしょう。

また、山尾議員は、そのような考えに基づき、9条1項、2項を維持した上で新たな条文を追加する改正試案を発表した[2]

【追加する条項】第9条の2

1項 前条の規定は、我が国に対する急迫不正の侵害が発生し、これを排除するために他の適当な手段がない場合において、必要最小限度の範囲内で武力を行使することを妨げない。

2項 前条第2項後段の規定にかかわらず、前項の武力行使として、その行使に必要な限度に制約された交戦権の一部にあたる措置をとることができる。

3項 前条第2項前段の規定にかかわらず、第1項の武力行使のための必要最小限度の戦力を保持することができる。

4項 内閣総理大臣は、内閣を代表して、前項の戦力を保持する組織を指揮監督する。

5項 第1項の武力行使に当たっては、事前に、又はとくに緊急を要する場合には事後直ちに、国会の承認を得なければならない。

6項 我が国は、世界的な軍縮と核廃絶に向け、あらゆる努力を惜しまない。

山尾議員は、9条2項が禁じる戦力及び交戦権を規定の範囲においては、解除している。そのことにより、保持する組織が戦力、即ち、軍に相当することを明文化しており、従来の違憲論争はその限りにおいては決着がつくであろう。

公式Facebookより:編集部

いずれにしても、国民民主党の提案する「平和的改憲」にしろ、立憲民主党の山尾議員が提案する「立憲的改憲」にしろ、両者に共通する本質は、「制約された自衛権の明記」と言えよう。そのことにより、時の政府が勝手に解釈することを防ぎ、法的安定性及び立憲主義を確固たるものにしようとするものであろう。

だが、それは、わが国の安全保障政策をある程度、固定することを意味する。そのことは、わが国を取り巻く時代時代の安全保障環境の機微な変化に対し、柔軟な政策を講じることを阻む恐れがある。

自衛権に関して明文化することは賛成だが、過ぎたるは及ばざるが如し、を念頭に置く必要があるだろう。即ち、第一に自衛権の存在を明確にし、第二に、その行使要件概要について明文化する。その際、9条1項、2項を蔑ろにするような条文であってはならない。それを維持せざるを得ないからには、単に存在させるのではなく、十分に法的効力が作用するように条文を追加する必要がある。そのことを十二分に考慮した上で、9条1項、2項を維持した上で、9条の2として自衛権の存在について明文化した改正私案を以下に提示する。

日本国民は、自然権としての個別的又集団的自衛権を日本国に譲渡し、その行使について委託する。日本国は前条の規定に則り、責務を持って自衛権を行使し、その行使は、わが国に対する外部からの武力攻撃に由来する。自衛権の行使は、わが国にとって急迫不正の侵害が発生又は切迫若しくは予測される際に発動される。

このように改正することにより、第一に、日本国が自衛権を保持する旨を明確にした。第二に、その行使範囲は前条の法的効力が及ぶことを明文化した。第三に、自衛権の行使要件概要として、武力攻撃事態や武力攻撃事態予測についても盛り込んだ。

このような改正案であっても、解釈論は常に付きまとう。そこにおいては、まさしく、民主的な議論によって、安全保障政策を確立していく他、無いだろう。国家は国民が構成し、その権力行使については、主権者たる国民の意思が反映される必要がある。畢竟、国家の安全保障政策については、とりわけ成熟した民主主義や議会制民主制が必須なのだ。

[1] 小林よしのり他『ゴー宣〈憲法〉道場Ⅰ白帯』(毎日新聞出版、2018年4月30日) 19-20頁
[2] 山尾志桜里『立憲的改憲』(ちくま新書、2018年8月10日)375-376頁

丸山 貴大 大学生
1998年(平成10年)埼玉県さいたま市生まれ。幼少期、警察官になりたく、社会のことに関心を持つようになる。高校1年生の冬、小学校の先生が衆院選に出馬したことを契機に、政治に興味を持つ。主たる関心事は、憲法、安全保障である。

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