バロンズ:Fedに続き、トランプ氏は米株高を演出できるか

2018年12月03日 10:00

バロンズ誌、今週のカバーはビッグデータの利点とリスクを取り上げる。web情報収集会社のThinknumは6月、電気自動車メーカーのテスラが再編を発表する前日、求人を停止した動きを察知した。カウエンが消費者調査では、スポーツ衣料メーカーのアディダスが競合のナイキから顧客を奪っていることが分かった。このように、webに溢れる情報とその解析は、株式売買の材料となる。一方で、個人情報が流用されるリスクをはらむ。その潜在性と危険性について、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週はもちろんG20を舞台にした米中首脳会談を取り上げる。米中首脳会談前に執筆されたコラムの抄訳は、以下の通り。

マーケットに必要なG20の果実とは—What This Market Really Needs From the G-20.

2018年の米株相場が陽線引けするかは、トランプ大統領にかかっている——というのは、CNBCのヘッドラインだ。アルゼンチンのブエノスアイレスで開催中の20カ国・地域首脳会合に合わせ、米中首脳は12月1日の晩餐で協議を行う。最良のシナリオは、経済規模で1位と2位の首脳が激化する貿易戦争の休戦合意であり、追加関税の見送りを含め、貿易障壁から知的財産まで様々な分野をめぐりあらためて協議を再開することだ。

米中首脳会談での楽観的見通しに加え、Fedによる利上げが警戒すべき水準以下にとどまる見が広がり、米株相場は下落の流れを止めた。S&P500とナスダックは週足でそれぞれ4.85%高、5.64%高と、約7年ぶりの上昇率を遂げた。ダウ5.16%高と、過去2年間で最大となった。

しかし、既に通商政策の不確実性と金融引き締めの効果は、経済に波及している。問題は、打撃がどこまでにとどまるか、である。

大手米金融機関のリサーチ部門でヘッドを務めてきたデビッド・P・ゴールドマン氏によれば、貿易活動の減速により、工場や機器向け投資が失速した結果、 資本財輸出に依存する主要国の経済が鈍化し始めたという。日本の7〜9月期実質GDP成長率は前期比0.3%減(筆者注:日本の場合は西日本豪雨や北海道胆振東部地震など特殊要因が大きい可能性)となったほか、ドイツも同0.2%減だった。

貿易戦争は企業に投資先への不確実性を高め、こうした不確実性により貿易依存国の経済を鈍化させたと考えられる。しかも経済拡大サイクル末期において過剰生産能力が吸収されれば設備投資が再開するはずだが、S&P500構成企業は4〜9月期において設備投資より自社株買いに注力してきた。

米国の貿易赤字削減への努力は、短期的に反対の効果をもたらしている。10月には財の貿易赤字が772億ドルと過去最大を更新、追加関税措置を懸念し輸入が拡大した一方で、輸出が減少したためだ。中国も無傷ではなく、同国の11月製造業PMIは分岐点の50.0と、2016年7月以来の水準へ落ち込んだ。

政治はさておき、意図していたか否かは別として、Fedは米株安にブレーキを掛ける上で大いに貢献した。11月7〜8日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、景気敏感セクターと金融引き締めと合わせ、世界成長の減速が米国経済のリスクと指摘した。何より、パウエルFRB議長は議事要旨公表の前日にあたる11月28日、FF金利誘導目標について中立金利を「わずかに下回る(just below)」水準にあると発言、米株相場の大幅高を招いた。同発言は、は2019年に年4回の利上げ見通しの示唆と捉えられた10月3日の「中立には程遠い」発言からの大幅修正と言えよう。パウエルFRB議長の”変心”により、12月18〜19日開催のFOMCで追加利上げを行った後、FF先物市場は2019年はFF金利を2.5〜2.75%、つまり1回の利上げしか見込んでいない。

金利に最も敏感な住宅市場も、足元で減速を続けている。米10月中古住宅販売成約件数指数は、約4年ぶりの低水準だった。また、米11月NAHB住宅市場指数は前月から8ポイントも急落し約4年ぶりの落ち込みを記録した。先行指標である米株相場はFedの利上げを織り込んでもおかしくない。

米11月NAHB住宅市場指数、金利上昇が痛手となり急低下。

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(作成:My Big Apple NY)

Fedによる利上げ姿勢の変化は、政治的なニュースやトランプ大統領による利上げ牽制より効果があった。トランプ大統領の弁護士だったマイケル・コーエン氏が米議会への偽証を認めたが、米株は反応薄。2016年のモスクワでのトランプ・タワー建設での協議に、トランプ氏が当時関与していたことが判明したにも関わらず、である。これは、通商政策のほか、Fedの利上げが米株相場を動かす重要な要因である証左だ。

G20での米中首脳会談が決裂しなければ、ひとまずはFedが米株相場の行方を占う上で重要となりうる。その意味で、パウエルFRB議長が12月5日に上下両院合同経済委員会で行う議会証言に注目すべきだろう。


ブッシュ元大統領(父)が12月1日に逝去したため、トランプ大統領は12月5日を「追悼の日」と定めました。追悼の日に合わせ、連邦政府機関の閉鎖が決定され、ニューヨーク証券取引所やナスダック取引所などは休場となります。12月2日時点で、上下両院合同経済委員会は12月5日のパウエルFRB議長の議会証言の予定を表示していますが、まもなく変更されるのでしょう。18〜19日にFOMCを控えるだけに、ブラックアウト期間を踏まえれば10日まで実施する必要があります。

しかし、政府機関閉鎖を回避するためには12月7日まで歳出法案を可決せねばならず、米議会に残された時間はごくわずか。せめてもの救いは、政府機関閉鎖を手掛かりに急落するリスクは、Fedと米中首脳会談での合意によって軽減されたことでしょう。

(カバー写真:The White House/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年12月2日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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