ゴーン事件に、モハメドアリの「スリラー・イン・マニラ」をみた

2018年12月10日 06:00

「スニラー・イン・マニラ」は1975年10月1日にフィリピンのマニラで行われたプロボクシング世界統一ヘビー級タイトルマッチ、「モハメド・アリ」対「ジョー・フレージャー」の第3戦の俗称である。「スニラー・イン・マニラ」は二転三転し、最後の最後までもつれた。

ゴーン事件は2018年11月19日にゴーン前会長が逮捕されてから、報道が無い日はないほど喧(かまびす)しい状況であるが、行き着く先がどうなるのか先が読めず、この試合のような展開になっている。事件の概要を追ってみよう。

◎11月19日<東京地検特捜部がゴーン氏を逮捕し、火蓋が切られる>

日産自動車の代表取締役会長カルロス・ゴーン氏が、自らの報酬を約50億円少なく有価証券報告書に記載した疑いがあるとして、東京地検特捜部は19日、金融商品取引法違反の疑いで、ゴーン会長と同社代表取締役グレッグ・ケリー容疑者を逮捕した。(朝日新聞

→『ゴングが鳴る』

◎11/23<ゴーン氏120億円の虚偽記載をケリー氏に指示との報道。ゴーン氏敗色濃厚に>

カルロス・ゴーン容疑者が有価証券報告書に記載しなかった報酬は、逮捕容疑を含め少なくとも総額120億円前後とみられる。側近の前代表取締役グレゴリー・ケリー容疑者に書面で具体的に指示していたことも判明。(共同通信

→『ゴーン氏劣勢』

◎11月28日<金融庁が「有価証券報告書への記載は必要ない」と回答したとの報道。金商法違反は成り立たない可能性>

ケリー役員はゴーン元会長の報酬の開示について「外部の法律事務所や金融庁などに問い合わせて処理した」と供述。回答は書面に残っており、有価証券報告書への記載は必要ないとの見解が記されていた。(日経新聞

→『東京地検劣勢』

◎12月2日<金融庁の了解をもらったと言っていたゴーン氏が、「サインはしたが、正式文書でない」と容疑否認の供述内容を変更。しかし供述内容のとおり報酬が確定していなかったとしたら特捜部の勇み足か>

前代表取締役がゴーン前会長の退任後に報酬を支払うとした合意文書に毎年、サインしていたことを認めていることが関係者への取材でわかりました。一方で前代表取締役は「正式な文書ではなく退任後の報酬は決まっていなかった」などと容疑を否認している。(NHK

→『両者劣勢』

◎12月4日<ゴーン氏再逮捕。ゴーン氏の話しは二転三転>

2018年3月期までの直近3年間の有価証券報告書でも報酬計約40億円の過少記載があったとして、東京地検特捜部がゴーン元会長を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで再逮捕。(日経新聞

→『ゴーン氏追い詰められる』

◎12月6日<西川社長も退任後報酬の受け取りにサインしたとの報道>

西川社長産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が有価証券報告書に記載せず、退任後に受け取る予定だった報酬の名目を記した文書に、西川広人社長がサインしていたことが6日、関係者への取材で分かった。(共同通信

→『コミッショナー役の西川社長も試合参戦』

◎12月8日<「サインが有効か無効か」、が判定の分かれ目か? >

特捜部は自身でサインしていることから効力があり、ゴーン容疑者が退任後の報酬確定を認識していたことを示す決定的証拠とみている。だが、ゴーン容疑者は自身のサインがある文書の存在を認めた上で「内容を確認したという意味でサインしただけだ」と供述。(産経新聞

→『もつれにもつれる』

混沌としている状況の最中に、今度は日産が車の安全性能にかかわる新たな検査不正が見つかったと発表。

昨年9月以降、出荷前の完成車検査で不正が見つかるのは5度目。重ねて再発防止を誓い、「うみは出し切った」と宣言した後も不正発覚が続く。(朝日新聞

前会長のゴーン容疑者に代わり、名実ともに経営トップとして日産を率いる西川広人社長兼CEOは記者会見に姿をみせず、説明責任を果たさなかった。(朝日新聞

これに加えて、セコンドにあたるルノー陣営と日産陣営の、互いの株の買い増しという主導権争いも加わり、ルノーが日産に対するTOBを仕掛けるのではないかとも報道された(zakzak)。

「スリラー・イン・マニラ」は、試合序盤はアリのペースだったが、フレージャーが中盤にかなり追い上げてアリは失速。その後、またアリが挽回と何度も形勢が逆転するシーソーゲームだった。灼熱のマニラ、リング上はおそらく50度はあったといわれる過酷な中での消耗戦の末、最後はフレージャーが根を上げる形でギブアップ、14ラウンド終了時にアリのTKO勝ちとなった。

しかし、この試合には逸話がある。14回終了後、フレージャー本人は戦う意欲を持っていたが、セコンドは命の危険を感じ、トレーナーがフレージャーの目の前に指を差し出してみせた。そしてフレージャーが指の本数を確認できなかったため試合を止めさせた。ところが、同じラウンド終了時、アリもこの時点で体力の消耗が著しく、敗北を覚悟してグローブを外して欲しいとセコンドに頼んでいたと言う。

ゴーン事件の「スリラー・イン・マニラ」の決着はどう着くのだろうか。いずれにしても、早期に真相が解明され、深刻な機能不全を露呈した日産のガバナンスの改善が求められる。

石川 了(いしかわ とおる)58歳  宅地建物取引士
1982年中央大学卒業、NTT入社。退職後、不動産投資業を営む


Wikipediaより:編集部

【お知らせ】アゴラでは、「ゴーン前会長逮捕」に関する皆様の論考を募集しています。事件の見立てや、日本とフランスの関係、自動運転とEVという100年に一度の大革命を迎えた自動車業界など、さまざまな視点から語られていますが、個人レベルでも、巨額の報酬を得ている経営者と現場社員との待遇格差、語学習得やコミュニケーションなどで外国人と働くことの難しさといった論点を考える契機になるでしょう。

平成の終わりに勃発した大型経済事件を皆さんはどうご覧になっているでしょうか。皆さまのご意見をお待ちしております。

主な論点やネット上の注目論考は、編集部のまとめ記事を参照ください。

【まとめ】日産ゴーン前会長逮捕:事件の論点は?

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