バロンズ:Fedは利上げ見通し修正により、米株相場を救うのか

2018年12月10日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーに企業収益の変化として、定額制サービスあるいは定期購読を取り上げる。マイクロソフトは前週、時価総額でアップルを抜き去り、トップに立った。そのマイクロソフトの主力部門はクラウドサービスの定額制サービス料で、iPhoneの販売台数に依存するアップルと一線を画す。こうした違いが浮き彫りとなったせいか、マイクロソフトの株価が11月に3.8%高を遂げた一方で、アップルが急落し明暗を分けた。こうした定額制サービスは、バロンズ誌のオフィスがあるミッドタウンの靴磨き屋でも花開きつつあり、年間100ドル払えば、制限なしにサービスを受けられるようになった。定額制サービス、あるいは定期購読がア新たな収益源として存在感を示すなか、どのような業種で活発化し、今後どうなっていくのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

株式市場が重要なんだ、愚か者—It’s the Stock Market, Stupid.

オマハの賢人、ウォーレン・バフェット氏の師として知られるベンジャミン・グレアム氏は、短期的に株式市場は人気投票だと語った。11月6日に行われた中間選挙では、ノースカロライナ州の下院選で不正があったとして未だ勝者が確定しておらず、投票システムへの不信が高まっている。ケンブリッジ大学のデビッド・ランシマン教授が主張するように、年齢差別を解消するため選挙権年齢を6歳に引き下げたら、問題は解消されるのだろうか?

米株相場が12月3日週に4.5〜5%安と3月23日週以来で最大の下落を記録したことを踏まえれば、6歳の子供が株式市場で投資したところで、大した問題にはならないだろう。12月は1950年以来、ストック・トレーダーズ・アルマナックによれば12月は最も良いパフォーマンスを遂げてきたが、今年は12月の第1週に時価総額を1.4兆ドルも吹き飛ばした。

12月の第1営業日の3日こそ、好スタートを切ったように見えた。G20首脳会合中に開催された米中首脳会談では、米国の対中追加関税措置(2,000億ドル相当の中国製品への関税率を2019年1月1日から10%→25%へ引き上げ)につき90日間の猶予を設けることで一致し、これを好感して上昇した。しかし、翌4日にはトランプ大統領が自らをツイッターで「関税マン」と呼び、さらに米3年債と米5年債の利回り差逆転が発生、ダウを799ドル押し下げてしまう。さらにブッシュ元大統領逝去に伴い休場を迎えた5日には、華為技術(フアーウェイ)の創業者の娘である孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕された。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙がFedが利上げペースを減速させると報じたため、6日は784ドル安から巻き返し79ドル安で取引を終えたが、Fedの報道は米長短利回り差逆転が響いた可能性がある。逆イールドは、市場関係者の間で景気後退のサインと捉えられてきた。

逆イールドが発生しただけではない。世界景気との相関性が高い銅や原油など、商品先物市場が下落、自動車や住宅市場の減速と整合的である。

米11月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は市場予想以下だった。しかし、MFRのジョシュア・シャピロ米国担当首席エコノミストが指摘するように、特殊技能職が不足する状況で、底堅差を示したと言えよう。12月18〜19日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送りを正当化するものではない。12月の追加利上げ織り込み度は、前週初めの74.6%から82.7%へ上昇した。

ただし、2019年となれば話は別だ。FF先物市場によれば、25bpの追加利上げ1回しか見込んでいない。1ヵ月前には2回の織り込み度が64.3%だったことを踏まえれば、大きな変化だ。9月25〜26日開催のFOMCで公表された参加者中央値の3回から、利上げ見通しは一段と後退している。

FF先物市場、2019年12月の利上げ織り込み度(2018年12月に利上げを行い、FF金利を2.25〜2.50%へ引き上げたと仮定した回数)

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(作成:CMEよりMy Big Apple NY 作成)

利上げ見通しが後退するように、米11月雇用統計ではNFPこそ底堅さを示したものの、労働市場の鈍化サインが点灯している。例えば、不完全失業率(経済的な理由でパートタイムを余儀なくされている労働者、現在は職探しを断念しているものの働く意志がある者など)は7.6%へ上昇した。また、経済的にパートタイムを余儀なくされている労働者そのものの数も増加した。さらに、労働時間が短縮していた。グラスキン・シェフのデビッド・ローゼンバーグ米国担当首席エコノミスト兼ストラジテストによれば、週当たり平均労働時間が前月の34.5時間から34.4時間に短縮したことは、37万人が解雇されたと同様の効果をもつという。

米11月雇用統計以外でも、労働市場に減速の兆しが現れている。米11月チャレンジャー人員削減予定数で明らかになった通り、企業は再編を通じリストラに着手済みで、自動車大手GMはその一例にあたる。

Fedは、フォワード・ガイダンスから距離を置き、経済指標次第の金融政策運営を強調し始めた。未来を予想するのが難しい以上、Fedは慎重な舵取りを迫られよう。

——Fedの変心は、パウエル・プットの存在を市場に信じさせるきっかけとなりました。未だ米株相場は荒れ模様が続くものの、9月FOMC議事要旨や10月のパウエル発言からの方向転換は、12月FOMCで公表する経済・金利見通しでドット・プロットを下方修正させ、2019年FF金利予想の中央値は少なくとも3回利上げから2回の利上げを示唆する見通しです。

FF金利先物市場では、2019年に1回の利上げどころか、据え置きの見方すら高まるだけに、米株高を演出する余力に疑問が残るものの、Fedとしてもいきなり1回には引き下げづらいところ。週当たり労働時間が34.4時間と前月を下回ったにも関わらず、平均時給は前年比で3%超えを維持し、労働市場の逼迫がいよいよ賃金を押し上げつつある可能性が高まります。物価動向は落ち着いているとはいえ、金融安定報告で示したように、レバレッジドローンや商業不動産動向には過剰な借り入れの芽が伸びており、利上げ観測の急速な巻き戻しは避けたい。この辺りの手捌きは、上下院両院合同経済委員会でのパウエルFRB議長の議会証言でヒントが見え隠れすることことでしょう。

(カバー写真:Andrew Smith/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年12月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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