日本国債は日銀の手の平のなかで動いている孫悟空か

大阪取引所に上場している日本の債券市場のベンチマークともいえる長期国債先物(以下、債券先物)は、10日のナイトセッションで151円89銭まで上昇した。今回の債券先物の上昇の起点は10月23日あたりで、この日の引けは150円29銭の高値引けとなっていた。これ以降、ほぼ一本調子の上昇となっていた。債券先物の出来高も次第に増加し、株安などを背景とした仕掛け的な動きが強まりつつあった。

大阪取引所(Wikipedia:編集部)

その後の債券先物の上昇の原動力となったのは米国債の上昇といえるが、こちらは少しタイムラグを置いて11月8日あたりから上昇基調となっていた。米債の上昇の背景となっていたのは、米中貿易摩擦を巡る懸念、英国のEU離脱問題などの国際情勢を受けたリスク回避の動きもあったが、来年の世界的な景気減速懸念も背景となっていた。FRBの利上げペースを巡る思惑なども次第に強まってきた。

この米債高もあり、債券先物は日々の値動きも大きくなってきた。出来高も多い状態が続いたが、なかでもナイトセッションの出来高の多さが目立っていた。これは10月あたりから始まっており、ナイトセッションの出来高が1兆円を超す日も出てきていた。これは時間帯からみて海外投資家の動き、もしくは一部ディーラーがデイトレードを増加させていた可能性がある。

ただし、現物債の商いはそれほど多くはない。10年債利回りは0.10%どころか0.05%も割り込んできたものの、これは債券先物に引っ張られたともいえる。

12月13日の債券先物12月限の最終売買日に向けた中心限月の移行も睨み、踏み上げ圧力も意識されて、10日のナイトセッションで直近の高値を取りに来た格好となった。日銀の大量の国債買入でチーペストと呼ばれる債券先物と連動する銘柄の品薄感などから、先物は買い戻しが入りやすい。今回は米債高もあり債券先物の踏み上げ圧力が強まったと言える。

債券先物の中心限月が実質的に3月限となってからも、相場は米債の動き次第となるとみられる。特に米債も動いている時間帯のナイトセッションの仕掛け的な動きはまだ続く可能性はある。

これによって債券の機能が回復しているように見えなくもない。現物債市場が動きが取りづらい分、債券先物を使ったディーリング的な商いが増えることは好感したいが、それでも日銀の手の平のなかで動いている孫悟空に過ぎないことも確かである。昔のように自由に空を飛べない限り、本来の意味での債券市場の機能が回復したとはいえない。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。