スマホ決済が当たり前になる日

世の中にはいろいろな方がいるものでいまだに一定のビジネス規模があるにもかかわらず「クレジットカード決済はいや」という事業者が身近にいます。なぜ、と聞けば「トラブルが多いから」と言います。この方がどのようなトラブルを経験したのかは存じ上げませんが、仮に5~10年前の経験を今日に引っ張ってくることはナンセンスでしょう。

写真AC:編集部

そのクレジットカード、日本ではようやくチップ付きのカードに置き換わりつつありますが、まだ古いタイプのカードをお持ちの方はいらっしゃいます。私のカナダのレンタカー事業で支払いの決済をするのにチップがなくカード端末でスワイプしなくていけないケースが時折あるのですが、北米でスワイプはトラブルが多く、危険行為とみなされ、カード会社からは嫌がれます。

それどころかカナダではカード支払いでも100ドル以下なら端末にカードを挿入せず、タップだけで支払いが完了しますので私も客も非常に便利で手早く決済ができるというものです。

日経に「スマホ決済、競争過熱、普及には使い勝手が課題」とありますが、私はこれは日経の杞憂に過ぎないと思っています。世の中にSuicaが出来た際、一部の人は抵抗を持っていました。電車賃がいくらかわからないとか、なくしたらどうするとか、かなり無理な使わない理由をあげていたと思います。今や、ほぼすべての人がピュイピュイと改札を通過する時代にこれを使わない手はありません。

スマホ決済はスマホを持っていないとできないにもかかわらず今回話題になったヤフーとソフトバンクのPayPayという決済サービスが爆発的人気を呼んだのは記憶に新しいところです。20%還元というマーケティングで家電量販店が爆発的売れ行きを見せたというのも納得できます。主流は20~40代の人と思われ、この年層の方々が決済の新しい時代をけん引していくのだろうと思います。

先日、久しぶりに新幹線に切符を買って乗ったのですが、切符とはこれほど面倒なものか、と改めて感じさせました。切符を買いに行き、数少ない切符読み取りの改札を通過し、切符を無くさないよう大事にポケットにしまい込み、出るときに改札で回収してもらわねばなりません。ピュイと行けるのが当たり前になると大した手間ではないのにやけに面倒に感じてしまうのです。

カナダの国内線飛行機。航空券はありません。スマホのQRコードみです。それを荷物検査のところで読み取ってもらい、搭乗の際にも同様に読み取り機にピュイとやれば終わりです。チケットがどこにあるかポケットをまさぐらなくてもよく、快適です。

経営者の側からすれば現金を扱わなくて済むのは実にありがたいことです。現金があることでレジの時間がかかり、レジ締めも必要で更に銀行に入金する手間があります。これには大いにコストがかかることは経営者ならよくご存じでしょう。また、スーパーマーケットにある自動支払い機は現金払いができますが、あのレジ、価格が高いのです。つまり大きくて場所も取る上、値段が高いレジは極力減らしたいと考える経営者は多いと思います。しかもお釣りを各機械に入れておかねばなりません。これは大変な手間とコストなのです。

もちろん、現金が完全になくなる日はそう簡単には来ないでしょう。しかし、我々より若い世代が現金決済は「珍しいもの」と思うようになれば20年もすれば「えぇー現金払い?」という声が普通になってくるとみています。今や、結婚式のお祝いも非現金化が進みます。

また、海外では現金はアングラ経済を増長させる手段として厳しくコントロールされます。日本でも税関で100万円以上持っていれば申告しなくてはいけません。以前、カナダの国際線ターミナルでボディチェックを終えたところに警官が待ち構え、人々に現金を持っているか、と質問し、いくら持っているか確認させられたこともあります。(カナダの現金持ち出し制限は1万カナダドル。)

今回のヤフー/ソフトバンクの仕掛けたマーケティングは他の競合にも刺激をあたえています。LINEも同様のキャンペーンを年末まで張っていますし、さらなる追随が出てくるでしょう。(レストランや小売店に端末を売り込むことで囲い込みをするという効果もあります。)

数年もすれば「おっ、日本は変わったな!」と思うことになるのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2018年12月17日の記事より転載させていただきました。