ドイツ移民政策から予測される日本の未来【移民政策を考える③】

2018年12月21日 06:00
  • 死亡した実習生が3年で69年
  • 固まっていない内容

そんな批判を受けながら、日本では出入国管理法改正案が12月8日に成立した。

10日の記者会見で出入国管理法改正案について発言する安倍首相(官邸サイトより:編集部)

いまさら説明はしないが、新たに「特定技能1号」「特定技能2号」などの資格を設けるもので、実質的な移民政策に舵を切ったと言える。

正式には「外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法」ポイントは、

  • 従来は医師や弁護士ら「高度な専門人材」に限定してきた就労目的の在留資格
  • それを単純労働を含む分野でも外国人の受け入れ解禁
  • 政府は1号に限って5年間で最大34万5150人とする

他方、

  • メルケルさんが18年間率いてきたキリスト教民主社会同盟(CDU)党首の座から去る
  • ミニメルケルと呼ばれるクランプカレンバウアーさんが後を継ぐ

とドイツでは大きな政治的地殻変動が起きそうな気配でもある。

メルケル氏【出典】ドイツ政府HPより

そのメルケル氏が「多文化主義は完全に失敗」という発言を何度も行ってきた。この言葉は、我々にも重くのしかかる。ではなぜそういった発言をしたのか、ドイツの移民政策を振り返っていこう。

ドイツの移民政策の歴史

そもそもドイツは第1・2次大戦で敗北する前は領土が広くいきわたっていた。東方植民という言葉を聞いた方がいるだろうし、プロイセンは現在のポーランドのほうまでいきわたっていた歴史がある。

第二次大戦後、ドイツ人が帰還してきた。その後、経済復興・発展で人手不足が発生したため、1950年代からイタリア、ポルトガル、トルコ、ギリシャなどと企業を中心とする形で協定を締結し、労働者を迎え入れてきた。

「ガストアルバイター」 と呼ばれる外国人労働者は、きちっとした身なりの服装でドイツ国内に出稼ぎに来たようだ。「金の卵」扱いで国内からも歓迎されていた。

しかし、転機はオイルショック。そこで一時停止されることになる。

移民はドイツ政府は帰る・・・・と思ったが、そうではなかった。特にトルコ移民。

なぜなら、第一に、トルコ人労働者たちは一度帰国してしまうとドイツに戻ってこれない。そこがイタリア、ポルトガルとは違うった。第二に、トルコという国自体、政情が安定しないし、民主主義もその当時は成熟していなかった。

ここから状況は複雑化していく。トルコ人労働者は家族を呼び寄せる。結果、労働者は増えないが家族が流入となる。それに伴って、労働者家族の社会保障・医療などの問題、学校での教育問題なども起こるということになる。

国内の世論変化

そうすると歓待ムードは一転、ドイツ人の多くがドイツ社会の「負担」と考える人も増え、その文脈で政府は「ドイツは移民国ではない」と打ち出す。80年代になると排斥運動が多発していく。移民への厳しい目線は市民権取得条件の厳格化を呼んでしまう。「やがて帰る人たち」とみられ、「存在しないかのような」扱いを受けていた。

しかし風向きが変わる。それはやはり経済状況だった。

【出典】エジルさん広告、筆者撮影

1990年代の労働力不足を受けて、国籍の帰化条件が緩和。一定の権利を持っていれば帰化できるという考え方に大きく転換することになりました。2005年の移民法で公式に「移民国家」へ転換することになり、それまで認めなかった政府も「移民国家」であることを公式に認めた。

法律で外国人は必修でドイツ語やドイツ文化を学ぶコース(統合コース)を受講してもらうなど、移民受入、いわゆる多文化共生が進められた。現在、移民とその子孫が1600万人程度、ドイツの人口全体の20%。特に、ドイツ全体でトルコ系は300万人、移民で最大。

有名どころだと、サッカードイツ代表のエジルさん、2002年ワールドカップでイケメン王子として一世を風靡し、Jリーグ神戸でもプレーした美少年イルハンさんなどがあげられる。

ドイツの移民政策を評価する

まとめると、政府や社会の当初の予想どおりにはいかなかった。暮らしていれば同化するという予想はからくも崩れた。コミュニティは外に閉じるし、他との交流はされない。同じ出身国の移民が集まって暮らす。そのため、言語を取得できないケースもある。

「ミニ・インタンブール」とよぶような、ほとんどトルコ人しか住んでいない地区もありドイツ社会に融合できているとはいえない状況もあり、「労働者を呼んだのに来たのは人間だった」と言われた。

たしかに人口減少の防止には貢献。ドイツは流入のおかげで継続的な人口減少は免れている。ドイツ経済にも相当の貢献をしているだろう。

◇最初は「移民政策」ではない→「移民政策」と認める
◇どこかで帰ると思った→家族を呼び寄せ→さらに、子供はドイツ語が話せないなど社会に溶け込めない
◇景気後退→雇用状況悪化→失業率が高くなる・生活保護受給者の割合が高く
◇同化すると期待→現場では社会統合の多文化共生政策で試行錯誤・四苦八苦など苦労

今後、何が起きるのか

そう、日本の未来はもう想像できるだろう。政策担当者はそのことを頭において、エビデンスに基づいて政策を推進や改善(形成、立案ではなく!)してもらいたい。個人的には、外国人労働者を雇用の調整弁扱いをすることだけは避けてもらいたいと思うのだ。

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西村 健
日本公共利益研究所 代表・主席研究員

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