跡継ぎ新時代:革新の時代の事業継承を考える

2018年12月24日 14:00

日加通商90周年の今年、4分間映画のコンテストを記念事業として行うことになりました。バンクーバーの日系ビジネス10団体もこれに参加し、作品作りを後押ししました。内容はカナダで水産加工事業を行う70代ぐらいの父とビジネススーツを着こなしバリバリ仕事をする娘の話で最後に高層ビルのオフィスを去り、父の仕事を継ぐという話であります。いわゆる事業継承という点にフォーカスしたもので賞こそ逃しましたが、面白い経験をさせていただきました。

いらすとや:編集部

いわゆるベビーブーマーの方々は現在70歳前後になられていると思います。事業継承のピークにあるといってもよいでしょう。考えてみればブーマーの方々がビジネスを立ち上げたであろう1970年代は日本が最も光っていた時代です。物資が不足する時代からより品質を求め、満足する時代へと転換する中で人々は新しいものを求め、消費は伸びていてビジネスは立ち上げやすかったかもしれません。

あれから50年近い年月の間に産業構造はコンピューターやITが主役になり、日本はアメリカと中国という巨大国家にはさまれてリーダーシップが取りにくくなってきています。企業人事もかつては当たり前だった体育会系の厳しさはハラスメントと言われる時代です。

自分の子供たちに「跡継ぎを考えてくれ」といっても「おやじ、何言ってんの?俺は前から継がないって言ってるじゃないか!」と反発されるのがオチでしょう。統計では企業の倒産件数は減っているものの休廃業解散する会社はこの15年ほどほぼ直線的に増え、年約3万社が消えていく時代になっています。

親父さんたちが立ち上げたビジネスは製造業、小売業が多かったと思います。しかし、製造業は製造コスト削減や地産地消という名のもと海外に生産拠点を移しています。小売業は大手の資本に淘汰され、飲食系などはまだ頑張っているところもありますが、人口減の波には勝てません。

日経ビジネスに「関西発 中小企業革新 跡継ぎが会社を変える、廃業危機の乗り越え方」と題した記事が掲載されています。中小企業のオーナーの子供たちが父の事業をひとひねり、二ひねりして新たに展開するという元気の出る内容です。大阪といえば町工場や中小企業のメッカというイメージがあり、その地盤沈下は止まらず、2015年には都道府県別GDPで愛知に抜かれ第3位に転落しています。万博もあることですから是非とも盛り上げてもらいたいものです。

それこそドラマの「陸王」ではないですが、足袋からマラソンシューズに転換するといった新しい発想はマストの時代に突入したのだろうと思います。ところが私が考える事業継承がスムーズに行かないもう一つの理由は親父さんたちが息子や娘を信じていないこともあるのでしょう。

親父さんは自分と同じスキルを持つことでようやく引き継げると思っています。しかし、親父さんのスキルをそのまま活用するか、違うビジネスに転換するかの判断センスは子供たちの方がより分かっているはずです。なのに「そんなことじゃまだまだだ!」と禅譲しないところにも問題はあるでしょう。

私の知るある会社のオーナーは自分が全てでした。そして永遠に生きるぐらいのつもりで事業継承を全く準備しないままお亡くなりになってしまいました。傍で見ている限り、運営は数年は持つけれどその先はかなり厳しいと見ています。作り上げたビジネスはある日突然崩れることなく、従業員がラインの仕事をすることで一応、会社は回るのです。しかし、そのラインを底から支えるのは社長の指導力という見えないパワーがあるのです。方向性が出せないビジネスは必ず廃れます。100%断言できます。

私だってそのうちそのような問題を抱えるわけでもう何年も前からどういう継承のやり方がよいのだろう、とずっと考えています。私の場合は事業数が多いなかで安定しているものからさっさと渡していくという手法をとっています。新規事業やまだ立ち上げて落ち着かない事業は私がやりますが、それ以外は全部任せる、というスタンスです。

社長という肩書にも全く未練はなく、私は御用聞きでも顧問でも相談役でも構わないのです。ただ、好きなことをやらせてもらい、それがうまくいけばそれをどんどん禅譲する、それでいいのです。禅譲された方もそんな私のスタイルに啓蒙されてくれれば育つかもしれません。

跡継ぎ新時代、私が言えることは「しがみつかない」、これに尽きます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2018年12月24日の記事より転載させていただきました。

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