検察当局の捜査段階で弁護人が出来ることは何か

起訴するかしないかの決定権限を持っているのは検察官だから、捜査続行中に弁護人が出来ることは実に限られている。

基本的には被疑者と面会し、被疑者に対して検察当局の捜査の状況や様々な法的手続きや法律上の問題点を説明し、被疑者の指示や要望に沿って家族やその他の信頼出来る関係者と連絡を取ったり、さらには被疑者本人の同意や要望に応じて被疑者の主張をマスコミに発表したり、記者会見を開いて説明をすることなどだろう。

勿論、検察当局の捜査の進展状況などを見極めて、勾留理由開示請求や準抗告などの法的手続きを取ったり、来るべき公判に備えて弁護のための各種証拠資料の収集や証人確保の準備なども弁護人としてなすべき仕事になる。

ゴーン氏やケリー氏の弁護人が現時点でどの程度の弁護活動をされているのか分からないが、弁護人には捜査当局ほどの調査能力がないので、多分相当難渋されているのではないだろうか。

弁護人が検察当局の捜査を妨げるような証拠隠し、証人隠しをしていると認定されると弁護人自体が罪に問われる虞があるから、弁護人としては被疑者に関わる犯罪容疑事実の立証に必要と認められるような証拠に触れることは避けるはずだから、捜査段階における弁護人の弁護活動は外部からは見え難いのが通常である。

まあ、弁護人にも色々あって、捜査が進行中の事件についてあれこれ書いたり、記者会見を開いてマスコミに被疑者側の主張を説明したりして徒に検察当局を刺激する人もいるにはいるが、オーソドックスな弁護人は公判が始まるまでは滅多に手の内を見せないものである。

被疑者段階の弁護活動はどちらかというと、検察側の起訴を回避するための弁護というニュアンスが強く、記者会見を開いて被疑者の主張を展開するよりも検察官に対して上申書や陳述書、被疑事実について起訴をすべきでないと判断させるような、検察当局が入手していないような証拠資料や弁護側予定証人の供述証拠や、検察当局が見過ごしているかもしれない判例や先例、さらには諸外国の裁判例や学者の方々の専門的な法律意見書の提出などになる。

被疑者が日本語を解しない外国人である場合は、弁護人としても関係資料をすべて被疑者の母国語に翻訳したりする作業が必要だろうから、弁護人の仕事も結構大変だろうと思う。

何にしても大変な事件ではある。

ケリー氏について保釈の可能性を指摘しているマスコミがあったように記憶しているが、私の見立てでは、まだこの段階では保釈にはならないと思われる。

念のため。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年12月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。