今年話題のこの二人、経営者編

2018年ももうわずか。いろいろ振り返ってみる中でビジネス界で笑った人、苦しんだ人、いろいろいらっしゃいました。どちらかといえば苦しんだ人が多かった、というのが私の印象です。

今年のユニコーン新規上場企業だったメルカリ。事前人気が高かったにもかかわらず、業績の改善が進まず、株価は下落の一途。社長の山田進太郎氏の心境や如何に、であります。話題を振りまいたという意味ではZOZOの前澤友作氏でしょうか?日本を代表する富豪の一人となり、次に発案したのがゾゾスーツ。しかし、これは話題先行、実情は厳しいようですがご本人は強気の姿勢を崩さず、9月には民間人初となる月旅行に行くと宣言。そんな金があるなら他に使え、という大衆の声は意に介さず、というところでした。

同じ、新興企業組で苦しんだのがRIZAPの瀬戸健社長。イケイケどんどんで買収した企業群はおもちゃ箱と揶揄され、挙句の果てにM&Aを当面凍結することで同社の利益計上テクニックが使えなくなると分かるやいなや株価は大暴落となりました。

大企業ではLIXILの瀬戸欣也社長に対して創業家の潮田洋一郎CEOが「ご苦労さん」を突き付けたのが印象的でした。これは解任された瀬戸氏というより藤森義明氏に次いで二人のプロ経営者をさっさと切った潮田独裁体制の始まり、と見るべきでしょう。東芝も今年、話題の企業でしたが経営者という意味で顔が全く浮かび上がらなかったのが私の印象でした。

海外ではGEのジョン フラナリー社長の解任が劇的でした。問題が膨れ上がった元世界最大企業の立て直しは1年2カ月の在任期間中、リストラが十分に進まず、株価が落ち込み、ダウ採用銘柄からも落ちるなど不名誉そのものだったことで突然首を切られました。トーマス エジソンの祟りでしょうか?

そして忘れてはならないのがカルロス・ゴーン氏でありますが、氏の場合は「金の亡者」で話題の経営者という範疇とは違いました。全般的には企業経営者は苦しい一年だった、というイメージなのでしょうか?

その中で私はあえて、ビジネス界、今年の話題の2名は日本からは孫正義氏、海外からはイーロン・マスク氏を苦しんだ経営者の筆頭にあげさせてもらいたいと思います。

Wikipedia:編集部

孫氏の計画が狂ったのはカショギ氏殺害事件が発端でありました。あの事件が起き、日本ではまだ話題になっていない10月13日にこのブログで孫氏は大丈夫か、という趣旨のことを書かせていただきました。その後の経緯は皆さん既知の通りであります。そして二つ目の苦労が大規模通信障害でありました。さらに追い打ちをかけたのが異論もあったソフトバンクの通信事業部門の上場であります。確かにこの上場での勝者は孫氏と言われてますが、個人投資家の犠牲の上に成り立った資金調達と言われてしまえば孫氏はもっと禿げ上がるかもしれません。

孫氏の経営ポジションは実業家というより投資家により近くなってきています。孫氏にとってソフトバンクは「この稼ぎが投資の拠り所」という位置づけだったものを自立、卒業させたという意味でご本人にとって一大決心であったはずです。

孫氏の後継者問題が時々俎上に上がりますが、孫氏は投資プランごとにその役割をばらまく手段を取り始めたように思います。つまり、孫氏がかかわる一部の事業では「禅譲」しながらも新たな事業は自分で進めるという独特のスタイルを築いているとみています。これが正しいならば賢いやり方だと思います。

Wikipedia:編集部

海外からはイーロン・マスク氏を上げたいと思います。この方が今年の春から夏にかいた汗は冷や汗そのものだったと思います。モデル3の生産計画は大幅にずれ込み、自動化する生産ラインはトラブル続きで人海戦術をとります。市場のみならず、一般大衆からも会社は維持できるのか、といったネガティブなコメントやバッシングを受け続けます。マスク氏も不用意な非上場化発言などで世間を騒がすものの私が彼を冷ややかに見ない理由は一日16時間、会社に泊まり込んで対応しようとした情熱であります。つまり誰が何と言っても頑張ったのであります。

事実、その努力は実ります。6月末には週5,000台の当初目標をクリアし、その後、増産体制が整い、キャッシュフローも大きくプラス転換しています。

私がマスク氏をこき下ろさないもう一つはスペースXの順調な展開、および大深度を使った移動システムをいつの間にか着実に進めていたということであります。つまり、アメリカはこれほどファンキーな経営者でもその恐るべき才能は見て取り、その才能を余すところなく活用していると言ってもよいでしょう。日本ならバッシングされて終わっています。

孫正義氏、イーロンマスク氏、両名とも倒れそうになるほど苦しい年だったと思います。が、今のところ、まだ踏ん張れるでしょう。マスク氏は年明けにもスペースXがNASAと組んだ発射が予定されています。いつまでも逆境ではない、この二人を思い浮かべればどんな苦労も乗り越えられる気がします。

明日土曜日はいつもの「今週のつぶやき」に代わり「今年話題のこの二人、政界編」をお届けし、日曜日に「今年のつぶやき」をお届けします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2018年12月28日の記事より転載させていただきました。