平成31年の年頭にあたって:ヒトとカネを開放する改革を

平成31年(2019年)の年頭に当たって、一言所感をここに述べたいと思います。

鈴木馨祐氏サイトより:編集部

平成という元号で迎える新年も今年が最後ということになりました。この30年間を振り返るとき、外交においても経済においても大きな変化があったことを我々は直視せねばなりません。

国際情勢ということでいえば、30年前にはソ連という国が存在していたことを考えれば、日本を取りまく世界の情勢は、冷戦からポスト冷戦を経て、中国、北朝鮮の軍拡に直面するいわば過去に例を見ない直接的な脅威を目前に抱えている状態にある。その一方で、トランプ大統領の下で、アメリカが世界で果たす役割についてはかなりの不透明感が漂っています。その中で日本としてどのようにこの安全保障環境に対処していくべきなのかという短期的・中期的な課題を我々は解決せねばなりません。

また世界経済が今後、イノベーションの力が「データ」というものに相関するようになり、かつ法的、実効的に早い変化に対応せねばならないことを考えれば、国際的なルールや標準作りに日本は戦略的に関わっていかねばなりません。同様のことは国際金融におけるマネーの流れを考えれば、金融市場への関与についても戦略的な取り組みがこれまで以上に必要です。また長期的な課題として、気候変動に伴う様々な事象が現実のものとなった昨年を振り返れば、経済の問題として我々は国際社会を巻き込んで真剣に気候変動の問題に立ち向かわねばなりません。

国内に目を転じれば、人口減少の中で国際競争に立ち向かえるような底力を長期的に強くせねば、我が国は確実に衰退してしまいます。金融政策や財政政策は当然のことながら一時的なカンフル剤になりこそすれ、それによる景気浮揚を行っているうちに日本経済の構造改革をしっかりせねば、全くの無駄ということになりかねません。

そこで必要とされるのは、終身雇用のような雇用慣行により、能力を十分に発揮する機会を奪われ、あるいは本来いるべきではないところに縛り付けられている「ヒト」、そして株の持ち合いや企業の内部留保、税体系や資本市場の最適化が出来ていないために生産性が高いところに回らない縛り付けられている「カネ」をどう解放できるか、国の限られた資源の流動性を高めて、発揮できる能力を最大限発揮できる環境を作る、そのための構造改革を断行することに尽きます。

そして財政に関しても、無駄を排除するのは当然ですが、それだけではもはや問題は解決しない。予算編成過程をみてみれば、「正しいか正しくないか」だけではなく、ある程度、価値観や哲学に基づいた「必要なもの」の間での優先順位付けをせねばならない状況にまで我が国の現実は来ていると思います。そうでなければ、この国の財政は破綻への道を突き進むことになってしまいます。

そして同時に、「政府」や「公務員」が「国民の税金」を使ってやるべき分野の再定義を行うことも必要です。日本においては、民間の知恵やプレーヤー、資金の活用が出来る分野においても、何の疑問もなく国や地方の政府が税金や公務員を使って行っているケースがかなり多い。この「当たり前」を大胆に変えていくことが求められます。こうした発想の転換により、本来国が行うべきものに公的資金が長期にわたってきちんと回る状況を維持することも出来ます。

消費税の引き上げが予定され、国民の間で、「引き上げの必要性は理解するものの、どこまで引き上げなければならないのか、その見通しが立たないことが最大の不安」という声が多くある状況だからこそ、例えば医療、インフラ、地方行政、様々な観点で徹底的に洗い出すことが必要です。

特に財政に関しては、やるべきことは、それなりに明確になっている中で、なるべく早く取りかかればその分だけ将来の負担が少なくて済むという状況にあると思われます。そして、この国の経済成長を力強く実現するための方法もかなり明確になっている中で、あとは、マクロの経済環境が悪くないうちに改革を進める勇気を、政治家も政府も企業も国民も持てるか、というところが問われている状況だと思われます。

もちろん、改革はリスクも伴います。しかし、改革に際して、チャンスではなくリスクにばかり目がいけば、改革のタイミングを逃し、結果として国力の衰退につながる、ということは歴史が証明していることころでもあります。

国の将来は、最後は国民一人一人が投票によって決めるものです。だからこそ、我々政治家は、現状やビジョンを正確に伝える努力を最大限行う必要があります。

与党はもちろんのこと、野党であっても、リスクの可能性を適切に指摘する、あるいは別のビジョンを明確に示すことは大いにすべきですが、国や社会の利益を真剣に考えるのであれば、国民を欺くような無責任な非現実的な発信や極端に偏った発信、批判のための批判はすべきではないと私は思います。

国民が選挙において自分や国の将来に関する選択を正確にできる環境を作るために発信をし、選挙における国民の選択・判断が下されれば、それに基づいて負託を得た者が国の舵取り、実行をしていくのが政治であるとすれば、与野党関係なく政治家が果たすべき責務は明らかです。

平成31年のスタートにあたり、平成の30年間の変化を正面から受け止め、新しい時代を力強い成長とリスクを最小化できる時代とできるよう、政府・与党の一員として、全力で努力して参りますことを改めてここにお誓いし、私の年頭の所感とさせていただきます。

※なお、公職選挙法第147条の2の規定により、政治家(およびその候補者となろうとするもの)が年賀状を含むあいさつ状を出すことは禁止されております。ご理解いただけますようお願い申し上げます。


編集部より:この記事は、財務副大臣、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2019年1月1日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家  鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。