『ボヘミアン・ラプソディ』から「新事実」を学んではいけない

2019年01月06日 11:30

正月休みにレイトショーで話題の『ボヘミアン・ラプソディ』を観た。

うん、音楽ファンとしてたまらない内容だった。面白かった。そのうち、DVD&Blue-rayになるのだろうし、各種サービスで配信もあるだろう。ただ、この上映期間中に映画館で観ることを強くオススメする。大画面、大音量で観てこそ楽しい。

世界に捧ぐ
クイーン
USMジャパン
2011-06-22


1974年生まれの私はQueenに熱いわけではない。それでも、それなりに聴いており。中2の頃に親戚からもらった『世界に捧ぐ』と…。

オペラ座の夜
クイーン
USMジャパン
2011-03-16


『オペラ座の夜』のレコードを何度も聴き。

リターン・オブ・ザ・チャンピオンズ(初回限定盤)
クイーン+ポール・ロジャース
EMIミュージック・ジャパン
2005-09-14


ポール・ロジャースやアダム・ランバートと一緒に来日した際もライブを観ている。とはいえ、熱狂的なファンというわけではなく、なんとなく聴くバンドのひとつという位置づけだ。

FacebookのTLを覗いていると、私よりも上の世代、特に50代の方が熱い投稿をしている印象だ。映画館に通っている人もいる。

ただ、この映画を観て「泣いた」「感動した」という感想はよく理解できるのだが「新事実がわかった」という反応には、やや首をかしげてしまう。さらに、熱狂的なファン、ディープなマニアからは批判の声があることもおさえておきたい。

2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

この映画『ボヘミアン・ラプソディ』は、歴史学と歴史文学の違いだと捉えると、わかりやすい。つまり、歴史学者が丁寧にまとめた本と、司馬遼太郎作品の違いのようなものだ。いや、司馬遼太郎作品とは言わず、よりエンタメ性の高い歴史文学とたとえるべきだろうか。ただ、後者が悪いものかというとそうではない。要するに特性が違うのである。

熱狂的なファンというわけではない私からしても、簡単に見破ることのできる事実の違いが散見される。ややネタバレだが…。SNSで散見される「最後のライブエイドを再現した20分間は圧巻」というテンプレ。実際のライブエイドでは、フレディが黄色いテレキャスターを弾くシーンがあるのだが、これは大胆にカットされている。

最大の疑問は、フレディがHIV感染に気づき、診断を受けるシーンである。フレディがこの件で病院に行っているのではないかと報じられたのは1986年であり、ライブエイドの1年後だ。他にもマニアからは「この時期は、このルックスではないのでは?」など、時代考証をめぐる疑問も出ている。

個人的な感想で言うならば、これまたメディアやSNSでよく見かける「タンザニア ザンジバル島生まれインド育ちという出自、バイセクシャルであることなど、マイノリティの生きづらさを描いていた」というやはりテンプレ的な投稿が疑問で。半分は同意するものの、その「生きづらさ」を描ききれていないのが、この作品の限界ではなかったか。生きづらさを描いたシーンもあるが、流されて、享楽的に生きているようにも見えてしまった。

ただ、大変に楽しめる映画であり、感動する作品であることは間違いない。とはいえ、この映画で「新事実がわかった(まあ、人によっては同バンドやフレディに対する知識が少なく、学習したというニュアンスで言っているのだろうが)」というのはちょっと違うのではないか、と。

それはそうと、自民党平沢勝栄議員の「LGBTばかりになると国が回らなくなる」発言に衝撃を受け、新春から満腔の怒りにふるえているのだが。井戸まさえさんの投稿で、彼がQueenファンだということを知り、これまた衝撃を受けた。同バンドに関する本でもコメントしているとか。

産経新聞にて

「日本の少子高齢化問題についての文脈で発言した。LGBTの方の権利を守るのは当然だと思っている。存在を否定する意図は全くない」

と釈明しているが、申し訳ないが、ますます勉強していないことが明らかになった。前段の部分だ。LGBTは少子高齢化問題とどれくらいつながるのだろうか?潜在層も含めた人口から考えても微々たるものだ。そして、同性パートナーがいても、子孫を残そうとした(実際に残した)人がいることも忘れてはならない。

特に与党議員と官僚は、少子化対策について真剣に反省していただきたい。少子化「対策」が叫ばれているが、たいていは「対策」ではなく「処置」だ。


前田正子先生のこの本で述べられているが、そもそも根本的にはいま、働きざかりの層がロスジェネ世代と重なっており、雇用も、収入も安定していないという問題を直視したい。巻末では私との対談も収録されており、吠えまくっているので、新春の読書にぜひ。

最後は例によって荒ぶってしまい、話が拡散したが。

事実の捉え方には要注意という、そういう話ということで。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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