“キャリアポルノ”と化す大学

2019年01月13日 06:00

いよいよ受験シーズンですね。これから大学を目指す高校生に、先生方が適切な進路指導をしてほしいものです。

ということで、“キャリアポルノ”とは、意識が高い人が陥る、自己啓発やビジネス本にはまって人生の貴重な時間を浪費する所作のことです。さいきん、肝心の大学教育がそれを助長しているのではないかと思われるのです。

大学は今でもお得か?

奨学金(借金)で大学に行っても、ブラック企業の社員や非正規になるかもしれません。学生生活は、貴重な人生のリソースの前借りです。その間働けば、お金も稼げますし、キャリアも詰めます。

たまたまここ数年は就職状況がいいですが、もしこれが腰折れすることになれば、大学、とくに私学文系や、理系学部の時代遅れ学科の就職はいつかのようにまた絶望的となるでしょう。

もはや承認欲求に訴えかけなければ・・・

だいたい大学のキャッチコピーが、学生の承認欲求を刺激して、ただでさえ自我が肥大化している現代の若者たちを煽りに煽っています。「ぼくらは、ただの普通じゃない」とか「固定概念を、ぶっ壊す」とか「大学名だけの奴には、負けたくない」とか。

大学に入ってからも、教授が「自分の頭で考えろ」とか言って、私たちのようにろくな頭もないのに、本も通読したこともないのに、無理矢理考えさせられます。高校生までは、受験という没個性的な戦いに打ち込んでいたのに、大学に入ると承認欲求がないと生きていけないように教育されてしまいます。さも、世界の主役かのように。

もちろん、現状というか等身大の自分に満足できないという人が、松下幸之助氏とか盛田昭夫氏とか井深大氏とか(例えが古いか)みたいに野心をもつ人もいるでしょうが、そうでない大多数の平凡な大学生に、「あなたには可能性がある」と思わせることが不幸の原因です。

役に立つことを教えたら立ちいかない?

けれども、大学としては、「あなたには可能性がある」と言わないと高い学費は払ってもらえません。「あなたはふつうのなんの取りえもない人間です」「身の丈に合った人生を送りましょう」とほんとうに大事なことを言っては、お金になりません。そして、学生の承認欲求を刺激しつづけなくてはいけません。

現代の生活は、昔と比べれば信じられないほど快適です。そんな中で満足せず、承認欲求に訴求する商品を、奨学金という将来をかたにした借金を背負わせてまで通わせる大学というビジネスモデルは、つくづく罪深いものだというのが、さいきんの私の思いです。

中沢 良平

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