バロンズ:“3月の狂気”を控え、“割安銘柄の罠”に注意

2019年01月21日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは半期に一度行う金融市場の重鎮10名によるラウンドテーブルを掲げる。第2弾は、10名が選ぶ個別銘柄を紹介。米国の成長率が2019年に0.5%増とメンバーの中で最低を見込む新債券王、ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が金関連の銘柄を推奨した半面、その他の参加者はGEと提携する航空銘柄、米国ではある意味でディフェンシブ銘柄とも言われるエンターテイメント銘柄を挙げた。日本の個別銘柄では、人材紹介最大手のあの会社が選ばれている。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラムのアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は3月のリスクと割安株にスポットライトを当てる。抄訳は、以下の通り。

狂気に向かってーMarching Toward the Madness.

3月に開幕する全米大学体育協会(NCAA)男子バスケットボールトーナメント、別名”3月の熱狂(March Madness)”について頭を使うにはまだ時間があるものの、金融市場にはもう一つのMadness=狂気が待ち構えていると言えよう。3月1日までに米中間で通商協議が妥結しなければ、米国が中国輸入品2,000億ドル相当への追加関税を10%から25%ヘ引き上げてしまう。この3月1日は、米通商代表部(USTR)の高官が「揺るがない期限(hard deadline)」と言及済みだ。

さらに、3月1日には米債務上限引き上げ猶予が解除される。債務上限を約22兆ドルヘ引き上げるか、あるいは再び上限の引き上げ凍結で合意する必要があるものの、足元はメキシコ国境間の壁建設、57億ドルを求めトランプ大統領が上下院で可決したつなぎ予算に署名せず、政府機関が過去最長の閉鎖を余儀なくされる状況だ。仮に3月1日までに米中が妥結せず、米債務上限引き上げをめぐり政権と米議会が妥結できなければ、投資家にとって悪いニュースで埋め尽くされよう

欧州にも、悪材料が控える。3月29日を期限とする英国の欧州連合(EU)離脱は、英下院が15日夜(現地時間)にEUと合意した離脱案を否決した結果、「合意なき離脱」に陥るリスクが高まっている。

こうしたリスクは、米株相場の大幅下落を招きかねない。

2018年のS&P500のリターンは、配当なしで前年比6%下落した。1株利益はというと、2018年は22%増とされているが、同年10〜12月期の業績が予想を上回ればさらなる増益率となってもおかしくない。2018年末の米株急落劇は、第2次世界大戦以降で5番目に大きな株価収益率(PER)の低下を生み出した。

翻って年初来のS&P500のリターンは5%高だが、それ以上も見込めるかもしれない。UBSのアナリストが第2次大戦以降、PERが大幅低下した過去26回を分析したところ、翌年のリターン中央値は16%高だった。

クレディ・スイスによれば、2018年10〜12月期の1株利益予想は13.2%増、サプライズを加えて16.8%増で、2018年の法人税減税は、1株利益を6.8%押し上げたとされる。2019年の業績予想ををみると、1株利益は前年比6.4%増で、妥当と言えるだろう。

2019年の見通しに基づけば、PERは15.4倍だ。押し目買いを望む投資家にとって割安と考えられる。しかし、2018年9月以降の米株安では、9月末時点で人気のテクノロジー株よりPERが15倍以下とずっと低い割安銘柄は、中央値で11%下落した。PERが25倍以上の銘柄は、7%下落したに過ぎない。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによれば、PERの乖離は2009年以来で最大だという。言い換えるなら、人気銘柄とその他のバリュエーションの乖離は、近年稀にないほど広がっている。BofAメリルリンチはまもなく乖離が縮小すると予想し、我々もそう聞かされてきた。

しかし、債務が膨れ上がる中国をはじめ、世界経済に伝播するマクロ的なリスクは世界に存在する。米株下落シナリオは、見逃せないストーリーと言えそうだ。

S&P500の年初来リターンは足元で2018年と2017年を上回るものの、好調を維持できるのか。

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(作成:macrotrendsよりMy Big Apple NY)

安全資産とされる市場も、安全と言い切れない。例えば公益を挙げると、電力需要は低迷している。朝食用のシリアルはどうか?炭水化物を多く含む他、アマゾンやウォルマートのオンライン販売競争で、値崩れに直面しているといっても過言ではない。ビールなら大丈夫?いやいや、若い世代はバドワイザーといった主要ブランドより、クラフトビールに夢中だ。タバコなんて、ガンのリスクとマリファナ愛好家の増加で人気は細る一方だ。米国債なら安心だ、ただし70年間に購買力を2倍に引き上げられればの話だが。

結局、投資のカギは”割安銘柄の罠”から投資のグッド・アイデアを探ることだろう。通信機器メーカーのシスコ・システムズをみてみよう。同銘柄のPERは14.5倍で、一段の成長が見込まれる。格安百貨店のターゲットのPERは12.7倍で、他小売関連より魅力的だが、ウォルマートの株価を超えて推移する場合がある。BofAメリルリンチは金融株が割安と指摘するが、半導体には”割安の罠”が広がっているという。この指摘は、JPモルガン・チェースのPERが10.5倍に対し、マイクロン・テクノロジーが5.5倍であることと相関性が高い。ただし、バーンスティーンのマーク・ニューマン氏は、メモリー装置の利益は下半期に安定するなど強気を予想した上で、マイクロン・テクノロジーの投資判断を引き上げた。

デルタ航空も航空関連銘柄で高リターンを遂げるなか、PERは7.3倍に過ぎない。ゼネラル・モーター(GM)は、テスラと電気自動車部門で、アルファベット傘下のウェイモと自動運転技術で競争中とはいえ、GMのPERは6.5倍で、スポーツ用多目的車(SUV)やトラックの販売で確実な売上が見込まれる。

ドラッグストアのCVSヘルスに目を向けると、容易に判断しづらい。同社はドラッグストア内に1,100件ものアポの必要がない診療所を設置した。今後も、自宅用血液検査キットを含む新たなヘルスケア関連商品を展開する予定だ。詳細はまだ明らかになっていないが、機会は大きいと言えよう。アメリカ人は慢性疾患に年間2兆ドル出費している。仮にCVSが通院の予約が取りづらい患者を取り込めば、売上増につながるだろう。また、医療保険エトナの買収で保険と処方薬の給付が可能となり、さらなる通院利用者の増加も見込める。

しかしCVSヘルスは2018年に18%下落した。PERは金融危機前の20倍から、直近では9倍程度に過ぎない。滅多にない割安感が高まっているが、果たして買い時なのだろうか?

CVSヘルスが割安である背景には、薬剤給付管理(PBM)としての課題がある。PBMは保険対象となる医薬品を選択する役割のほか、製薬会社と医療保険を提供する保険会社や雇用者に代わり、医薬品の価格交渉役なども担う。PBM業務はCVSヘルスのほか、保険会社シグナに先月買収されたエクスプレス・スクリプツ、ユナイテッドヘルス・グループに買収されたオプタムRxが行ってきた。そのPBMは、製薬会社からリベート(割戻金)契約を結び、薬価の引き下げを勝ち取ってきた半面、リベートの一部はPBMの利益となり、また製薬会社はPBMへのリベート支払い分を加味した上で薬価を引き上げるようになった。トランプ政権からも、こうした慣行が医薬品の値上げをもたらしたと批判されてきたものだ。足元、こうした圧力などを受けてCVSヘルスアは2018年12月、リベートの還元率を100%とする計画を発表した。2018年に同社はリベートの2%、3億ドル相当を利益に計上したとされる。今後の決算発表で、こうしたリベートの変更が利益にもたらす影響が明白になるだろう。


足元、米株はパウエル・プットを確認した安心感に加え、米中通商協議をめぐり、中国が2024年まで1兆ドル超えに及ぶ米国からの輸入拡大計画を表明したとの関係者の発言を好感し高リターンを遂げています。1月30〜31日に劉鶴首相がライトハイザーUSTR代表と会談する前とあって、妥結への期待が高まったとしてもおかしくありません。ただし、今回の輸入拡大案が、2018年12月1日に開催した米中首脳会談後で習近平主席側が申し出た1.2兆ドルの輸入拡大とどう違うのかは、不透明。また、トランプ陣営は中国側の改革の定期的な精査を主張しており、両者を隔てる壁は依然として高いと言えそうです。

(カバー写真:BrainMaY/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年1月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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