日本の無人機出遅れの戦犯は防衛省、自衛隊。そしてメディア

もうパクリとは言えない 謎の「ステルスUAV」から見た中国の無人機開発事情(のりものニュース)

海外の軍事や航空の見本市にここ15年ほどいっていれば中国の無人機の怒涛のような出典には目を見張るはずです。確かに昔はしょぼかったし、パクリばかりでしたが、ここ7、8年ほどの進歩は大したものです。

猿真似と笑うのは簡単です。ですが戦後我々日本人だってその猿真似で欧米に追いつき、追い越したわけです。中国人に出来ないわけがない、そう考えるべきです。

中国の無人爆撃機「翼竜」(Wikipedia:編集部)

日本スゲーとか自画自賛の寝言いっている「保守の論客」とかはIDEXとかパリの航空ショーに何度かいってみるといいです。政治家や自衛隊の偉い人たちもね。現実を見たほうがいい。まあ、あの人達は現実見ても目が覚めないかもしれませんけど。

ところがその間、日本の業界や政府は漫然と時間を浪費しました。最近になって大慌てしています。

ぼくは長年自衛隊の無人機開発、導入が欧米先進国よりは元より、途上国からも遅れていると指摘しました。
陸自の特科用のFFOSは通信システム、航続距離、信頼性など実用にならないクズであり、後継のFFRSも同様でした。これらは東日本大震災のときに一度も飛ばなかったことはぼくがスクープして明らかになりましたが、それが既に長い時間が過ぎておりますが、未だに防衛省、自衛隊、経産省の無人機に対する政策は遅れています。

まさに駄目な組織は危機意識がない典型例です。

駄目な理由は無人機を導入すると既存の新しい部隊を作ることになり、そうなると既存の部隊の利権が損なわれる、だから嫌だというしょうもない理由がまずあります。国防や産業振興よりも組織防衛に熱心なのが防衛省、自衛隊です。

更に無人機を、能力がないスバルだの日立だのという既存の防衛産業の仕事を振るための方便としてしか考えていなかった。本来ヒロボーやヤマハ、フジインバックといった専業メーカー、ベンチャー企業があり、そちらの仕事を振って、調達を増やしていれば、我が国のUAV産業はもっと発展していったでしょう。
実態はFFOSやらFFRSで溝にカネを捨てたようなものです。

実際に陸自のイラク派遣では元々農業用に開発されたヤマハのヘリ型UAVを採用して非常にうまく行きました。
これを例えば各普通科中隊にばらまくとか、ジプチや南スーダンなどのPKOの警備用に採用すればかなりの数が調達されたはずです。そうすれば警察や海保、自治体、消防などへの普及も進み、法整備も前倒しになったかもしれません。

カネと兵隊は不要な旧式戦車やら、あってもしょうもない火砲を削減すれば容易に捻出できたでしょう。ところが大綱で削減すると決めた戦車、火砲ですらまともに削減してこなかった。なにか中国のために抵抗しているんじゃないかと勘ぐりたくもなってきます。

そしてこういう実態をメディアが、専門誌を含めてまったくといっていいほど報じてこなかった。
相も変わらず自衛隊スゲー、カッケーという提灯記事ばかり。諸外国からどれだけ遅れているかという冷徹な
事実を突きつける記事を読者に突きつけて来なかった。

基本航空雑誌はマニア誌なので、マニアに受けないUAV関連の記事はあまり載せてきませんでした。これはヘリコプターの記事も同じです。ヘリの記事が載っているのは広告もらっているからです。ですが基本人気がないので編集が積極的に載せたい記事ではありません。つまり欧米の専門誌とは大きな情報の隔たりがあるということです。そこは業界誌とマニア誌の違いです。

だから情弱な「保守の論弱」じゃなかった「論客」(笑)が、自衛隊夢想…じゃなかった、自衛隊無双の前提で調子のいい愛国的な主張をしている。ああ、危ないよなあ。

国内では法整備もまだまだ不十分ですが、それも自衛隊は例外とするように法改正すればよかった。例えば道路法の政令では在日米軍は除くという文言があります。ところが防衛省、自衛隊はこういう法改正にまったく消極的です。以前の内閣の外局だった防衛庁だった時代ならまだしも、いまやいっぽんどっこの防衛省ですぜ。
法改正もできなくてどうするんですか。

だから未だに三流官庁と言われるんです。

装輪装甲車でもだから、車幅を2.5メートル以下に抑えようとする。ところが諸外国では8輪ならば全幅2.8~3メートルです。ところがそういう現実に目をつぶり、法律がそうだからとそれに沿って仕事をしようとする。

あんたら戦う相手は外国の軍隊じゃないのかね?

機動戦闘車が横幅3メートルになったのは三菱重工側から押し切られた結果です。
これまたぼくが以前スッパ抜きましたが、石破さんが新型のNBC偵察車が完成するまでのストップギャップで外国製を入れようとしたら官僚が、「大臣、アレは横幅ば3メートル近いので入りません」と騙したわけです。
ぼくが国交省に取材したら書類を出せば特例でOKでした。

それすら嫌がるのが防衛省、自衛隊という組織です。

いつも清谷さんは自衛隊に厳しい、過激だとお叱りを受けますが、こういう連中がまともに仕事をしているとか、プロ意識があるとかいえますか? 税金泥棒以外なにか言いようがありますか?組織が腐っていると思いませんか?

行政機関なんだから任務遂行に必要とあれば法改正を行うのがお仕事でしょう。
外国が電気機関車入れているのに、法律がないからとSL使い続けますか?
ところが法改正なんぞ面倒くせえことなんかやりたくない、与えられた条件で仕事しているふりしていればいいや、というのが防衛省、自衛隊のスタンスです。世間ではこういう手合を税金泥棒といいます。

これは経産省も同罪です。無人機が将来有望な産業になると予測していたのであれば、まずは自衛隊向けだけでも法改正を行って、一定の調達を行わせて市場を作り、更に民間市場整備して、ベンチャー企業も含めて新規参入を呼び込んで国内市場を開拓し、合わせて国外市場に打って出るような長期の政策を策定すべきだっだたわけです。

ですが、例によって縦割り行政でそんな連携もなかった。

おかげで我が国は無人機後進国、自衛隊は無人機後進軍隊です。トルコはもとよりパキスタンイランよりも遅れているわけで、腰蓑と槍で武装しているみたいなものです。

ところが自分たちは世界の先端行っていると思っているから質が悪い。
病院にいって頭の精密検査受けるレベルです。

最近やっと、海外視察が増えて、防衛省、自衛隊は自分たちの遅れに気が付きはじめましたが、その予算が増えたのも、ぼくが延々と個人名挙げて必要に予算が少ない、いっても卒業旅行で情報収集していねえと報じてきたからです。

ですが、せっかく見に行っても、まだ社内政治優先で変革ができない。
いっその事、50代以上の将官、1佐全部くびにして、戦後の三等重役宜しく40代の将官と1佐を配するぐらいの荒療治をしないと組織が変わらないかもしれません。

■本日の市ヶ谷の噂■
東京新聞の名物記者、望月衣塑子記者は入社当時モテモテだったとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年1月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。